女性首相誕生とマスクからの解放 フランス最新ニュース
5月16日月曜日。フランスでは2つの新しいことがありました。
女性首相の誕生、そしてマスク着用義務の撤廃です。
まず1つ目。
Elisabethe Borne(エリザベット・ボルヌ)さんが、フランス史上2人目の女性首相になりました。
4月24日の決選投票で大統領に再選されたエマニュエル・マクロンさんが、内政の要となる首相に誰を選ぶのか。今か今かと、およそ3週間待たれていましたが、いよいよ16日、エリザベット・ボルヌさんの就任が発表になりました。
彼女は前内閣では労働・雇用・社会復帰大臣、そして過去には、環境連帯移行大臣、交通大臣も勤めた経歴を持つ、マクロン大統領の党派に属する政治家です。
フランスではこれまで女性の大統領は誕生していませんが、国のナンバーツーにあたる首相としては、Edith Cresson(エディット・クレッソン)首相がいます。フランソワ・ミッテラン大統領による任命で、1991年5月から翌年4月と短命ではありましたが、彼女がフランス史上初の女性首相。そしておよそ30年を経て史上2人目の女性首相が誕生したというわけです。
どの国もそうですが、フランス政府はいま難しい舵取りを求められています。コロナ禍、戦争への対応はもちろんのこと、内政面でも問題山積。年金給付年齢の引き上げや燃料税などの導入に反対して、激しいデモが社会問題に発展したのは記憶に新しいところ。首相こそ、そういった改革の矢面に立たされますから、ボルヌ首相の今後のお役目は大変なものです。
ボルヌ新首相は、大臣職を歴任する前には、RATP(パリ交通公団)の総裁や地方の知事も務めるなど、エリート中のエリートです。いっぽう、その生い立ちを見ると刻苦勉励を重ねて積み上げてきたキャリアなのだな、ということがわかります。
1961年パリ生まれ。父方はロシア・ポーランド系のユダヤ人移民でした。第二次世界大戦中、父親はアウシュビッツに強制収容されますが生き残ってフランスに戻り、50年にフランス国籍を取得。ノルマンディー地方出身の女性と結婚して、61年に誕生したのがエリザベットさんでした。ところが、彼女が11歳の時に父親は死去。薬剤師として働く母親の収入だけでは十分ではなかったので、エリザベットさんは国家の援助を受ける遺児として成長し、グランゼコールというエリートコースにまで進んだのです。
歴代2人目の女性首相の誕生。しかもこういった背景を持つ女性が実力によって首相にまで上り詰めることができるというのがフランスの懐の深いところだとあらためて感じます。
さて、5月16日のもう1つの新しいことはマスク着用の義務撤廃です。
フランスではこれまでも、マスク着用の義務は段階的に無くなってきていました。けれども、公共交通機関を利用する時には義務付けられていたので、バスやメトロの乗り降りで付けたり外したりするのが億劫ということもあって、街中でもマスク着用という人をちらほら見かけました。
けれども16日からは交通機関でもその必要がなくなり、病院等を除けば、フランスのほぼどんなシーンでもマスクはいらなくなるというわけです。
もちろん、自主的にマスクを着けることは、人の多いところなどでは推奨されていますし、昨今の花粉や大気汚染対策としてマスクの有効性に目覚めたフランス人も少なくありません。
とはいえ、開放的な気分が先立つこの国のこと。マスクの日常はじきに過去のものになってゆくのではないかと思います。
ということは、フランスのコロナは終焉を迎えたのかというとそうではなく、5月13日時点での新規感染者数は全国で29,637人、パリで629人と、決して油断できない数字ではあります。それでも今年1月24日に記録した全国で56万7千人という値に比べれば、今ところ沈静化の方向にあることは明らかです。
マスクが必要なくなるということは、マスクの売り上げ減は確実。では、フランスのマスク工場はどうするのか、というのがテレビニュースの話題になっていました。それによると、これからも何があるか分からないからマスク製造は継続してゆくという一方で、他の商品製造にも着手していているとのこと。
さて、どんな商品に切り替えようとしているか想像がつきますか?
答えは、電動自転車。これからますます需要が伸びると見込まれているという理由で、マスクとは似ても似つかぬように思える商品の製造を始めているという企業が複数あるのだとか。
人々の顔からマスクが消え、街には自転車がさらに増える。フランスの風景がまた少しずつ変化しそうです。