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高校侍ジャパンのライバル、新荘球場で激突【U18台湾大会プレレポート】

阿佐智ベースボールジャーナリスト

 台湾の「首都」・台北のベッドタウン新北市は台北を囲むかたちで位置している。その新北市の主要な町のひとつ、新荘はプロ野球CPBLの富邦ガーディアンズのフランチャイズである。ここで31日から始まるU18野球ワールドカップに向けたホスト国台湾(チャイニーズ・タイペイ)対アメリカの練習試合が無観客で行われた。本大会に合わせて7イニング制で行われた試合は、6対7でアメリカが勝利した。

試合会場となった新荘球場
試合会場となった新荘球場

 日本とは違い6月に学年が終わる両国だが、今回の大会の年齢規定もあり台湾のメンバーは、現役高校生(2年生)14人にすでにCPBLドラフトで指名された選手を加えた布陣、アメリカもまた「高2世代」の来年のドラフト候補生中心の布陣となった。

 台湾はアメリカでプレーしている二刀流マイナーリーガー、リン・シェンゲン(レッズ傘下)の招集も試みたが、投手で起用したい代表チーム側に対し、レッズは打者としての起用しか認めず、本大会の目玉の参加は流れてしまった。「台湾の大谷」の呼び声も高いリンは、昨年のこの大会にも出場。最高159キロの速球を武器に対日本戦で勝利投手にもなり、打っては4試合で打率.375を残した有望株である。今年の6月にレッズと契約し、現在はルーキー級で打者としてプレーしている。

 明日から始まる大会を前に最後の調整となったこの試合だが、台湾チームはすでに現地社会人チームとのオープン戦をこなしており、先発投手初めメンバーには少なからぬ代表メンバー外の選手が出場していた。

3回にスリーベースを放ったジェームス
3回にスリーベースを放ったジェームス

 初回にいきなり先制したアメリカは、3回、1番のコイ・ジェームスの左中間への三塁打で2点を追加。さらに3番のP.J.モーランドがレフト線に流し打ってさらに1点を台湾からもぎ取り計4点とした。

 アメリカは、DH制にもかかわらず7番の打順にも入った先発のレビ・スターリンに代わり4回から2番手にこれまた「二刀流」で登録されているノア・フランコをマウンドに送ったが、制球が乱れ気味でさらに守りのミスもあって台湾に1点を献上してしまう。

外野と投手の二刀流で参加するフランコ
外野と投手の二刀流で参加するフランコ

 しかし台湾もその裏、ノーアウト一、二塁のピンチを招くと、ここでショートのエラーが出、続くワイルドピッチもあって3点をアメリカに献上してしまう。それでも、アメリカの投手陣も本調子ではないのかいまひとつピリッとせず、台湾打線も猛烈な追い上げを見せ、試合は1点差でからくもアメリカが逃げ切った。

 両軍とも、守備、投手のディフェンス面で粗さが目立ち、基礎のしっかりした日本の高校球児とは対照的な印象が残った。日本は、まずグループラウンドで同組のアメリカと対戦するが、長打力に警戒し、ボールの見極めができれば、試合を優位に進めることができるだろう。ホスト国台湾は、元々レベル問わず、国際大会に力を入れるお国柄。地元開催とあって本大会ではスタンドの声援もかなりのものになると予想される。スーパーラウンド以降に当たればかなり手強い相手になるだろう。 

今年のドラフトで新荘球場を本拠とする富邦ガーディアンズから1位示され入団したワン・ニェンハオには要注意だ
今年のドラフトで新荘球場を本拠とする富邦ガーディアンズから1位示され入団したワン・ニェンハオには要注意だ

 世界野球ソフトボール連盟(WBSC)主催の第31回U18ワールドカップはコロナ禍で前回大会が実施延期になったため前年のアメリカ大会に続いて2年連続の開催となる(本来は隔年開催)。台湾では2013年の第26回大会以来10年ぶり4回目の開催となる。ホスト国・台湾は台中で主に行われるグループAに属し、韓国・メキシコ・オーストラリア・プエルトリコ、そしてチェコと対戦、日本は台北で行われるグループBでアメリカ・オランダ・ベネズエラ・パナマ・スペインと対戦する。両グループの上位3チームがスーパーラウンドに進出し、グループラウンド(オープニングラウンド)の成績を持ち越した上での成績上位2チームが決勝戦を、3位、4位チームが順位決定戦を戦う。

 大会は8月31日に台北市の天母球場でのホスト国台湾対オーストラリア戦で開幕。日本は翌9月1日から同じく天母球場で始まるグループBの第3戦目、対スペイン戦で初戦を迎える。野球後進国の多いヨーロッパの国とは言え、スペインの陣容は旧植民地だった「野球処」ラテンアメリカ・カリブ出身者で占められているという。各国とも日本のような緻密さはないものの、ポテンシャルの高い選手は多い。油断せず、まずは初戦を突破してもらいたい。

(写真は筆者撮影)

ベースボールジャーナリスト

これまで、190か国を訪ね歩き、23か国で野球を取材した経験をもつ。各国リーグともパイプをもち、これまで、多数の媒体に執筆のほか、NPB侍ジャパンのウェブサイト記事も担当した。プロからメジャーリーグ、独立リーグ、社会人野球まで広くカバー。数多くの雑誌に寄稿の他、NTT東日本の20周年記念誌作成に際しては野球について担当するなどしている。2011、2012アジアシリーズ、2018アジア大会、2019侍ジャパンシリーズ、2020、24カリビアンシリーズなど国際大会取材経験も豊富。2024年春の侍ジャパンシリーズではヨーロッパ代表のリエゾンスタッフとして帯同した。

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