新・ヤングなでしこが挑むアジアの壁。U-20女子の新世代、23名の精鋭が織りなす強みとは?
【粒揃いの育成年代。23名の精鋭を発表】
粒揃いの新世代から、次のなでしこ戦士は出てくるだろうか。
3月3日から16日までウズベキスタンで行われるU-20女子アジアカップに臨むメンバー23名が発表された。
AFC U20女子アジアカップ ウズベキスタン 2024メンバー
今大会は今年9月にコロンビアで開催されるU-20女子ワールドカップの予選を兼ねており、日本はグループステージでベトナム(3月4日)、中国(7日)、北朝鮮(10日)と戦う。8チーム中上位4チームがワールドカップ出場権を獲得できる。
前回大会まで「AFC U-19女子選手権」として行われていたこの大会で、日本は2015年から3連覇中。現なでしこジャパンでも、半数近くのメンバーが同世代でアジアチャンピオンになっており、2018年にはU-20ワールドカップで優勝している。世界への登竜門となる大会なのだ。
今大会でU-20日本女子代表(ヤングなでしこ)を率いるのは、U-17年代や昨年末のアジア競技大会日本代表(優勝)などで実績を残してきた狩野倫久監督。昨年3月にU-19日本女子代表を立ち上げてから、海外遠征を含む5回の合宿で計48名の選手を招集し、今大会の23人の精鋭を選び抜いた。
メンバーの内訳を見ると、23名中、WEリーグから18名、NWSL(米女子プロサッカーリーグ)1名、ダーム・アルスヴェンスカン(スウェーデン女子1部)1名、クラブユース1名、国内大学1名、アメリカ大学1名と、国内外の幅広いカテゴリーから選出されている。そして、大半の選手がプロの環境でプレーしている。
「アンダー20のワールドカップを経験した選手たちもいますし、U-17のワールドカップや(育成年代の)アジアの予選を経験してきた選手もいます。また、プロアスリートとして日常を過ごしている選手も多くいます。そういう部分で、日常の取り組みや自分のストロングをしっかりと国際大会の舞台で出してもらえることを期待しています」(狩野監督)
この世代の筆頭である藤野あおば、谷川萌々子、古賀塔子らは、なでしこジャパンのアジア最終予選に参加するため招集されていない。2022年のU-20W杯でゴールデンボール(MVP)を受賞した浜野まいか(チェルシー)も招集されず。狩野監督曰く、この大会はFIFAのインターナショナルウインドウ=国際Aマッチデー(代表に拘束力がなく、選手を出すかどうかの権限がクラブ側にある)に該当しないため、招集できなかったケースもあるようだ。
そのような状況は、以前はなかった。一方で、それだけ若い世代から国内外のトップレベルで活躍している選手が増えている証左でもある。国内でも10代からプロリーグでコンスタントにプレーする選手が増えたことによって、プレーの強度が上がり、ケアやコンディショニングへの意識も変わりつつある。育成年代を長く指導してきた狩野監督は言う。
「ハードワークと言わなくても当然のようにタフに戦い、アグレッシブにバトルし合える。また、2つ以上のポジションがスムーズにこなせるなど、選手たちの戦術理解度が非常に高いです。そういうブレイン(頭脳)や思考の部分で高い(力を持った)選手たちが今まで以上に増えてきた印象です」
【タフなアジアの戦いへ】
選出された23名の顔ぶれを見れば、今大会は十分に優勝を狙える陣容となっている。
2022年のU-20ワールドカップ準優勝メンバーに飛び級で名を連ねた林愛花、天野紗、土方麻椰、小山史乃観、松窪真心、大山愛笑の6選手が再参戦。また、同年のU-17ワールドカップ(ベスト16)は、優勝候補と期待されながらベスト16で優勝国のスペインに敗れて涙を飲んだものの、鹿島彩莉、岩崎有波、中谷莉奈、吉岡心、岡村來佳、久保田真生、樋渡百花、白垣うの、辻澤亜唯、松永未夢の10名がワールドカップでリベンジを挑む。さらに、天野、小山、土方、佐々木里緒の4人は、年齢制限のない代表で臨んだ昨年10月のアジア競技大会で優勝している。
その強い「個」を、チームとしてどう導いていくのか。
狩野監督は、U-17W杯でもアジア競技大会でも、多くの選手を起用しながら各選手のストロングポイントを組み合わせて柔軟に戦い、チームの一体感を高める手腕に長ける。一方、日本はU-17W杯で敗れたスペイン戦のように、主導権を握っても、能力の高いタレントに一発を決められてしまうことが往々にしてある。「勝利への執念」という点では、グループステージ3戦目の北朝鮮が厄介な相手になりそうだ。
なでしこジャパンのセンターバックを務める南萌華は、「アンダーの時は、ワールドカップよりもアジア予選がきついと思うこともあった」と吐露したことがある。中でも北朝鮮は、アジアの決勝で何度も対戦してきたライバルだ。U-20ワールドカップとU-17ワールドカップで過去2回の優勝歴があり、同年代の実績は日本を凌ぐ。ただし、昨年のアジア競技大会では日本に1-4で負けており、今月末にはアジア最終予選も控えている。闘志をメラメラと燃やしているだろう。
「我々はあくまでチャレンジャーとして臨みますが、中2日の日程や、ウズベキスタンというアウェーでの環境適応など、コンディション面も含めて対戦国もタフに戦ってくると思います」と、狩野監督は警戒する。分析面では強い味方がいる。
「開催地(ウズベキスタン)のことについては、(アジア2次予選を同国で戦ったなでしこジャパンの)池田太監督や他のコーチングスタッフとも話しています。男子もウズベキスタンで何度も大会を行ってきたので、その情報を共有したり、現地には(ウズベキスタン女子代表を率いる)本田美登里さんもいますので、いろいろと情報をもらったりしながら準備を進めています」(狩野監督)
高いポテンシャルを秘めた新世代は、厳しい戦いを勝ち抜き、世界への道を切り開くことができるか。
ヤングなでしこは、2月19日から国内で最終調整を行い、2月27日にタシケント入りする予定だ。