強烈なヒジ打ちが女子の未来を切り拓く?
開催前から注目を集めた女子ワンマッチ
旗揚げ20年を超える老舗MMA(総合格闘技)団体パンクラスの定期大会『PANCRASE279』が7月24日、東京・ディファ有明で開催された。
2階級のタイトルマッチをはじめ、世界最大のMMAイベント『UFC』で活躍した岡見勇信(35)、第5代修斗世界フェザー級王者の上田将勝(38)ら、そうそうたるメンバーが集結したこともあり、開催1ヵ月前にチケットが完売するなど大きな注目を集めた今大会。
本戦の主要14試合のうち、話題性の高さで他のカードに引けを取らなかったのが第10試合にラインナップされた中井りん(29)vsライカ(41)の女子フライ級(-56.7Kg)試合だ。
UFCでの2戦を経て、約2年ぶりに古巣のマットに復帰した中井は、10年近く国内無敗を誇る安定した強さに加え、規格外のマッチョボディでも話題を集める人気選手。対するライカは世界三階級制覇を果たしたボクシング界のレジェンドだが、その肩書きを捨て2年前からMMAに挑戦している。
女子活性化プロジェクト、12年目の加速
寝技の中井と打撃のライカによるスリリングな攻防が期待されたが、試合は16勝2敗のMMAキャリアを持つ中井が2勝3敗のライカを寄せ付けず。最終3ラウンドまでしのいだライカに対し、最後に打ちおろしたヒジ打ちの連打からは、パンクラス唯一の女子王者たる意地とプライドが感じられた。
この一戦のほか、第7試合では現役プロレスラーの朱里(27)がニコーレ・カレアーリ(ブラジル・19)との打撃戦を制し、MMA2連勝を飾っている。この結果や注目度の高さを踏まえ、パンクラスでは今後も中井、朱里を主軸に女子の試合を積極的に組んでいくという。
パンクラスが初めて女子の試合を提供したのは、旗揚げ11年目の2004年。当時は女子と同じ大会に出場することに疑問を感じ、ボイコットする男子選手もいた。それでも「パンクラス アテナ(女子試合の名称)」の火を消さず、2006年には中井がデビュー、2011年には女子の試合を初めてメインイベントに抜てきし、翌年には初の女子王座も制定した。
昔も今も選手層の薄さが女子MMA最大の課題だが、看板選手二人を得た今、パンクラスの息の長い地道な“女子活性化プロジェクト”にも、いよいよエンジンがかかりそうだ。
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