なぜバルサはデンベレがパリSG移籍に迫っているのか?ネイマールの“代役論争”と補強失敗の結末。
移籍と残留の間で、揺れている。
バルセロナはウスマン・デンベレが移籍に近づいている。今夏、移籍を希望しているキリアン・エムバペの代役に、パリ・サンジェルマンがデンベレを確保しようとしている。
「デンベレの件は、シンプルだ。パリ・サンジェルマンからオファーが届いた。デンベレはすでにナセル(・アル・ケライフィ会長)やルイス(・エンリケ監督)と話をしている。移籍を希望していて、パリと同等のオファーを我々には準備することができない」
「説明は、デンベレ側からあると思う。現時点で、私がどのように感じているかは問題ではない。失望は、おそらく、ある。だが大事なのは、デンベレの意思が明確だったことだ。今後の幸運を祈っている」
これはシャビ・エルナンデス監督の言葉だ。
■契約延長と条件
バルセロナは2017年夏に移籍金固定額1億500万ユーロ(約157億円)+ボーナス4000万ユーロ(約60億円)でボルシア・ドルトムントからデンベレを獲得。当時、クラブレコードの移籍金だった。
昨年夏には、契約延長騒動の末に、新契約を締結。2024年夏までの契約にサインした。ただ、その際、移籍金5000万ユーロ(約75億円)以上のオファーが2023年7月31日までに届いた場合、移籍の交渉を行わなければいけないという旨が記載されていた。これは“移籍義務契約条項”として、バルサとデンベレ側が合意していた。
パリSGはデンベレの獲得に移籍金5000万ユーロを準備している。交渉において、残すところは、その5000万ユーロをバルサとデンベレ側でどのように分配されるか、だ。
これもまた、先の契約延長の際に、バルサとデンベレ側が移籍金の受け取りを一定の割合で“折半”するという取り決めが交わされていた。その話し合いが終わり次第、デンベレのパリSG移籍が決定するといわれている。
バルセロナはデンベレに期待を懸けてきた。とりわけ、シャビ・エルナンデス監督の就任以降、指揮官が厚い信頼を寄せていた。それを受け、デンベレ自身、選手として成長してきた。
いわゆる“チキ・タカ(パスサッカー)“を志すバルセロナで、デンベレのような選手は異質だ。ドリブルが得意で、個人の能力で突破ができる。ネイマール、ロナウジーニョ、ルイス・フィーゴ、ロナウド、ミカエル・ラウドルップ、フリスト・ストイチコフ、ロマーリオ…。過去、多くの選手がパスサッカーを昇華させる役割を担ったように、デンベレもまたそのタスクを請け負っていた。
■ネイマールの代役として
また、デンベレは、ネイマールの代役として、獲得された選手だ。
バルセロナは2017年夏にネイマールがパリSGに移籍。契約解除金2億2200万ユーロ(約330億円)が支払われ、リオネル・メッシ、ルイス・スアレス、ネイマールの「MSN」に解体の日が訪れた。
ネイマールの“代役論争”は続いた。バルセロナはデンベレ(移籍金1億500万ユーロ/約157億円)、フィリップ・コウチーニョ(移籍金固定額1億2000万ユーロ/約180億円/2018年冬加入)、アントワーヌ・グリーズマン(契約解除金1億2000万ユーロ/2019年夏加入)を次々に獲得。しかしながら、この補強を当てることができず、デンベレの移籍が決まれば、もはや誰一人クラブに残っていない状況となる。
「とても残念だ。デンベレは長い間バルセロナでプレーしてきて、ロッカールームで非常に愛されている選手だ。僕たちは悲しみを感じている。でも、前に進まなければいけない。素晴らしいチームがあり、誰が相手でも僕たちは戦えるはずだ」とは主将のセルジ・ロベルトの弁だ。
「デンベレのように愛されている選手が、みんなの考えとは異なる決断を下したら、残念ではあるよ。でも、僕たちはプロの選手だ。誰もが何がベストかを考えている。彼には、彼の理由があると思う。残って欲しかったけど、彼の幸運を願っている」
遡ること、6年前に、2億2200万ユーロの契約解除金が用意され、ネイマールは花の都に発っていった。その時、バルセロナに成す術はなかった。
デンベレのケースにおいても、状況は似ている。一難去って、また一難――。バルセロナに、再び試練が訪れている。