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絶対にダメ!森永卓郎さんの病状につけこむ卑劣な手口 今も続く有名人をかたる詐欺サイトへの誘導を暴く

多田文明詐欺・悪徳商法に詳しいジャーナリスト
筆者撮影・修正

本当にヒドイです。これは絶対にダメです。しかしこれがSNS上に出てくる、有名人をかたった詐欺広告の実態です。

「皆さん、こんにちは。現在、膵臓がん(第4期)を患っており、年齢とともに免疫力が低下し、病状が悪化しています。残りの時間が少ないと感じていますが、入院中に老後の心配をしています。死は心臓が止まるときですか?いいえ。治療不能の病気にかかることですか?それも違います。真の死は世界に忘れられたときです」

これはたった今、私のフェイスブック上に出てきた、森永卓郎さんをかたり、詐欺の投資サイトに誘導すると思われる広告です。

病気で苦しむ森永卓郎さんをかたり、平然と詐欺に悪用する卑劣さ

4月10日に、自らの写真が勝手に投資詐欺サイトに誘導する広告に使われた前澤友作さんや堀江貴文さんが、自民党の合同勉強会に出席して、政府にSNSにおける投資詐欺サイトに誘導する広告への規制強化を求めたとの報道がありました。
それにもかかわらず、病気で苦しむ森永卓郎さんをかたり、平然と詐欺に悪用する広告が出てくる状況には、許せない思いになります。
しかし、警察庁の発表では、SNSの広告から投資詐欺サイトに誘導する手口(SNS型投資詐欺)による被害総額は、令和5年だけで、約277億9千万円という金額になっていますので、「人生最後の願い」という文面をみて、話を聞いてみようとする人もいるかもしれません。
そのため、これが投資詐欺サイトに誘導するものかどうかを、しっかりとお伝えするために、あえて先に進んで手口を暴きます。

LINEでの友だち追加を促す詐欺サイトへの誘導広告

次に出てきた画面は次のようなものです。

筆者撮影・修正
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さらに文面は「みなさん、こんにちは。私は森永卓郎です。最近、膵臓がん(第4期)を患っています。年齢の増加とともに、免疫力が低下し、病状が次第に悪化しています。私は残りの時間があまりないと感じています。金融専門家である鈴木恭弥氏を招き、森永卓郎さん(原文ママ) の投資、財務計画の宣伝にご協力いただく予定です。(中略)私の生涯で、私は学んだ株式投資と財務の経験をみなさんに無料で提供します。これにより、皆さんがより多くの財富を蓄積し、生活の質を向上させるお手伝いができればと思います」と続きます。
そこで「森永卓郎のLINEを追加すれば無料で参加できます」の部分をタップしてみます。

森永さんの顔写真とともにQRコードが出てきます。それをスキャンするように促します。すると、LINEの友だち追加がされました。それが下記の画面です。

筆者撮影・修正
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偽のアカウントから誘導される先には投資グループがある

森永さんをかたったアカウントが出てきます。しかも、友だちの数が1598もあるので、信用してしまう人もいるかもしれません。

筆者撮影・修正
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さらに、このようなメッセージがきました。この後は「金融専門家である鈴木恭弥氏を招き」という文面もあるので、この人物をかたり、専門家になりすました人物が主催する投資グループに誘われると思われます。その後に、偽の詐欺投資サイトへの登録を促されます。
ちなみに、さらに先に進むと、10万円ほどの投資を促されて必ず利益が出ます。その利益分は、自分の銀行口座に戻ってきます。こうして出金できると思わせたところで、多額の投資を次々にさせて、罠にはめていきます。この時、日本人名の個人口座に振り込ませる傾向がありますので、法人口座ではない場合には、必ず詐欺を疑って下さい。

いつまでこの状況を許し続けるのか

取り急ぎ注意喚起をするために、アクセスするのはここまでにしますが、これまで被害者などの取材を通じて暴かれてきた詐欺の手口とまったく同じです。
森永卓郎さんとは病気が発覚する前に、ラジオでご一緒して、この有名人になりすます詐欺への注意を強く呼びかけていただけに、いまだに出てきている状況に加えて、彼の病気の苦しささえも使って詐欺を働こうとする行為には腹立たしい思いです。
先日もタイで有名人をかたった広告を使い、日本人を狙っていた、中国人とタイ人からなる詐欺グループが摘発されましたが、こうした海外の詐欺グループはあまたあると思われます。

こうした詐欺グループは有名人のなりすまし広告を通じて、日本人の多くを「投資」の名のもとに罠にはめようとしてきます。絶対にひっかからないようにして下さい。
何より、SNSのプラットフォーム側は、こうした広告を出さないように、しっかりとした対応をしなければなりませんし、国もこうした状況を放置し続けてはいけません。もうすでに年間277億も超える被害出て、数年続いているわけです。一刻も早い対応が必要です。

詐欺・悪徳商法に詳しいジャーナリスト

2001年~02年まで、誘われたらついていく雑誌連載を担当。潜入は100ヶ所以上。20年の取材経験から、あらゆる詐欺・悪質商法の実態に精通。「ついていったらこうなった」(彩図社)は番組化し、特番で第8弾まで放送。多数のテレビ番組に出演している。 旧統一教会の元信者だった経験をもとに、教団の問題だけでなく世の中で行われる騙しの手口をいち早く見抜き、被害防止のための講演、講座も行う。2017年~2018年に消費者庁「若者の消費者被害の心理的要因からの分析に係る検討会」の委員を務める。近著に『信じる者は、ダマされる。~元統一教会信者だから書けた「マインドコントロール」の手口』(清談社Publico)

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