軍事パレードに登場していた北朝鮮の新型携帯用対戦車ミサイル! ロシアが関心?
ウクライナのゼレンスキー大統領は2日前(4月30日)にウクライナ軍がこれまでロシアの戦車1千台余と装甲戦闘車両を約2500台破壊したと、戦果を誇示していた。事実ならば、ロシアにとっては大きな戦力の損失である。
一連の報道によると、ロシアの戦車は自爆ドローン(無人機)や兵士が肩に担いで攻撃する携帯用対戦ミサイルで破壊されているようだ。
ウクライナ軍が現在、使用している対戦車ミサイルは独自の「スタグナP」のほか、英国や米国から供与された「NLAW」や「ジャベリン」などである。建物の陰に隠れ、待ち伏せして進行してきたロシアの戦車に攻撃を仕掛け、破壊しているようだ。
ロシアの猛攻が止まれば、今度はウクライナが反転攻勢を掛けるとも言われているが、ウクライナはそのためには戦車や大砲などの野戦砲を増強しなければならない。NATOからはすでにポーランドやチェコが旧ソ連製のT-72型戦車や装甲車の提供を表明しているが、戦車や重火器が届けば「ドンバスの戦い」は本格的な戦車戦の様相を呈することになる。当然、ロシアとしてもそれに対抗するには空からの更なる攻撃と対戦車ミサイルの補強が必須となるであろう。
ロシアのショイグ国防相が3月中旬に訪朝し、北朝鮮に軍事支援を求めたとの情報は今もって確認されていない。北朝鮮駐在のロシア大使は訪朝の事実を否定しており、米国などNATOもそうした事実を確認していない。また、北朝鮮は国連の場ではロシア支持を表明し、北朝鮮外務省も頻繁にロシアへの連帯を表明しているが、北朝鮮がロシアに軍事支援を表明し、実際に支援に踏み切ったとの情報も、報道も皆無である。しかし、北朝鮮にはロシアが喉から手が出るほど欲しがっている兵器が幾つもある。先の軍事パレードで登場した新型の対戦車ミサイルもそのうちの一つかもしれない。
(参考資料:ウクライナは韓国に、ロシアは北朝鮮に軍事支援を要請!?)
朝鮮人民革命軍90周年を記念して行われた軍事パレードでは新型潜水艦弾道ミサイル(SLBM)や大陸間弾道ミサイル(ICBM)のみが注目されていたが、既存の常識を破る小型戦術兵器や個人火器なども登場していた。中でも新型の携帯用対戦車ミサイルがお披露目されていたが、メディアはほとんど関心を払うことはなかった。
朝鮮中央テレビが放映した2時間20分の軍事パレードの映像をチェックすると、この携帯用対戦車ミサイルは首都を防御する首都軍団に続いて行進してきた李乗哲(リ・ビョンチョル)軍団長が率いる第3軍団(第526大連合部隊)の兵士らが手にしていた。党機関紙の「労働新聞」には軍事パレードの写真が151枚掲載されていたが、不思議なことに第3軍団の行進場面は一枚も掲載されていなかった。
平安南道・南浦に駐屯している第3軍団の兵士らが携帯していたミサイルはこれまで北朝鮮が保有していた既存のロシア製対戦車ミサイル「RPG―7」や2名以上で設置しなければならない「火の鳥」と呼ばれている北朝鮮製携帯用ミサイルとは明らかに異なっていた。何よりも小型化され、厚くて重そうな円筒型発射管を備えていた。
また、用途不明の発射管には謎の赤い蓋が付いてあった。さらに円筒型発射管の前後には厚い黒色のEndCapが、こうした形の蓋は「NLAW」や「ジャベリン」対戦車ミサイルにもあった。
どちらかというと、「NLAW」にサイズが近い北朝鮮のこの新型携帯用対戦車ミサイルには赤い色の脱着蓋が付いているが、発射する時には蓋を外す。イスラエルの小型対戦車ミサイル「スパイク」同様にミサイルに目標物を照準する映像探知機があることを意味している。
ロシアのウクライナ侵攻から間もなく、それも話題となっている携帯用対戦車ミサイルが軍事パレードに登場させたことについて北朝鮮は「我々も持っている」ということを誇示することに狙いがあるようだ。仮にこれが本物ならば、北朝鮮は随分前から開発していたことになる。
直近の2回(2021年1月と2021年9月)の軍事パレードでは登場してなかったことからハリボテとの見方も成り立つが、これまで本物でないと疑われていたミサイルなどの兵器がいずれもその後、実際に射撃実験が行われていたことから偽物と断じることはできない。
仮にこれが本物ならば、ロシアの関心を引くのは間違いない。ロシアはいざとなったら本当に北朝鮮に軍事支援を要請するかもしれない。