【日韓初】Jリーグ30年・韓国人Jリーガー全288名の統計をとってわかったこと
今やJリーグで欠かせぬ存在になっている韓国人選手。
ただ、Jリーグ開幕元年の1993年、Jリーグでプレーした韓国人選手はサンフレッチェ広島に在籍していたノ・ジョンユンただひとりだった。その後も数年間はノ・ジョンユンだけだった時代が続いた。
そんな状況を変えた最初の転機が1996年だ。1996年5月31日に日本と韓国が2002年ワールドカップを共同開催することが決まり、1997年から2002年にかけてJリーグでプレーした選手が増えていった。
(参考記事:今だからこそ知りたい!! 韓国人Jリーガー、あの人たちは“いま”)
また、2009年からは「一般外国籍枠」とは別に「アジア枠」が設けられた。
「アジア枠」とは2009年からAFC(アジアサッカー連盟)が設けた「Asian quota rule」のことで、AFC加盟国の選手1名は「一般外国籍枠」に含まず、登録・出場を許可するという制度のことだ。これによって各クラブは「一般外国籍枠」の3名とは別に、AFC加盟国の国籍を持つ選手1名を雇用できるようになった。
この「アジア枠」導入で韓国人Jリーガーが増えた一面もある。
というのも、アジア枠導入前年の2008年にJリーグでプレーした韓国人選手は15名だったが、アジア枠導入年の2009年は32名と、2倍以上になっていた。その後も数は増え、64名が登録された2013年にはブラジル勢を抜いてJリーグで最も多い外国籍勢力になった。63名になった翌2014年にもブラジル勢を抜いてトップに立っている。
ただ、「一面もある」としたのは、後述するがそれが理由のひとつであるものの絶対ではないからだ。
例えばJリーグのチーム数増加も無関係ではないだろう。Jリーグは1999年に2部リーグであるJ2リーグを、2014年には3部リーグであるJ3リーグをスタートさせているが、チーム数が増えるということは選手の雇用枠が増えることでもある。枠が増えたことで韓国人選手が増えたとも言える。
実際に調査してみると、Jリーグのさまざまなカテゴリーで韓国人選手の登録を確認できた。
調査対象としたのは、韓国で生まれ育った韓国人Jリーガーだ。日本で生まれ育った在日韓国人選手は含まず、出身地が「韓国」となっている選手だけに限定した。それが以下にまとめた図だ。
濃紺はJ1リーグ、青はJ2リーグ、黄緑色はJ3リーグでプレーした韓国人選手を示している。韓国人選手が特定のレベルだけに集まっているのではなく、Jリーグ全般においてプレーしていることがわかった。
ただ、同一選手が複数に渡ってJリーグに在籍したり、J1からJ2もしくはJ2からJ1へと戦うリーグ・レベルが翌年に異なっている場合もある。この図に示された年度別選手の総数が、過去30年間に来日した韓国人Jリーガーの総数にはならないわけだ。
そこでJリーグの公式記録ウェブサイト『J.League Date Site』を使用して来日初年度のみをカウントして韓国人選手の年度別推移を調べてみた。
その結果、1993年シーズンから2023年シーズンまでの30年間に、日本にやって来た韓国人選手はのべ288名だった。以下は年度別推移をグラフにしたものだ。
そして、この288名の経歴を韓国サッカー協会(KFA)の記録とも照らし合わせながら、ポジションや初来日年齢、試合出場数などのJリーグ公式記録だけではなく、来日移籍前の所属先(プロかアマか)、育成年代を含めた代表歴、国際大会出場歴など、来日した韓国人Jリーガーたちの特徴をさまざまな角度から調べてみた。
その結果を円グラフでまとめると以下のようになる。
来日前の所属チームとしてはKリーグが最も多い104名で、それに続くのが大学(97名)、高校(46名)の順となった。さらに海外アマを含めると、149名がJリーグでプロになっていることがわかった。
つまり、全体の半数以上が高校・大学を卒業もしくは中退してJリーグのクラブと契約したアマチュア選手で、当然、来日年齢も若い。10代~24歳の若さで来日している選手の比率は全体の70%に達するほどだ。
ポジションで最も多かったのはDF(100名)。それに続くのがMF(95名)、FW(63名)、GK(30名)となっている。当初はFWとMFが多かったが、次第にDFも増えていき、近年はGKがたくさん来日している。GKに関しては30名中25名が2015年以降に来日した選手であることがわかった。
そして、在籍年数だ。1年未満が最も多い115名だが、2年以上Jリーグでプレーした韓国人選手の割合は全体の60%になる。
戦力にならなければ1年で見切りをつけられてしまう厳しいプロの世界で、2年以上もリーグに在籍できている事実が物語るものは多い。韓国人Jリーガーたちが「戦力として計算できること」を示した成果と言えるだろう。