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あなたがロジカルかどうか試す「絶対論感テスト」

横山信弘経営コラムニスト
あなたは論理的な感覚を持っているか?(写真:アフロ)

■「絶対論感」とは?

最近、「絶対論感(ろんかん)」という言葉をよく使います。人の話を聞いていて、たとえば「筋が通っていない」「つじつまが合っていない」と一瞬でわかる感覚のことを指します。

この言葉は、もちろん「絶対音感」から来ています。「絶対音感」と対比するとわかりやすいでしょう。

「絶対音感」の持ち主は、複数に重なった音でさえ聞きわけることができます。もちろん音程がズレていると、瞬時にわかります。

「絶対論感」の持ち主は、複雑に入り組んだ議論を整理することができます。もちろん論点がズレていると、瞬時にわかります。

■ 絶対論感テスト(1) 全体―部分

では実際に、ここでテストをしてみましょう。次の文章を読んで、どう「感じ」ますか。そしてなぜそう感じたのか理由を、瞬時に答えてみてください。(論感テストなので、感覚で答える)

当社の課題は以下の3つです。

1)売上が低迷している

2)上司と部下とのコミュニケーションが不足している

3)特に中部地区の情報共有が進んでいない

とても簡単な問題です。いかがでしょうか。

これを別のテーマで記述すれば、さらにわかりやすいでしょう。

私の嫌いな食べ物は以下の3つです。

1)肉

2)みかん

3)ポテトサラダに入っている玉ねぎ

違和感を覚えるのは、階層がそろっていないからです。階層をそろえると「肉」「果物」「野菜」となります。「みかん」は「果物」の一種ですから、より階層が深い。「ポテトサラダに入っている玉ねぎ」は、料理の一部である「玉ねぎ」を指しており、「野菜」という階層から、かなり深い部分に位置していることがわかります。

「絶対論感」がある人は、物事の位置関係が瞬時にわかるため、整理されていない言い回しを耳にすると違和感を覚えます。

「嫌いな食べ物」は単なる雑談で使うことが多いでしょうから、「肉・みかん・ポテトサラダに入っている玉ねぎ」の3つでもかまいません。しかし、組織の課題を抽出する場合はNGです。ロジカルシンキングの基本、「MECE(漏れなくダブりなく)的」になっていないため、正しく課題が抽出できていない可能性が高まるからです。

組織の課題を、経営資源の「ヒト・モノ・カネ・情報」で分解した場合、前出の3つの課題では、まるで整理されていないことがわかることでしょう。

「絶対論感」がある人は、全体と部分との位置関係(包含関係)が明瞭です。うまく言語化できなくても、「なんかおかしい」「しっくりこない」と受け止めるはずです。

■ 絶対論感テスト(2) 部分―部分

続いて、以下の問題はどうでしょうか。次の会話文を読んで、どう「感じ」ますか。そしてなぜそう感じたのか理由を、瞬時に答えてください。(論感テストなので、感覚で答える)

部長:「また新入社員が、入社して1年も経たずに辞めた。最近、売り手市場だからか、若い人の転職が増えていると聞いた」

担当者:「入社3年以内で辞めた若者は、もう7人になります。ここ5年のデータです」

部長:「ベテラン社員のほうが長く続けてくれるから、採用基準を変えたほうがいいんじゃないか」

これも簡単な問題です。いかがでしょうか。

原因と結果との関係が正しいかどうかを判定すればいい。これを別のテーマで記述すれば、さらにわかりやすいでしょう。

妻:「最近、バナナを食べるのが減ったと思う」

夫:「そういえば昔はよくバナナを食べたな」

妻:「そういえばスーパーで売っているのって、バナナより圧倒的にみかんが多いように思う」

夫:「日本人はみかんのほうが好きなんだよ、結局」

この会話文を読んで、「へえ、最近はバナナを食べる日本人が減って、みかんを食べる人が増えたんだ」と思う人がいるでしょうか。しかし、それはなぜでしょうか? その原因は? スーパーでバナナを見かける回数が減ったから? 日本人は結局のところみかんが好きだから? 

「絶対論感」がある人なら、瞬時にこう感じるはずです。

「本当にそうかな?」

と。

論拠が「事実」でないからです。単なる人の「認識」によるものですから、「そうかもしれないが、そうとも限らない」と受け止めるのです。(実際は、近年みかんの消費量は落ちており、反対にバナナの消費量が増えています)

先述の問題もそうです。

「ベテラン社員のほうが長く続けてくれる」と部長が言っていますが、それはこの会社の事情であり、世間のとは異なります。

4月27日付の日経新聞の記事には、「転職者の4割が中高年で占められ」るようになったとあります。昔と異なり、中高年、ベテラン社員も積極的に転職する時代となったことがうかがえます。

したがって、勝手な思い込みで採用基準を変更するのは危険です。

■ 生きた知識にすべき

世の中には、ロジカルシンキングの研修を好んで受講する人がいます。論理思考力を扱った書籍をよく読む人も多い。しかしどんなに勉強しても、ちっとも論理的でない人ばかりです。『生きた知識』になっていなければ、意味を成しません。もっとトレーニングしましょう。

「絶対論感」がない人でも、トレーニングによって論感は鍛えられます。

年齢を重ねるごとに思い込みが強くなりますから、とくに経営者、マネジャークラスは要注意です。瞬間的に「おかしい」「本当にそうだろうか」という感覚がなければ、いくらロジカルシンキングの勉強をしても、仮説を立てようとしたり、フレームワークを使ってみようという決断ができないからです。

論理思考の反意語は感覚思考です。しかし、論理的であるかどうかを感覚的に知覚できる「論感」を意識していきましょう。

(※参考記事:生産性が低いマネジャーは「音痴」ではなく「論痴」である

経営コラムニスト

企業の現場に入り、目標を「絶対達成」させるコンサルタント。最低でも目標を達成させる「予材管理」の理論を体系的に整理し、仕組みを構築した考案者として知られる。12年間で1000回以上の関連セミナーや講演、書籍やコラムを通じ「予材管理」の普及に力を注いできた。NTTドコモ、ソフトバンク、サントリーなどの大企業から中小企業にいたるまで、200社以上を支援した実績を持つ。最大のメディアは「メルマガ草創花伝」。4万人超の企業経営者、管理者が購読する。「絶対達成マインドのつくり方」「絶対達成バイブル」など「絶対達成」シリーズの著者であり、著書の多くは、中国、韓国、台湾で翻訳版が発売されている。

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累計40万部を超える著書「絶対達成シリーズ」。経営者、管理者が4万人以上購読する「メルマガ草創花伝」。6年で1000回を超える講演活動など、強い発信力を誇る「絶対達成させるコンサルタント」が、時代の潮流をとらえながら、ビジネスで結果を出す戦略と思考をお伝えします。

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