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リビングの「コバエ」どこから来るの? 観葉植物など注意したい場所と知っておきたい対処法

有吉立アース製薬(株)研究部で害虫飼育を担当
写真はイメージ(写真:イメージマート)

リビングに突然コバエが現れて、気になってくつろげない…というのは困りますね。キッチンや水回りを清潔に整えたお宅でもコバエが発生することがあります。

今回は、リビングで遭遇しやすい「クロバネキノコバエ」という種類のコバエについて生態と対策をご紹介します。

クロバネキノコバエとは?

世界中に分布していて、日本では110種余りが確認されています。家の中でいちばんよく見かけるのは「チビクロバネキノコバエ」という種類で、名前の通りとても小さく、体長1~2mm、体色は黒褐色で翅(はね)は灰色です。卵から成虫になる期間は、25~30度の気温下では、9~12日です。食品や水回りに発生しやすい「コバエ」に比べ黒くて小さいのが特徴です。

発生場所は?

クロバネキノコバエの幼虫は、腐葉土などの有機物を含んだ湿った土の中にいて、腐植物やキノコ類を食べて育ちます。植物を育てるほとんどの培養土には腐葉土などの堆肥が入っています。堆肥は植物の栄養にもなりますが、クロバネキノコバエの発生源ともなってしまうのです。しばしば大量発生することがあり、家の近くにそのような場所があると家に侵入する可能性が高くなります。

体が小さくて小さな隙間からでも屋内に入ってくるので、異物混入の原因となることもあります。過去には学校給食のパンにクロバネキノコバエが混入していたと大きく報道されたケースもありました。

では、家の中で発生しやすい場所をご紹介します。

観葉植物の鉢植え

リビングなどに置いた観葉植物の鉢植えから発生することがあります。それは、観葉植物用の土の中にクロバネキノコバエの卵が入っているケースがあるからです。その場合、何日か経つと成虫となって土から出てきてしまいます。

写真はイメージ
写真はイメージ写真:アフロ

クワガタやカブトムシの飼育ケース

この夏の時期、子どもたちが育てているクワガタやカブトムシのマット(土)から出てくることがあります。

庭やベランダに面した窓際

庭やベランダに植えた植物や家庭菜園などの土からも発生します。明るいところに寄ってくる性質があるので、クロバネキノコバエが網戸のメッシュをくぐり抜けて入ってきてしまうことがあります。

対処法は?

人を刺したりして危害を与えることはないクロバネキノコバエですが、家の中で見ると気分のいいものではありません。

ここからはクロバネキノコバエの対処方法をお教えします。

観葉植物の土の表面を入れ替える

卵や幼虫がいるのは、ほぼ土の表面から2~3cmの深さです。栄養分がある堆肥に発生するので、植え替え時には土の表面から5cm程度の深さまで取り除き、代わりに赤玉土やバーミキュライトなど栄養分のない無機質な土を敷くことで、発生を抑えられると同時に卵を産み付けられなくなります。既にクロバネキノコバエが発生している場合も同様で、土の表面から5cm程度を無機質な土に変えることで発生を抑えることができます。

また、クロバネキノコバエは、湿ったところが好きなので、植物に水をやり過ぎないようにすることも大事です。土に挿しておくと、水やりのタイミングがわかる市販のグッズを使うことで水のやり過ぎを防ぐことができます。

カブトムシ飼育ケースにはカバーをかける

カブトムシやクワガタの幼虫の飼育にはマット(土)が必要です。この土は栄養分があり、クロバネキノコバエの幼虫も育ち、卵を産み付けられてしまいます。ケース用のコバエ侵入防止用のシートが販売されていますので、そちらを使用しての飼育をお勧めします。

外から成虫を侵入させない

野外にはクロバネキノコバエが普通に存在しています。また、庭やベランダなどで植物や野菜などを栽培していると、発生することが多々あり、それが家の中に侵入してくることがあります。身体が小さいので、わずかな隙間からでも入ってしまいます。もし窓のサッシに隙間ができている場合は、市販の隙間用テープを使いましょう。

写真はイメージ
写真はイメージ写真:イメージマート

隙間をふさいでも網戸の目から入ってきてしまうことがあります。網戸の目の大きさは、一般的に18~20メッシュ(1.15~1.03mm角)と言われていますので、小さなクロバネキノコバエは通れてしまいます。24メッシュ(0.84mm角)以下なら、大量に入ってくることはないと見られます。

網戸や窓にスプレー剤を

害虫の侵入を防ぐスプレーが市販されています。網戸や窓枠、壁やサッシの隙間など、クロバネキノコバエが入る可能性がある場所にスプレーしておくと効果があります。また、網戸に貼り付けるタイプや玄関やベランダに吊り下げておくだけで害虫の侵入を防ぐ商品もありますので、場所によって商品を選ぶとよいでしょう。

粘着トラップで捕まえる

植物の鉢の土に粘着剤を挿しておくことで、土の上を歩いて移動する習性があるクロバネキノコバエを捕獲することができます。化学殺虫剤不使用でニオイがないタイプが多くリビングでも使いやすいでしょう。水がかかっても使える強力な粘着剤なので、水やり時にも安心です。

植物にスプレーできるものも

植物に使えるという記載がないコバエ用スプレー剤は「農薬」ではないので、直接植物にスプレーするとダメージを与えてしまいます。植物にかける時は農薬登録をとっているスプレー剤を選ぶことが重要です。このようなスプレー剤は、キノコバエとともにアブラムシやハダニ類を一緒に退治できるものもあるので、もし植物にアブラムシなどが発生しているのであればこちらもお勧めです。

キノコバエ用の対策グッズを使う

商品を選ぶときに気を付けてほしいことがあります。それは、土から発生するクロバネキノコバエには、前回の記事でご紹介したキッチンコバエ用の「捕獲器」では効果がないことです。商品には「コバエ」と書いているのですが、コバエにはいろいろな種類があるので、商品の裏面等を確認して、キノコバエ用の商品を選びましょう。

最後に…

私が今の仕事に就く前、観葉植物を買って部屋に置いてから2週間ほど過ぎたころ、コバエを見かけるようになりました。その当時はコバエについての知識がなく、何か生ゴミや食品から来ていると思い込み、発生源を探しましたがわかりませんでした。コバエは多くはないけれど、毎日出てきていてイヤな気持ちで過ごしていました。部屋の中で何か変わったことがあったか思い返した時、観葉植物に行き着いて、「これかもしれない」と思い、処分した結果、コバエの発生はなくなりました。ただ、その時、土からコバエが出てくることがあるという知識を持っていて、きちんと対処していれば、せっかく購入した観葉植物を処分しなくてもよかったと思います。

3回にわたって家の中で遭遇しやすいコバエを紹介しました。「コバエ」とくくられてはいますが、種類によって生態や対策が異なります。家の中で見かけた場合、種類を確かめることできちんとした対処ができるかと思います。コバエは10月くらいまでは活動していますので、こちらの記事を参考にしていただければ幸いです。

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アース製薬(株)研究部で害虫飼育を担当

兵庫県出身。都内の美術学校卒業後、 家具店店員、陶芸教室講師など虫とは全く関係のない職業に就いていたが、1998年に地元・赤穂のアース製薬に入社以来、害虫の飼育を担当している。しかし、現在も虫は好きではない。著書に「きらいになれない害虫図鑑」(幻冬舎)※記事は個人としての発信です。

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