楽天が不正レビューをなくすのに考えるべきこと
楽天での不正レビュー
楽天が、不正レビューを行っていた業者に対して、1億9800万円もの損害賠償を求める訴訟を起こしたということで、話題になっています。
以下の通り、大手メディアでも取り上げられていることからも、事の重大さが想像できるでしょう。
- 朝日新聞 - 「楽天市場にウソの口コミ」 損害賠償求め楽天が提訴
- 読売新聞 - 「サクラ投稿で妨害」…楽天がレビュー業者提訴
- 毎日新聞 - 楽天市場:「架空投稿で損害」 大阪の会社を賠償提訴
- J-CAST - 「やらせ」の口コミや架空の注文なんと11万件超! 「楽天市場」で大掛かりなステマが発覚
損害賠償金額の大きさもさることながら、121店がそれぞれ150件の不正レビューごとに8万円もの報酬を支払っていたこと、業者からの不正レビュー数が判明しているだけでも11万件あることに驚かされました。
もちろん、以下の通り、楽天の規約には不正レビュー禁止の旨が記載されています。
やらせやステマ(ステルスマーケティング)がまだ根絶されていないこともそうですが、何よりも、大手ECサイトの楽天が不正レビューを11万件も投稿される前にどうして気が付かなかったのか不思議に思いました。
不正レビューは、レストランを紹介するグルメサイトでも同じような問題を抱えているだけに考えてみます。
不正があった1店舗あたり平均900件以上
まず楽天に関する数字を整理してみましょう。出店する店舗数が4万店、全商品数が1億5000万点なので、1店舗あたりの平均商品数は3750点になります。一方、業者による不正レビューは121店で11万件なので、1店あたりに平均すると900件以上にも上ります。
レビューには「店に対するレビュー」と「商品に対するレビュー」がありますが、不正レビューはほとんどが商品に対するものであるとすると、実に4商品のうち1つには不正レビューが紛れ込んでいたことになります。売りたい商品により不正レビューが集中することを考えると、1商品でいくつもの不正レビューがあったと考えた方がよいでしょう。
食べログでは
不正レビューに対して、レストランのグルメサイトではどうしているのでしょうか。
「食べログ「ワンコインランチ」は「ランチパスポート」に勝てるのか?」でご紹介した食べログは「食べログ「ベストレストラン2014」に探り箸」でも説明したように、レビューの点数集計に加重平均を採用しています。
食べログは、不正レビューに対して当初は少し足踏みをしていたものの、2012年1月には「不正業者による営業行為に関する報道がなされました件」というプレスリリースを発表し、これを機にして不正レビューを本格的に取り締まるようになりました。
レストランや業者は自分たちの生業に直結するだけに必死になって裏道を模索するはずなので、規約に記載してそれで終わりというのでは効力は弱いでしょう。
そこで単に利用規約を厳しくするといったぬるい方法ではなく、効果の程はともかくとして他では行っていない携帯電話番号認証まで導入したり、有名レビュアーを偏重することにはなりましたが点数の集計方法を単純平均から加重平均に変更して捨てアカウントによるレビューを無効化したりと、大きくシステムを変更して実効性のある施策を行ったことは評価できます。
他のグルメサイトでは
他のグルメサイトでは、どうでしょうか。
ぐるなびも食べログと並ぶ大手グルメサイトですが、出自がレビューサイトではないだけに、レストランとの関係性を重要視して、レビューシステムを始めるのが2011年10月からと遅かったです。
レビュー数があまり多くない上に、サイト上でもレビューはあまり目立っていないので、不正レビューが蔓延するだけの魅力的な環境ではないでしょう。そのため、ぐるなびで不正レビューの噂を聞くことはありません。
「【価格設定の妙手】OZmallが打ち出した5800円と2500円の新プランとは?」でご紹介したOZmallはどうでしょうか。
OZmallのレビューは単純平均ですが、OZmallを通してレストランを予約した訪れた人だけがレビューを投稿できるシステムとなっています。OZmallのプランはもともと席数も限られており、予約も埋まるのが早いだけに、不正レビューを行うのは難しいです。そもそも、OZmallに掲載されるには厳しい審査が必要なので、不人気のために不正レビューを行おうとするレストランが掲載されることは少ないでしょう。
グルメサイトとして急上昇のRettyは、レストランを評価できますが点数化することが目的ではありません。あくまでも実名ユーザによるレストランのコメントがメインとなっているので、不正レビューを行う旨味はないです。
膨大な不正レビューを生み出した原因
楽天のように物販を扱うサイトと、レストランを扱うグルメサイトでは少し事情は違うものの、ポイントとなる項目と対象サイトを整理してみます。
- 購入者や利用者だけがレビュー可能
楽天、OZmall
- サイト上で点数上位が有利
楽天、食べログ、OZmall
- 点数の集計方法が加重平均
食べログ
- 実名を推奨
Retty
こうやって見てみると、楽天は「サイト上で点数上位が有利」なので業者が目を付け、「点数の集計方法が加重平均」ではないのでレビューを不正に操作し易いので、業者の餌食になってしまいました。
加えて、レストランの場合には「購入者や利用者だけがレビュー可能」なので<レビューする権利>を確保しにくいのですが、楽天は物販であるが故に大量に<レビューする権利>を獲得し易いことが11万件という膨大な不正レビューを生み出した原因になったのではないでしょうか。
レビューする権利
楽天は今後システム的に不正レビューを防止する必要に迫られますが、加重平均を採用することはもちろん、他には例えばですが、これまでに何店舗で何回以上買い物をしたら初めてレビューできるようになるといった<レビューする権利>についても考える必要があるでしょう。
この2つを組み合わせれば、捨てアカウントで簡単にレビューできなくなる上に点数にも反映されにくくなるので、店と業者は費用対効果が合わなくなって不正レビューを諦めるかも知れません。ただ今度は、<<レビューする権利>を不正に取得>する業者への対応も必要になります。
ユーザの利用促進(もっと買い物をしてもらう)のために採用しているレビューによって自身が苦しめられるようになっては本末転倒なので、食べログと同じく日本を代表するサイトとして楽天には何とかしてこの不正レビュー問題を乗り切ってもらいたいです。
元記事
レストラン図鑑に元記事が掲載されています。