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超過酷“クレイジールール”解禁間近のネクサスが全60試合フルボリューム大会開催

藤村幸代フリーライター
全60試合のラストではネクサス次世代エース対決が実現(C)SHI's HOUSE

 選手の発掘・育成や他団体との架け橋たる団体を目指し設立10年を迎えた『Fighting NEXUS(以下、ネクサス)』が10月20日(日)、神奈川・横須賀の神奈川歯科大学アリーナで大会を開催した。

『Fighting NEXUS BAYSIDE BATTLE in YOKOSUKA 2024』は、横須賀出身・在住の格闘家、安田けんがプロデューサーを務め、今回が昨年に続き2度目の開催。DOBUITA FIGHT SPORTS GYMなど横須賀市内のジムはもちろん、市外、県外のジムにも広く参加を呼びかけたこと、また1大会にMMA(総合格闘技)、キックボクシングの両ルールをラインナップし、エントリーの門戸を広げたことなどもあり、プロアマ含め全35試合だった昨年を大きく上回る全60試合のフルボリュームとなった。

京急「横須賀中央」駅徒歩10分、横須賀市民の憩いの場である三笠公園すぐの好立地に立つ神奈川歯科大学アリーナが昨年に続き会場となり、プロアマ計60試合の熱戦が繰り広げられた(C)SHI's HOUSE
京急「横須賀中央」駅徒歩10分、横須賀市民の憩いの場である三笠公園すぐの好立地に立つ神奈川歯科大学アリーナが昨年に続き会場となり、プロアマ計60試合の熱戦が繰り広げられた(C)SHI's HOUSE

 

 プロの部では、第6試合で井上皓平(ポゴナクラブジム)をアームロックで下した山本歩夢(K-PLACE)を始め、全15試合中8試合がKO、一本勝ちによるフィニッシュに。今年7月、約2年ぶりに実戦復帰を果たした山本は、9月のMMA大会『RESILIENCE』での45秒TKOに続き、今大会も71秒と2連続秒殺劇。圧巻の超速フィニッシュに場内がどよめいた。

 トリプルメインイベントの掉尾を飾ったのは下田凛太郎(DOBUITA)と塩谷優斗(スカーフィスト)のバンタム級MMA5分2R。横須賀出身の下田はプロデビュー以来3連勝と伸び盛りの18歳。対して、今年5月のプロ2戦目で待望の初勝利をあげた塩谷は、青森から世界を目指す22歳。ネクサス次世代エース対決となった一戦は、スタンド、グラウンド共に両者が一歩も引かず、見る側も力がこもる展開が続いたが、フィジカルで上回る塩谷が胴タックルからのテイクダウンなどで試合の主導権を握り、判定3-0で勝利。試合後は、リング上で互いの成長と再戦を誓い合った。

5月大会に続きメインイベンターの重責を担った塩谷(右)だが、豊富なスタミナとパワーを武器にイキのいいファイトを展開。下田は4戦目でプロ初黒星も、伸びしろを感じさせた(C)SHI's HOUSE
5月大会に続きメインイベンターの重責を担った塩谷(右)だが、豊富なスタミナとパワーを武器にイキのいいファイトを展開。下田は4戦目でプロ初黒星も、伸びしろを感じさせた(C)SHI's HOUSE

 

 今大会には、9月に強豪キム・スーチョルを下しRIZINバンタム級新王者となった井上直樹も来場。ふだんの試合でセコンド役を託す安田けんを相手に、力の入ったミット打ちを披露し、「次の試合が決まったら、このベルトにふさわしい戦い方、勝ち方をして、来年の横須賀大会でも何らかの形で安田さんに協力したい」とマイクで語った。

 また、大会主旨に賛同し、会場選定などで尽力した元読売巨人軍投手で横須賀市議の山本賢寿(けんじゅ)氏からも「地元選手に地元横須賀で闘いの場を。横須賀を格闘技の街に」とのエールが送られるなど、横須賀大会ならではのシーンも随所に見られた。

安田けん(右)がトレーナーを務める格闘技ジムSONIC SQUADを練習拠点とする井上直樹が、ミット打ちで横須賀大会に花を添えた。(C)SHI's HOUSE
安田けん(右)がトレーナーを務める格闘技ジムSONIC SQUADを練習拠点とする井上直樹が、ミット打ちで横須賀大会に花を添えた。(C)SHI's HOUSE

左より今大会をプロデュースした安田けん、RIZINバンタム級王者の井上直樹、山本けんじゅ横須賀市議、スポーツで活躍する地元選手を応援する小泉進次郎代議士秘書、永塚堅太郎氏(C)SHI's HOUSE
左より今大会をプロデュースした安田けん、RIZINバンタム級王者の井上直樹、山本けんじゅ横須賀市議、スポーツで活躍する地元選手を応援する小泉進次郎代議士秘書、永塚堅太郎氏(C)SHI's HOUSE

  ネクサスといえば、次回11月28日の後楽園ホール大会より解禁される新ルール「NEXUS CRAZY RULE」が話題を集めている。1ラウンド=キックボクシング、2ラウンド=MMA、3ラウンド=ベアナックルと全て異なるルールが採用されたミックスルールだ。

 国内のミックスルールでは2010年大晦日『Dynamite!! 』での青木真也vs長島☆自演乙☆雄一郎戦、翌年『元気ですか!! 大晦日!! 2011』での菊野克紀vs長嶋戦、17年『RIZIN』での那須川天心vs才賀紀左衛門戦などが知られているが、いずれも1ラウンド=キック、2ラウンドMMAルールを採用。また海外メジャープロモーションの『ONE CHAMPIONSHIP』で22年3月に行われたロッタン・ジットムアンノン vs デメトリアス・ジョンソン戦では「ムエタイ、MMA」を交互に行う4ラウンド制、24年1月『ONE 165』での秋山成勲vsニキー・ホルツケン戦では「ボクシング、ムエタイ、MMA」の3ラウンド制が採用されている。

 ミックスルールに素手の打撃戦であるベアナックルを入れるのは、あまりに実験的、挑戦的に思えるが、今大会終了後、ネクサス山田峻平代表に話を聞くと「予想以上の好感触」だという。

「キックの選手が多いだろうというこちらの予想に反し、MMAの選手からの問い合わせや応募が多く、『MMAの選手が1ラウンドめにキックボクサーをKOしたほうが面白いですよね』と、すで試合の青写真を描いている選手もいます」

今大会の試合の合い間には、11月28日の後楽園ホール大会でクレイジールール初戦に挑む齊藤淳がマイクで意気込みを語った。左はネクサスの山田峻平代表(C)ふくだしげる
今大会の試合の合い間には、11月28日の後楽園ホール大会でクレイジールール初戦に挑む齊藤淳がマイクで意気込みを語った。左はネクサスの山田峻平代表(C)ふくだしげる

 

 11月28日はムエタイがバックボーンの齊藤淳vs柔道がバックボーンの村田純也による1試合のみだが、安全管理を徹底し、ルール整備をしていきながら、来年以降も積極的にこのルールを取り入れていきたいと山田代表は語る。

「MMAとキックの両方を手がける団体として、選手同士やファンの方の交流の場を作りたいとの思いで新ルールをスタートさせることにしました。始めたからには一時の客寄せではなく、しっかりとした競技にしたい。11月の初戦を受けてルールや判定基準を整備して、2025年初戦の3月大会から男女の別なくクレイジールールの試合を組んでいきたいですし、いずれはベルトも制定したいと考えています」

 地方大会の拡充、キック団体の設立と段階を踏んで選手の試合の場と可能性を広げてきたネクサスの、新たなチャレンジに注目していきたい。

11月28日の『NEXUS.37』後楽園ホール大会でクレイジールールが解禁される(C)Fighting NEXUS
11月28日の『NEXUS.37』後楽園ホール大会でクレイジールールが解禁される(C)Fighting NEXUS

フリーライター

神奈川ニュース映画協会、サムライTV、映像制作会社でディレクターを務め、2002年よりフリーライターに。格闘技、スポーツ、フィットネス、生き方などを取材・執筆。【著書】『ママダス!闘う娘と語る母』(情報センター出版局)、【構成】『私は居場所を見つけたい~ファイティングウーマン ライカの挑戦~』(新潮社)『負けないで!』(創出版)『走れ!助産師ボクサー』(NTT出版)『Smile!田中理恵自伝』『光と影 誰も知らない本当の武尊』『下剋上トレーナー』(以上、ベースボール・マガジン社)『へやトレ』(主婦の友社)他。横須賀市出身、三浦市在住。

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