武道館がアキバになった日、でんぱ組武道館ライブがファンとスタッフとメンバー一体の圧巻のステージでした
ゴールデンウィークの最終日5月6日、でんぱ組.incが日本武道館にて単独公演「ワールドワイド☆でんぱツアー2014 in 日本武道館 ~夢で終わらんよっ!~」を満員御礼の約1万人のファンの前で開催しました。
でんぱ組.incの本拠地であるアキバのライブ&バー「ディアステージ」。そこから武道館までは、実はわずか約3km。しかし、その3kmの先にある武道館にでんぱ組の彼女たちは6年かけてたどり着いたことになります。
ライブ当日、開場が若干遅れ、武道館に入り、座席についてみると、そこにはタイアップという枠を超えたファンへのお土産がありました。ええ、すべての席においてありました。この辺から、きょうのでんぱ組のライブは、なんかすごいことになるかもしれないという予感がしてきました。
そうこうするうちに、DJが音楽をかけ始めました。開演前タイムも無駄にしない運営グッドジョブ。またDJが、とても準備運動とは言えないほどに盛り上げるから、いわゆるヲタ芸が椅子のないアリーナでおっぱじまっていました。そうこうするうちに、普段はディアステージで働いているはずのディアガールたちが、武道館でサイリウムを売り子さんとして登場していました。そんなこんなで開演前から、武道館のファンはすでに完全にあったまっていました。
そして、新曲「Dear☆Stageへようこそ」からライブスタート。はじまってみれば、たしかに盛り上がったはずの開演前DJを圧倒する息つく暇もないオープニングがぶち込まれました。もう、そこからは圧巻の3時間・26曲のステージ。
でんぱ組メンバーたちのパーフォーマンスもさることながら、冴え渡るファンタジスタ歌磨呂氏によるアートワークと、それを具現化するステージ・映像・照明・音響にしっかり予算をかけて、すべての要素でファンを裏切らないために妥協せずにスタッフ全員で、まさにでんぱ組メンバーがそう言ったように、ディアステージ武道館店が作り上げられていました。これは、あとから聞いたことですが、上の写真の階段上のステージは、ディアステージのステージと同じサイズだったそうです。これはぐっときますね。
でんぱ組の曲って元々情報量が多いのが特徴です。しかし、この日の武道館で映像と照明が渾然一体となった姿を見てわかったことがあります。それは、でんぱ組がファンに届けるものの振る舞いです。
「情報は多ければ多いほどよくて、そこから何を受け取るかは個々人が勝手にやればいい」というのは、ソーシャルメディア時代でさらに加速しているWebの大原則なのですが、でんぱ組のステージの姿がまさにそんな感じだったのです。そんなことがライブで実現しているなんてことがすごすぎるんですが、そこがでんぱ組とファンの関係を作る際にはかかせない要素だと思うのです。
すでに武道館をまさに自力で埋められるでんぱ組のファンにはいろいろな層の人たちがいます。座席を見ても、ファンは男ばっかりなんてことはなくて、4割ぐらいは女の子たちでした。また、6年の歴史があるでんぱ組ですから、古くからのファンもいますし、武道館ではじめて生のライブを見るというファンもいるはずです。
こういう多様な人たち全員に満足してもらうには、ステージから届けるものも、重層的で多用なものである必要があるのです。それをでんぱ組のスタッフのみなさんは実によくわかっています。
具体的には、あたらしいファン向けに歌詞や口上をサブスクリーンに写したり、分かる人にはわかる映像がちりばめれていたりといったこと。どっかに自分が理解できたり、共感できるポイントを作ってあげれば、ファンはちゃんとついてきてくれるんですよね。
たぶん即興でやったと思うのですが、照明と映像を使って、アンコールのコールでファンとスタッフがエールを送り合っているライブなんて、ホントにはじめてみましたよ。あのアンコールのコールはホントに武道館にいた全員が生み出したものでした。
このファンとでんぱ組の関係を、これ以上ない言葉で表現してくれたのが、でんぱ組メンバーの夢眠ねむさんです。彼女は、ステージでこう言い放ちました。
『みなさん一人一人が私たちをここまで連れてきたという自覚はありますか?』
これですよ、これ。「ファンのおかげです!」でもなく、「私たちがんばりました!」でもなく、これ。これしかない。
21世紀型のアイドルというのを一文で紹介するなら、今後この言葉が使われていくことになるはずの言葉です。日清カップヌードルの現代のサムライたちも、この言葉で理解できるはずです。
そして、こういう言葉が自然と出てくるのは、でんぱ組って、W.W.D二部作が象徴するような物語をもったアイドルグループだからなんです。その物語があるから、ファンもでんぱ組に参加できるし、時としてでんぱ組を引っ張っていく存在になるわけです。そこがねむきゅんの言う「自覚」ということです。
さて、ライブが全部終わっての、私がいちばん最初に思ったことは「武道館小さいな」というものでした。卑近な話に聞こえるかもしれませんが、でんぱ組は大手事務所所属ではありません。それでも、6年かかったけど、武道館公演を実現させました。これに勇気づけられているアイドルたちはたくさんいるはずですし、だからたくさんのアイドルたちが、この日武道館にやってきていたのです。
この先予定されているツアーのファイナルはアリーナという予告もありましたが、それも含めて、この先できるだけ長く活動することが、もっともでんぱ組らしい姿勢なのではないかと思いました。