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優れた選手が優れた監督を大きく上回る日本サッカー界は監督受難の時代に突入。上下関係の概念が破綻する

杉山茂樹スポーツライター
(写真:岸本勉/PICSPORT)

 選手と監督の関係は競技によって異なる。サッカー選手にとってよい監督とは、自分を使ってくれる監督だ。サッカーは選手個人の優劣を示すデータが少ないスポーツ。選手の出場が叶うか否かは監督との相性がカギになる。ユルゲン・クロップには重宝がられたが、アルネ・スロットに監督が代わるやベンチを温める時間が急増したリバプールの遠藤航を見るまでもない。

 出場時間に恵まれない選手は、監督を好意的に見ていない可能性がある。恩師と呼びたくなる尊敬に値する監督もいるが、顔も見たくない監督もいる。2006年ドイツW杯で、フィールド選手の中で唯一出場機会に恵まれなかった遠藤保仁が、ジーコの顔など2度と見たくないと思ったとしても不思議ではない。

 サッカー界には選手対監督という構図が出来上がっている。世の中には、あの監督にはお世話になった的な美談で溢れがちだが、その数と、2度と顔を見たくない感情は同じくらい存在すると言ってもいい。

 森保一監督対選手しかり。選手がこちらに実際に喋ったわけではないけれど、表に出てこないネガティブな印象は確実に存在する。続投が決まったとき、喜んだ選手もいれば、残念がった選手もいる。

 批判が表面化しないのはネット全盛の時代背景に加え、監督と選手との間に潜む上下関係も輪を掛ける。強者に当たるのはもちろん監督。監督批判がその耳に入れば、その選手は高い確率で干される。多くの選手は言いたくても言えない我慢を強いられている。

 この監督と選手との間に潜む上下関係。しかし日本でこれを維持することは理屈的には難しい。選手のレベルと監督のレベルを比較したとき、選手のレベルの方が確実に高いからだ。欧州でプレーする日本人選手はいまや100人を数える。チャンピオンズリーグの舞台にも今季はすでに10人が立っている。しかし監督はゼロだ。

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スポーツライター

スポーツライター、スタジアム評論家。静岡県出身。大学卒業後、取材活動をスタート。得意分野はサッカーで、FIFAW杯取材は、プレスパス所有者として2022年カタール大会で11回連続となる。五輪も夏冬併せ9度取材。モットーは「サッカーらしさ」の追求。著書に「ドーハ以後」(文藝春秋)、「4−2−3−1」「バルサ対マンU」(光文社)、「3−4−3」(集英社)、日本サッカー偏差値52(じっぴコンパクト新書)、「『負け』に向き合う勇気」(星海社新書)、「監督図鑑」(廣済堂出版)など。最新刊は、SOCCER GAME EVIDENCE 「36.4%のゴールはサイドから生まれる」(実業之日本社)

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