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カタールW杯検証(終)森保監督はなぜ手を尽くさなかったのか。西野Jが積んだはずの学習効果は発揮されず

杉山茂樹スポーツライター
(写真:ロイター/アフロ)

 以下はカタールW杯全4試合に出場した選手の出場時間だ。

1)吉田390分、2)権田390分、3)鎌田323分、4)伊東293分、5)守田285分、6)遠藤273分、7)板倉270分、8)堂安217分、9)長友211分、10)田中183分、前田183分、12)谷口180分、13)三笘162分、14)浅野162分、15)冨安157分、16)酒井120分、17)久保90分、18)相馬82分、19)山根62分、20)南野56分、21)上田45分、22)伊藤45分、23)柴崎0分、町野0分、川島0分、シュミット0分

 これは選手個々の活躍度とともに、森保監督の趣味を反映したデータでもある。「選手選考は監督の趣味」と言ったのはイビチャ・オシムだが、「キミたちはそれを批判しなくてはならない。だがそれを聞いた私が趣味を変えることはない」とも答えている。実力が接近していれば趣味が合う方を選ぶ。そして、監督の趣味に変化がないとすれば、監督交代はそれまで監督の趣味から外れ、埋没していた選手を掘り起こすまたとない機会になる。

 全26人の出場時間も、別の監督でカタールW杯を戦っていれば99.9%異なっていたはずだ。権田と吉田がフル出場を果たした可能性は低い。2人が最終メンバーから外れていた可能性さえある。それがサッカーの特徴だ。

 日本は選手が粒ぞろいだ。10段階で7点台の後半から8点、9点が付けられるA級のスターはいないので、どんぐりの背比べとも言えるが、中の上というか上の下というか、悪くない選手が僅差で連なる姿は、それはそれで壮観だ。まさに群雄割拠の様相を呈す中で、代表チームはある1人の指導者の趣味に長期間、支配されようとしている。

 選手を掘り起こし、循環効率を上げるためには監督の趣味、趣向や価値観は、ある一定の期間をもってリセットされる必要がある。4年は一区切りに相応しい絶妙な期間だとみるが、契約満了すれば、就任期間が丸8年間に及ぶ森保監督の続投に、筆者が賛同できない理由の一つである。

 布陣の話がそれに加わる。

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スポーツライター

スポーツライター、スタジアム評論家。静岡県出身。大学卒業後、取材活動をスタート。得意分野はサッカーで、FIFAW杯取材は、プレスパス所有者として2022年カタール大会で11回連続となる。五輪も夏冬併せ9度取材。モットーは「サッカーらしさ」の追求。著書に「ドーハ以後」(文藝春秋)、「4−2−3−1」「バルサ対マンU」(光文社)、「3−4−3」(集英社)、日本サッカー偏差値52(じっぴコンパクト新書)、「『負け』に向き合う勇気」(星海社新書)、「監督図鑑」(廣済堂出版)など。最新刊は、SOCCER GAME EVIDENCE 「36.4%のゴールはサイドから生まれる」(実業之日本社)

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