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高プロ制度の解説をします

佐々木亮弁護士・日本労働弁護団幹事長
高度なプロフェッショナルな働き方?(ペイレスイメージズ/アフロ)

高プロ入りの「働き方改革」関連法案、閣議決定へ

 ついに、「働き方改革」関連法案が閣議決定されそうな状況になってきました。

<働き方改革法案>4月6日に閣議決定へ 自民部会が了承

 この「働き方改革」関連法案には、裁量労働制の対象拡大高度プロフェッショナル制度(高プロ)の2つの毒が仕込まれていましたが、裁量労働制についてはデータ問題によって、今回の法案から外されました(健康確保措置という規制強化部分もなぜか削除されました)。

 しかし、残っている高度プロフェッショナル制度・・・これぞ猛毒なのですが、残念なことにこれは残っています。

 ここでは「高度プロフェッショナル制度」について簡単に解説していきます。

労働時間の規制はない

 まず、労働時間の規制はありません。

 今、議論されている働き方改革法案には、1カ月平均80時間までという時間外労働時間の規制がありますが、これは高プロには適用されません

 もちろん、現行法の1日8時間、1週40時間の大原則も適用されません

休憩もない

 次に、会社は、普通の労働者に対しては、6時間を超える場合は45分、8時間を超える場合は1時間の休憩を、「労働時間の途中」に与えなければいけません。

 しかし、高プロの労働者には、会社は休憩を与えなくてもOKです。

 休みなく1日何時間でも働かせてOKということになります。

残業代はもちろんない

 普通の労働者は、1日8時間を超えて、または、1週間で40時間を超えて働いた場合、その労働に対しては割増賃金が支払われます。

 しかし、高プロの労働者には、労働時間の規制という概念がないので、どれだけ働かせても残業代を払う必要はありません

 そして、深夜労働についても払わなくてもOKです。

 これは、裁量労働制や管理監督者という、現行法にある残業代ゼロ制度でさえも深夜労働には割増賃金を支払う必要があるのですが、高プロは、この最後のリミッターまで外す制度というわけです。

 こうした徹底した割増賃金の排除が、高プロ入りの法案を「残業代ゼロ法案」と呼ぶ根拠なのです。

休日は?

 高プロの労働者は、年間104日以上、かつ、4週間で4日以上の休日を与えることになります。

 これは高プロの健康確保措置の1つです。

 年間104日は多そうに見えますが、1年間で祝日を考慮せず、また、お盆も年末もお正月もないという前提での、週休2日に過ぎません。

 実際に行われるのかどうか分かりませんが、休日を偏らせると、とんでもない労働が合法となります。

 たとえば、4週のうち4日の休日を最後の4日に偏らせると、24日連続24時間勤務(休憩なし)でも違法にならないのです。

健康確保措置がある!しかし・・

 こんなひどい制度の高プロなので「労働者が死んじゃうかも!」とでも思ったのか、独自の健康確保措置があります。

 そのメニューは、

 1 勤務間インターバル制度と深夜労働の回数制限制度の導入

 2 労働時間を1ヵ月又は3ヵ月の期間で一定時間内とする

 3 1年に1回以上継続した2週間の休日を与える

 4  時間外労働が80時間を超えたら健康診断を実施する

です(※)。

 「お!いいじゃん!」と思うかもしれませんが、この中から1個選べばいいという制度です。

 で、普通に考えると4を選ぶ企業が続出するでしょうね。

 一番負担がないですからね。

※法案では「労働時間」という言葉は使われず「健康管理時間」という言葉を使っています。

対象労働者は?

 対象労働者は、年収と業務で絞られます。

 年収は、平均給与の3倍の額を相当程度上回るものとなるので、900万円台でも入りそうですが、現時点では1075万円という基準だと説明されることが多いです。

 ただ、これは何度も言っていますが、絶対に下がります。断言します。絶対に下がります。大事なことなので2度言いました。

 その理由はこちらの記事を読んでください。

<残業代ゼロ・過労死促進法案>他人事ではない!~年収1075万円は絶対に下げられる5つの理由

塩崎厚生労働大臣、「残業代ゼロ」法案は「ぐっと我慢して頂いてですね、まあとりあえず通す」と発言

 今は「自分には関係ないから」などと思っていたら、いつの間にか高プロ対象になっちゃうかもしれません。

 なんせ、経団連は年収400万円(残業代込み)を超えれば対象にしたいと考えているのですからね・・。

 業務は、高度なプロフェッショナルな業務が対象です。

 これは実際のところ、どの業務が入るのか、イマイチ不明です。

 一応、例としては金融商品の開発、ディーリング業務、アナリスト業務、コンサルタント業務、研究開発業務などが挙げられていますが、これに限られるわけでもなく、どこまで広がるのかわかりません

 

成立すると広がっていく危険性

 高プロは、労働時間の規制のことごとくを外す制度です。

 当然、長時間労働となります。

 これについて、年収の高い労働者は交渉力があるから、などと言って導入を推進する向きもありますが、労働者の交渉力に期待する制度がうまくいくはずがありません。

 冷静に見れば、高プロは長時間労働に拍車をかけ、過労死を生み出す死の制度だといえます。

 法案から、高プロを削除しなければ、「働き方改革」の名が泣くというものです。

弁護士・日本労働弁護団幹事長

弁護士(東京弁護士会)。旬報法律事務所所属。日本労働弁護団幹事長(2022年11月に就任しました)。ブラック企業被害対策弁護団顧問(2021年11月に代表退任しました)。民事事件を中心に仕事をしています。労働事件は労働者側のみ。労働組合の顧問もやってますので、気軽にご相談ください! ここでは、労働問題に絡んだニュースや、一番身近な法律問題である「労働」について、できるだけ分かりやすく解説していきます!2021年3月、KADOKAWAから「武器としての労働法」を出版しました。

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