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朝ドラのつかみは子役にかかっている 「ブギウギ」澤井梨丘(ヒロイン)と又野暁仁(弟役)はいけるぞ

木俣冬フリーライター/インタビュアー/ノベライズ職人
「ブギウギ」より 写真提供:NHK

子役はドラマのつかみの部分で重要。澤井さんとの出会いは、これでいけるぞ!

10月2日(月)からはじまった朝ドラこと連続テレビ小説「ブギウギ」(NHK)は「いままでの朝ドラと比較にならないくらい圧倒的にエネルギッシュなドラマを作ろうと思っています」と制作統括・福岡利武チーフプロデューサーが語るように、大阪の下町パワーにあふれていた。

“ブギの女王”と呼ばれた人気歌手・笠置シヅ子をモデルに、福来スズ子(趣里)が大スター歌手への階段を駆け上がる物語で、彼女の歌がなぜ、戦後の民衆に圧倒的に支持されたか、彼女の原点である大阪・下町での生活から感じられるようになっている。

第1週は、スズ子の子供時代の物語で、子役・澤井梨丘が、驚くほど趣里にそっくり。今回、連続ドラマに初出演するフレッシュな子役で、700人にもオーディションの中から選ばれた。

「とても明るくて元気でチャーミングな女の子です」と福岡CP。

チーフ演出の福井充広さんは「子役はドラマのつかみの部分で重要です。その点、澤井さんとの出会いは、これでいけるぞ!と感じました」と自信を見せた。

「ブギウギ」より 写真提供:NHK
「ブギウギ」より 写真提供:NHK

「歌と踊りのオーディションを行ったとき、初見で、趣里さんに似てると大注目しまして。それだけでなく、芝居も歌もすばらしく、ある意味、即決。通常はやらないことですが、オーディションのあと、引き止めて、髪の毛を切ることができるかなど本番に向かう準備ができるか聞いてしまうほどでした」

ただ、心配な点もあった。

「連ドラ出演がはじめてということで、どのくらい対応できるかと心配でしたが、みごとにやってくれました。はじめてであることが功を奏し、手慣れた感じではなく、感性で演じているところが新鮮でよかった。純粋無垢で、無邪気な女の子の姿をカメラにおさめることができました。柳葉敏郎さん(父役)、水川あさみさん(母役)というベテランの前で緊張して実力が発揮できないこともあるかもしれないという心配は杞憂で、臆することなく、終始笑顔で明るく振る舞っていて、現場の空気がやわらかくなりました」

踊りはバレエを習っていて、素養があったうえ、去年の秋くらいから毎土日に稽古して、本番に備えた。

歌も踊りも演技ものびのびしていて、またひとり、名子役が誕生した。

六郎は、脚本家の足立紳さんにとって強い思い入れのある役

朝ドラや大河ドラマの主人公の子役は、本当にいつも、感心させる。もうひとり注目の子役は、スズ子(本名は花田鈴子)の弟・六郎を演じる又野暁仁である。どこかで見た顔と名前……と思ったら、「舞いあがれ!」(22年度後期)の朝陽くんを演じた子役だった。朝陽くんは、学校に行かずひとりで星を見ているのが好きだったが、五島の自然に育まれ、変化していく。星のことなら人一倍の興味と知識があるが、それ以外は一切遮断している独特の個性をもった役を演じた又野が今度は、ちょっととろい少年をチャーミングに演じている。

「ブギウギ」より 写真提供:NHK
「ブギウギ」より 写真提供:NHK

又野もオーディションで選ばれた。

「六郎は、脚本家の足立紳さんにとって強い思い入れのある役でして。ちょっととぼけたところのある子で、言動が極端ですし、この役は、演じるのが難しいぞと感じていました。澤井さんのように素でのびのびやってもらうわけにはいかず、芝居がしっかりできないと成立しない。そこで、多くの子役に会って、オーディションをしました。そこで、『舞いあがれ!』に出ていて、愛嬌とかわいらしさと、あの年齢で(平成25年生まれの10歳)の現場の対応力、経験値を含めて、彼しかいないと思いました」(福井さん)

第2週の演出を担当した泉並敬眞さんは「スカーレット」(19年度後期)でも又野と仕事をしていて、「ほんとうに純粋な芝居をする。一見、素のように見えてしっかり台本を読んで演じている。しっかり芝居を構築しているように見えないところが彼の才能だと思っています」と評する。

六郎のような、周囲とペースの違う人物が、「ブギウギ」では重要だという泉並さん。

「このドラマでは、世界にはいろんな人たちがいるということが大事な部分のひとつだと、足立さんとの脚本づくりをするうえで話しました。笠置シヅ子さんは、スターだけれど、上からものを見るのではなく、市井の人たちの目線に立っている。その理由は、実家の、大阪の下町の風呂屋で、いろいろな人達に育まれたからだと思うんです。スズ子も、家業はほぼ妻任せのお父ちゃん(柳葉敏郎)や、アホのおっちゃん(岡部たかし)や記憶のないゴンベエ(宇野祥平)、お見合いばかりしているキヨ(三谷昌登)など、個性的な人たちと共に過ごしたことがのちの生き方に影響している。六郎もそのひとりです」

又野暁仁の出演作

これまで朝ドラでは『おちょやん』のカフェー・キネマの女給・若崎洋子の息子・進太郎役、『スカーレット』のヒロインの子供・川原武志の子供時代などを演じていて、BK朝ドラに欠かせない存在になりつつある。足立脚本作品『六畳間のピアノマン』にもカズト役で出演していた。

ちなみに、六郎が大事にしている亀は、子役時代が終わっても出演する。「キャストのひとりのようなつもりで助監督が育てていて、成長していきます」と泉並さん。注目したい。

連続テレビ小説「ブギウギ」

【放送】

総合【毎週月曜~土曜】 午前8時~8時15分 *土曜は一週間を振り返ります

BSプレミアム【毎週月曜~金曜】午前7時30分~7時45分

BS4K【毎週月曜~金曜】午前7時30分~7時45分

【作】 足立紳 櫻井剛 <オリジナル作品>

【音楽】 服部隆之

【主題歌】「ハッピー☆ブギ」中納良恵 さかいゆう 趣里

【語り】高瀬耕造(NHK大阪放送局アナウンサー)

【出演】趣里 水上恒司 / 草彅剛 蒼井優 菊地凛子 小雪 水川あさみ 柳葉敏郎 ほか

【概要】大阪の下町の小さな銭湯の看板娘・花田鈴子(趣里)は歌や踊りが大好き。道頓堀に新しくできた歌劇団に入団し活躍後、上京。そこで、人気作曲家・羽鳥善一(草彅剛)と出会い、歌手の道を歩みだす。“ブギの女王”と呼ばれた人気歌手・笠置シヅ子をモデルにした、大スター歌手への階段を駆け上がる物語。

フリーライター/インタビュアー/ノベライズ職人

角川書店(現KADOKAWA)で書籍編集、TBSドラマのウェブディレクター、映画や演劇のパンフレット編集などの経験を生かし、ドラマ、映画、演劇、アニメ、漫画など文化、芸術、娯楽に関する原稿、ノベライズなどを手がける。日本ペンクラブ会員。 著書『ネットと朝ドラ』『みんなの朝ドラ』『ケイゾク、SPEC、カイドク』『挑戦者たち トップアクターズ・ルポルタージュ』、ノベライズ『連続テレビ小説 なつぞら』『小説嵐電』『ちょっと思い出しただけ』『大河ドラマ どうする家康』ほか、『堤幸彦  堤っ』『庵野秀明のフタリシバイ』『蜷川幸雄 身体的物語論』の企画構成、『宮村優子 アスカライソジ」構成などがある

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