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A Film About Coffee -- コーヒーをめぐる美しい世界の旅

松村太郎ジャーナリスト/iU 専任教員
ブランドン・ローパー監督。コーヒー農園から世界のコーヒー都市をフィルムに収めた

本当に、コーヒーの世界は美しかった。

2014年6月3日に、サンフランシスコのカストロシアターで上映された1本のドキュメンタリー映画。そこには、コーヒーでつながる世界をつづった情景が描かれていました。

「ア・フィルム・アバウト・コーヒー」(A Film About Coffee)は、ブランドン・ローパー監督(写真)が3年間にわたって、ホンジュラスやルワンダのコーヒー産地、そしてサンフランシスコ、ポートランド、シアトル、東京という世界のコーヒーカルチャーを牽引する都市をフィルムに収めた作品です。

サードウェーブコーヒーカルチャーの中で必ず登場する「Seed to Cup」(コーヒーノキの作付けから、カップまで)、そしてこれに携わる人々、社会や環境の問題を、美しい映像とともに深く理解することができ、コーヒーの現在を知りたい人は必見の作品でした。

コーヒー農園でのていねいな収穫と「プロセス」と呼ばれるグリーンコーヒー(生豆)の状態にする加工、保存され、出荷され、焙煎所での試行錯誤の末、我々が知っているコーヒー豆が出来上がります。そして豆を1杯のカップに凝縮するバリスタのテクニック。

おいしい1杯のコーヒーができるまで、どんな人が携わっているのか。そこに、どんな問題点があるのか。こうした透明性もまた、現在のコーヒーカルチャーで重要視されているストーリーなのです。

予告編はこちらから。

舞台挨拶には、ブルーボトルのジェームス・フリーマン氏と、リチュアルのアイリーン・ハッシ氏が登場

上映後の舞台挨拶。左から、ローパー監督、フリーマン氏、リナルディ氏。
上映後の舞台挨拶。左から、ローパー監督、フリーマン氏、リナルディ氏。

サンフランシスコ中のコーヒーに携わる人々が集結したプレミア上映会。

ロビーでは、ブルーボトル、フォーバレル、リチュアルという、サンフランシスコだけでなくサードウェーブのコーヒーシーンを代表する焙煎所が特別にコーヒーを振る舞っていました。ポップコーンとコーヒーで楽しむ、コーヒーの映画らしい香りが漂っていました。

上映が終わると、監督の呼び込みで、映像にも登場していたブルーボトルコーヒーの創業者、ジェームス・フリーマン氏と、リチュアル・コーヒーのアイリーン・ハッシ・リナルディ氏も登壇し、1100人を対象にしたQ&Aセッションが開催されました。

2人は、他の焙煎士やバリスタ、コーヒーバイヤーと友に映像に登場してインタビューを受けており、ジェームスは作中で、サンフランシスコ・ミントプラザの店舗に作った自慢のサイフォン・バーでコーヒーを淹れる様子も収められていました。

サンフランシスコ4大ロースターで唯一の女性オーナーであるアイリーンは、コーヒー農園への投資にも積極的な活動家。コーヒーバイヤーと連携して、農園を育てながら最高の豆を顧客に提供してきた実績からの意見を主張していました。そして、サンフランシスコの活力が、次のコーヒーのトレンドを生み出すとの見通しを示していました。

日本に対するリスペクト、観客も喝采

表参道コーヒー。古民家の縁側でエスプレッソが楽しめる。
表参道コーヒー。古民家の縁側でエスプレッソが楽しめる。

この映画で楽しみだったのは、東京でロケしたパートでした。ここで、非常に面白いコラボレーションが行われていました。

紹介されていたのは、OMOTESANDO KOFFEE、フグレントウキョウ、リトルナップなど、東京の新しいコーヒースポットの数々。

特にフィーチャーされていたのが、下北沢にあるベアポンドエスプレッソでした。ニューヨークで活躍したバリスタの田中勝幸さんがフィルムに登場し、2009年から店を構えるエスプレッソ・バーで披露した、エスプレッソへの強いこだわりには、会場は大興奮。そして、田中さんがインタビューの最後に放った「コーヒー人は、セクシーでなきゃ」の一言に、会場のテンションは最高潮に達しました。

惜しまれながらも閉店した表参道の大坊珈琲店。映画の中でフリーマン氏が紹介した。
惜しまれながらも閉店した表参道の大坊珈琲店。映画の中でフリーマン氏が紹介した。

続いて、ブルーボトルのジェームスが、東京の喫茶店での体験を語るパート。その中で、ジェームスは、2013年12月末で閉店した表参道の大坊珈琲店について紹介していました。大坊さんのネルドリップが、しっとり、じっくりと映像に収められています。

筆者も、2013年秋に取材をさせて頂き、朝の焙煎の風景もう、あの場所では見られない、貴重な映像といえるでしょう。このパートにも、大きな拍手が向けられていました。

コーヒーの今を描ききった「ア・フィルム・アバウト・コーヒー」。生産地からカップまで、世界中を巡る中で、東京の喫茶店文化、新しいコーヒーカルチャーが、世界の中で重要な位置を占めているという共通認識が、そこにありました。

現在、米国のコーヒータウンでの上映会が続いていますが、日本でも上映されることになれば、ぜひ、コーヒーの今の旅を体験してみて下さい。

ジャーナリスト/iU 専任教員

1980年東京生まれ。モバイル・ソーシャルを中心とした新しいメディアとライフスタイル・ワークスタイルの関係をテーマに取材・執筆を行う他、企業のアドバイザリーや企画を手がける。2020年よりiU 情報経営イノベーション専門職大学で、デザイン思考、ビジネスフレームワーク、ケーススタディ、クリエイティブの教鞭を執る。

松村太郎の「情報通信文化論」

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米国カリフォルニア州バークレー在住の松村太郎が、東京・米国西海岸の2つの視点から、テクノロジーやカルチャーの今とこれからを分かりやすく読み解きます。毎回のテーマは、モバイル、ソーシャルなどのテクノロジービジネス、日本と米国西海岸が関係するカルチャー、これらが多面的に関連するライフスタイルなど、双方の生活者の視点でご紹介します。テーマのリクエストも受け付けています。

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