「話すだけ無駄な人」は何が問題なのか? たった一つのポイント
■ 本当に困る「話すだけ無駄な人」
マジメに相談しているのに、期待通りに取り合ってくれない人がいます。いわゆる「話すだけ無駄な人」のことです。雑談ならともかく、ビジネスコミュニケーションにおいて、そのような人との関係は困りもの。
私は企業の現場に入って目標を絶対達成させるコンサルタントです。現場で指揮統制しない社長が、このような人でも問題ありませんが、実際にマネジメントを担う部長や課長が「話すだけ無駄な人」だと、何ともなりません。
本人は自覚がありませんから、部下たちも半ばあきらめモード。
「部長は何でも相談しに来いと言うけど、話しても無駄」
「課長に話すと、話がややこしくなる。面談でも、こちらからは話さない」
こういう声が聞こえてくるケースもよくあります。ヒドイ場合は、社長と掛け合って、組織体制を変更してもらうこともあるのです。
それでは、この「話すだけ無駄な人」というのは、どういう思考回路をしているのか。どこに問題があるのかを考えてみましょう。
■ 2種類の相談
まずは「相談」について考えてみます。「相談」は大きく分けて以下2種類あります。
● 相談者が意思決定するために、意見を求める
● 一緒に意思決定するために、意見を出し合う
いずれのケースも、相談された側には能動的なスタンスが求められますから、表面をなぞるだけの「表面コミュニケーション」ではなく、論理的に意思決定するための「論理コミュニケーション」を心掛けなければなりません。
つまり、この時点で知っておいてほしいのは、相談される側は、最低限の論理思考力が必要である、ということです。
とくに私が重視するのが「絶対論感」です。「絶対論感」とは、人の話を聞いて瞬時に頭が整理できるか、つじつまが合っているかどうかが判断できるスキルです。
(※参考記事:あなたがロジカルかどうか試す「絶対論感テスト」)
頭ではなく、体で感じとれるかどうかが重要ですから、研修でロジカルシンキングの勉強をしたぐらいでは「絶対論感」は身に付きません。
たとえば、「新事業の開発」が今期の方針の会社で、以下のような相談を部下から受けたらどうでしょうか。
「相談に乗ってください。総務から残業が増えているので、減らしてほしいと言われています。どうしたらいいんでしょうか」
このように言われて、
「どうしたらいいって。そりゃあ、今の時代、長時間労働はダメなんだから、残業減らせよ」
と答えたら、まさに「話すだけ無駄な人」の対応です。
■ 相談の「全体像」
相談に乗ってほしいと部下から言われたら、思考の整理できていない、だから迷子になっている、というサインです。したがって、部下の頭を整理させてやる必要があります。
そもそも迷路に入って、出口がわからなくなったら、どうしたらいいでしょうか。答えは、視座を高くして、迷路を上から眺めたらいいのです。その役割を、相談者がすれば、いずれ出口は見つかります。
全体像をつかむために、まずは足りない情報を集めていきます。そして全体像がおおざっぱにでもつかめたら、自分なりの意見を出していきます。
「残業は何時間だ」
「ここ3ヵ月の平均が30時間。今月はあと1週間残して25時間です」
「総務に目を付けられても仕方がないな。誰が言ってきた?」
「総務課長です」
「課長か。わかった。私が話をつけよう。今期の方針は、新規事業の開発だ。事業開発には時間がかかる」
「はい」
「とはいえ、残業の上限規制は守らなければならない。どこにボトルネックがあるか、業務プロセスの棚卸をしてくれ」
このように、「絶対論感」がある上司なら、今期の方針を達成させるためには、限りある経営資源をどう配分すべきかを一瞬で理解します。経営資源のうちのひとつ――「時間」の配分に問題があるのであれば、まず、それを突き止めようと、直感で判断できるのです。
さらに「人・組織」という経営資源でとらえれば、部下に指摘したのが総務の誰なのかを知ることで、なぜ部下が自分に相談を持ち掛けたのかも一瞬で把握できます。頭に鮮明な組織図があるからです。だから「相手が総務部長ならともかく、課長なら、自分が話をつけられる」と受け止められるのです。
そもそも今期の方針「新規事業の開発」が、頭に入っていない上司であれば、何を話しても無駄です。相談者である部下の意図をまるで理解できません。
つまり「話すだけ無駄な人」は、「相談の全体像」をつかむことがまったくできないのです。
■階層を意識する
組織の目的には、階層があり、職責上位の人であれば、より上位階層の組織目的を意識しなければなりません。ですから、常に視座が高くなければいけないはずなのに、
「残業が増えたんだったら、減らせばいい」
だなんて言ったら、どうしようもない。
「そんなこと、俺に相談することか? 総務の言ってることをちゃんと聞いて、効率よく仕事をしなさい」
と説教されたら、「この人に相談しても無駄だ」とどんな部下でも思うことでしょう。
「絶対論感」がある人は、視座を高くしたり、低くしたりすることが自在に、しかも瞬時にできます。「虫の目」だけでなく「鳥の目」も有しているからです。潮の流れを読む「魚の目」まで持っていると、相談を受ける者としてはレベルが高いと言えます。
論理的な感覚(論感)は、鍛えておかないと衰えていきますから、職責上位者ほど、日々のトレーニングが不可欠です。