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検閲、逮捕… 国家権力とSNS事業者の間で投稿管理をめぐって緊張が高まる #専門家のまとめ

楊井人文弁護士
SNSでの未成年保護めぐり米メタ社のザッカーバーグCEOらを召喚した米上院公聴会(写真:ロイター/アフロ)

SNSプラットフォーム事業者が不適切な投稿を削除、制限することを「コンテンツ・モデレーション」(投稿管理)といいます。

誹謗中傷や偽・誤情報といったネット上の諸問題への関心が高まる中、SNS事業者の投稿管理が不十分だとして、各国政府が強化を求め、介入しようとするケースが相次ぎ、国家と事業者の間の緊張が高まっています。

日本政府も総務省などを中心に対策強化の検討が行われる中、懸念の声も出ています。

ココがポイント

▼米メタのザッカーバーグCEOが2021年に新型コロナ関連の投稿の検閲をバイデン政権から要求され、後悔していると明らかに。

米メタにバイデン政権が検閲要求、コロナ関連投稿巡り=CEO(ロイター)

▼通信アプリ・テレグラムのドゥロフCEOがフランスで逮捕され、児童ポルノの組織犯罪的な流通への共謀などで捜査開始。

テレグラムCEOに対する正式捜査を開始 フランス出国を禁止(BBC News)

テレグラムで未成年のディープフェイク・ポルノが共有されていると韓国テレビ局が報じ、尹大統領が捜査・撲滅を指示。

韓国大統領、ディープフェイク・ポルノの「撲滅」指示(AFP BB News)

▼総務省が出した偽・誤情報対策の「とりまとめ案」に「官製ファクトチェック」化の懸念が拭えないと関係団体が声明を発表。

なぜ「官製ファクトチェック」はダメなのか 総務省「偽・誤情報」対策案めぐり関係団体が懸念(J-CASTニュース)

「とりまとめ案」に関わった有識者会議座長がファクトチェックの名の下で「言論を封殺するなどはあってはならない」と言及。

「官製ファクトチェックにつながる懸念」にどう答えるのか、総務省検討会の座長・宍戸教授に聞く(前編)(SlowNews)

エキスパートの補足・見解

表現の自由は絶対的なものではなく、名誉毀損や「なりすまし」など権利侵害情報をはじめ、児童ポルノなど法律で明確に規制されている違法な表現行為があります。

SNS事業者は膨大な投稿に対して、AI技術なども活用しつつ、違法有害情報の取り締まりを行っています。

ただ、日本でも著名人をかたった詐欺広告問題などを受け、取り締まり強化の声が高まっています。

総務省の有識者会議では偽誤情報対策の検討を9月から再開します。

このテーマについては、実害を伴う違法情報の話なのかどうか、緊急性の高い課題なのかどうか、恣意的な規制など副作用リスクに配慮しているか、といった点にも目を配りながらニュースや議論に注目していただければと思います。

弁護士

慶應義塾大学卒業後、産経新聞記者を経て、2008年、弁護士登録。2012年より誤報検証サイトGoHoo運営(2019年解散)。2017年からファクトチェック・イニシアティブ(FIJ)発起人、事務局長兼理事を約6年務めた。2018年『ファクトチェックとは何か』出版(共著、尾崎行雄記念財団ブックオブイヤー受賞)。2022年、衆議院憲法審査会に参考人として出席。2023年、Yahoo!ニュース個人10周年オーサースピリット賞受賞。現在、ニュースレター「楊井人文のニュースの読み方」配信中。ベリーベスト法律事務所弁護士、日本公共利益研究所主任研究員。

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