オートバイのあれこれ『80年代ヤマハの独創技術』
全国1,000万人のバイク好きたちへ送るこのコーナー。
今日は『80年代ヤマハの独創技術』をテーマにお話ししようと思います。
1970年代から80年代にかけての時代は、日本のオートバイ産業が最もイキイキとていた頃。
70年代に日本の各二輪メーカーは急成長を遂げ、80年代を迎えると各メーカーから多種多様な技術や理論が打ち出されるようになりました。
ホンダのオーバル(楕円)ピストンエンジン、スズキの油冷エンジン等は有名ではないでしょうか。
そんな時代を彩った技術の一つが、ヤマハの『GENESIS(ジェネシス)』エンジンでした。
「ジェネシス」は「創世記」や「起源」、「(ものごとの)始まり」などを意味する英単語。
ヤマハはこの語意どおり、新たな時代を創始するパワーユニットとしてジェネシスエンジンを作り上げます。
最大の特徴は、エンジン(燃焼室)が地面に対し45度前に傾いていること。
45度前傾させることにより、
①エンジンヘッドの位置が低くなってエンジンの重心を下げられる
②エアクリーナーからインテークマニホールドへ至る吸気系統を上下方向に配置でき、吸気に重力を活かせる
などのメリットが生まれました。
実際、このジェネシスエンジンが投入された『FZ750』では、低重心による安定した旋回と、高効率な吸気によるハイパワーが実現されていました。
ジェネシスエンジンの話で面白いのが、お蔵入りになったヤマハのV4エンジンの名残だと言われていることです。
実は70年代後半、ヤマハは水冷4ストロークのV型4気筒を密かに開発していたことがありました。
しかし、無情にもホンダがV4マシンの市販車を世間へ先にリリースしたことにより、ホンダの真似をしたくなかったヤマハはこのV4計画を断念。
ただそうは言っても、ヤマハとしてもV4開発で培ったノウハウをどうにか役立てたいという思いから、このプロトタイプのV4エンジンを半分に切ってみたのです。
そして、切った後ろ半分(リヤバンク2気筒)を前の2気筒の横にくっ付けてみると…。
V4エンジンの前側2気筒に後ろ側2気筒が横並びする形で、前へ傾いた並列4気筒のエンジンが出来上がったというわけです。
つまりジェネシスエンジンの前傾45度は、V4エンジンのフロントバンクの名残ということ。
先ほど挙げたメリットを狙ってのことなのか、たまたま都合が良くなったのかは定かではありませんが、いずれにせよ、ジェネシスエンジンの話ではこのV4エンジンとの関連がしばしば語られます。
ジェネシスエンジンは結局、後の『FZR400』等にも用いられ、80年代のヤマハを代表する技術となったのでした。