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自らの素性を明らかにしない守備的サッカー監督との対峙法を誤り「超攻撃的3バック」に翻弄された日本

杉山茂樹スポーツライター
(写真:長田洋平/アフロスポーツ)

 今年1年、取材活動を通して最も違和感を覚えた台詞は何かと言えば「攻撃的3バック」になる。ウイングバックにサイドバック系の選手ではなく、三笘薫、堂安律ら4バックでウイングとしてプレーした選手を据える3バックを、多くのメディアは攻撃的3バックと称した。ご丁寧に超まで付けて超攻撃的3バックとする見出しや原稿も目に止まった。

 攻撃的サッカーと守備的サッカー。それぞれの概念および見境が定まっていないために起きた誤りだ。時計の針を30年戻したかのような、サッカー報道のレベルの低さが露呈した一件と言える。

 現在の森保サッカーが守備的サッカーに属することは、攻撃的サッカー、守備的サッカーが激しい攻防を繰り広げた1990年代中盤から後半に掛けての欧州史を振り返ることで一目瞭然となる。こう言っては何だが、筆者は当時、両者の攻防を現地から、天下分け目の戦いの真っ只中にいるような気分で発信したものだ。試合観戦の傍ら、監督、指導者、評論家に欧州でその時、欧州で起きていたことを尋ねて回り、日本に向けて発信した。

 それは間接的に、日本がその時、陥っていた症状を浮き彫りにする結果にもなった。守備的サッカーである。しかし日本在住者にその自覚を持つ人は何人もいなかった。筆者も当初その一員だったのでよく分かる。攻撃的サッカーが存在しないに等しい日本から欧州を訪れると、カルチャーショックに襲われることになった。

 対立軸さえ存在しなかった日本。言い換えればそれぞれのコンセプトについて無知だった。プレスの掛かりにくい4-2-2-2の布陣でプレッシングサッカーを唱えた加茂ジャパンは、その代表的な例になる。攻撃的サッカーを行う術を知らなかったのだ。これを攻撃的サッカーというか。守備的サッカーというか。森保式3-4-2-1を攻撃的というか、守備的サッカーというかという問題と極めて類似した話なのである。

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スポーツライター

スポーツライター、スタジアム評論家。静岡県出身。大学卒業後、取材活動をスタート。得意分野はサッカーで、FIFAW杯取材は、プレスパス所有者として2022年カタール大会で11回連続となる。五輪も夏冬併せ9度取材。モットーは「サッカーらしさ」の追求。著書に「ドーハ以後」(文藝春秋)、「4−2−3−1」「バルサ対マンU」(光文社)、「3−4−3」(集英社)、日本サッカー偏差値52(じっぴコンパクト新書)、「『負け』に向き合う勇気」(星海社新書)、「監督図鑑」(廣済堂出版)など。最新刊は、SOCCER GAME EVIDENCE 「36.4%のゴールはサイドから生まれる」(実業之日本社)

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