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財源8兆円増・自民党有志こども庁構想は超本気!総理と二階さんの本気度は?、#子育て罰をなくそう

末冨芳日本大学教授・こども家庭庁こども家庭審議会部会委員
自民党有志議員・「こども庁」創設に向けた緊急提言(令和3年3月19日)

自民党が選挙公約として、こども庁を打ち出すことが報道されています(読売新聞4月5日)。

この公約のもととなった自民党有志のこども庁構想について、呼びかけ人である自民党・参議院議員・山田太郎議員事務所で、どのような内容や経緯であるのかを聞いてきました。

実は山田太郎議員は、子育て罰の厳罰化政策である、高所得世帯の児童手当の廃止に反対くださった自民党議員でもあるのです。

そんな山田議員と自見はなこ議員が中心となってまとめられたこども庁の構想がどのようなものか、どこにポイントがあるのか、私もとても関心があったのです。

1.自民党有志議員のこども庁構想は超本気!

予算倍増!8兆円増額!

子どものSOSを全国どこでも受け止める!

保育士の処遇改善と社会的地位向上

自民党有志議員・Children First の子ども行政のあり方勉強会、が令和3年3月19日に公表した提言は、オンラインでも公表されています。

要点は「こども庁の創設に向けた特設ページ」でも公開されています。

その提言を見ると、自民党有志議員のこども庁構想は超本気であることが分かります。

以下、私が重要と考えるそのポイントをまとめてみました。

予算を8兆円増!(2040年GDP比で倍増、GDP比1.7%→3%)

子どもの“命”を守る体制強化として、子どもの SOS を全国どこでも受け止めるワンストップ相談体制の確立、子どもの意見表明を促すアドボケイトの促進等が提言されている!

保育士処遇改善と社会的地位向上が提言されている!

その他にも、以下のような提言も盛り込まれています。

●妊娠・出産に関する必要な知識を学ぶ義務教育での性教育

●義務教育の質の向上を図り、所得格差と教育・体験格差の負の連動・連鎖を断ち切る

(専門家として申し上げると、この書き方はきちんと学ばれた方しか書けません)

保護者の就労状況によらない乳幼児教育への受入体制の実現

難病の子ども・若者・家族支援の充実

日本版 DBS(子どもに関わる職業の者が無犯罪証明書を取得できる仕組み)の導入

●こどもの死因を検証するチャイルド・デス・レビュー(CDR)の標準実施

また提言をつくりあげた基本姿勢や勉強会プロセスにも本気を感じます。

●「子ども最優先(Children First)」の子ども・子育て施策に大きく舵を切る時である、と提言する、子どもを本気で大切にしようとする姿勢

●出生率を回復させ8年連続人口増加を実現した、明石市の泉房穂市長が勉強会報告のトップバッター

2.山田太郎議員事務所で聞いてきました

ところで、この提言は盛りだくさんな内容でもあるので、実際にどのようなポイントがあるのでしょうか?

また厳しいようですが、こども庁という組織を選挙の目玉にする自民党ファーストの政策であって、カネやヒトが増えず、子どもファーストの政策がストップしてしまう懸念はないのでしょうか。

以下、Q&A方式でまとめました(山田議員のお考えということで、自民党の考えではないことご留意ください)

Q.こども庁の公約化により本当にヒト・カネは増えますか

A.菅総理はとても前向きです。党内の様々な意見を自分の自身のリーダーシップで、まとめて行きたいとおっしゃっています。

Q.こども庁創設で財源拡充するなら、菅総理は高所得世帯児童手当の特例給付廃止を撤回されますか?子育てもし、納税等の義務を果たす高所得子育て層を切り捨てることは、少子化対策としては意味がありません。

A. 山田議員は、党内でも高所得世帯児童手当の特例給付廃止を強く訴えてきました。

アンケートでも児童手当の廃止反対の声が約1900件あったこと、そのほか教育費の負担軽減などのお金に関する声が大変大きかったという結果も、山田議員からしっかり伝わっているはずです、菅総理からのリアクションを期待します。もし、高所得世帯の児童手当特例給付が廃止するのであれば、児童手当の多子世帯への加算、平成22年の子ども手当への創設にともない廃止された年少扶養控除を復活させることも併せて求めています。

Q.自民党の公約はいつわかるのですか?

A.自民党総裁の直属機関として、来週以降検討が本格化するようです。なるべく早く公約をみなさんに示すために具体的なスケジュールは不明ですが、スピーディーな検討がされると思います。

Q.こども庁の組織再編が優先され、子ども基本法や日本版DBSなど、子どもを守る政策が後まわしになることはないですか?自民党ファーストになってしまい、子どもファーストの政策が遅れれば、その期間にも犠牲になる子どもは増えます。

A.子どもファーストの政策実現こそ最優先です。そのために、党や政府がどういう議論になろうとも、軌道修正をしていくように「Children First の子ども行政のあり方勉強会」は続けていきます。

Q.「縦割りの克服」がこども庁創設の根拠のひとつとされていますが、現在の縦割りの課題は何ですか?

 また、こども庁ができると、厚労省・文科省・内閣府のほかに、内閣府内外局となる可能性の高いこども庁の4元行政になり、さらなる縦割り化の懸念もありますが、その課題はどのように克服されるのでしょうか?

A.縦割りの課題は「この国に子どもを守る責任者がいない」ということです。

 性虐待から子どもを守るDBSや子どもの死因究明をするCDR、子どもの自殺等、責任部署を決めるだけでも時間がかかります。

 また、児童虐待対策、貧困対策、保育や教育の質の問題等、各省庁にまたがって存在している子ども関連の施策を強力に推し進める強い権限を持った司令塔がいないということが問題です。この体制では、日本において予算も人員も確保した子ども関連の施策は進みません。

 子ども関連政策の問題・課題解決の責任者として専任大臣を置き、子ども関連予算をすべて「こども庁」に集め可視化させる。そこから各施策に合わせた予算を現業の府省庁に割り振っていくというような強い権限をもたせ、専門人材を集めた省庁にすれば、さらなる縦割りは解決できると思います

なお末冨自身は「縦割り」批判については、意見が少し違うことも、山田議員事務所に伝えました。

とくに子どもの虐待について横串を刺すためには、まずコーディネーターを担ったりする公務員、警察・福祉・教育もそもそも公務員不足の課題があることを指摘しました。

また子どもを守る専門職の数も質も十分ではない、ということを指摘しました

幼児教育は特に専門性が高く、またデータベースについても厚生労働省や文科省の専門性が高い官僚もいるので、下手にこども庁に吸い上げられ出向人事で担当者が定まらない状況になれば、政策やデータが劣化しかねないこと。

また私のかかわる地方自治体関係者からは、ヒトやカネが増えなければ、何の意味もないという厳しい声があがっていることも伝えました。

はっきりいって相当失礼な質問もしましたが、このような質問に丁寧に回答くださること自体が、山田議員の本気度を示しているのだと感じました。

Q&Aには盛り込んでいませんが、山田議員はじめ、自民党有志議員のこども庁への思いは、ほんとうに深いものだと感銘をうけました。

とくに山田議員はさまざまな現場を知り、関係者から丁寧に話を聞かれる中で、子どもを大切にする日本のために、この提言をまとめられたことがよく理解できました。

-子どもの虐待死をなくしたい

-人手不足の乳児院でケアが行き届かない赤ちゃんを見て心が痛んだ

-児童養護施設の出身者が、指導員が疲れて余裕がないことを子ども時代に不安に思ったり、心配していたことを聞き、児童養護施設はじめ子どもに関わる最前線の現場の人たちの待遇改善も大事だと考えている。

このような考えをお持ちの議員が、山田議員だけでなく、自民党の若手中堅世代を中心に呼びかけ人だけでも29人おられ、派閥も超え提言をまとめられたことは本当に素晴らしいです。

この提言が、すべて実現されれば、必ず日本は子どもに優しく、子どもを産み育てやすい国になるはずです。

そのとき日本からは子育て罰はなくなるでしょう。

4.菅総理、二階幹事長はじめ自民党の本気度を見極めよう!

今後は、自民党の議論で、どこまで本気かを見極めることが大切です。

4月2日の記事にも書いたように、財源論(カネ)、その財源が本当にこどものためにつかわれるのかの公務員増員をはじめとする政策論(ヒト)、そして子ども基本法や日本版DBSなどの子どもを守る法律・政策とセットでの公約になるのか。

子どもを大切にする日本のために、自民党の本気も見守ります!

(山田太郎議員がお忙しい中でお時間をとっていただいたのですが、急用のため、こども庁勉強会の運営に関わってこられた秘書の小寺さんにうかがいました。とても大切なお話をありがとうございました。山田議員本人のお考えについては後日ミーティングの機会をいただきましたので、こちらも記事にさせていただきたいと思います。)

日本大学教授・こども家庭庁こども家庭審議会部会委員

末冨 芳(すえとみ かおり)、専門は教育行政学、教育財政学。子どもの貧困対策は「すべての子ども・若者のウェルビーイング(幸せ)」がゴール、という理論的立場のもと、2014年より内閣府・子どもの貧困対策に有識者として参画。教育費問題を研究。家計教育費負担に依存しつづけ成熟期を通り過ぎた日本の教育政策を、格差・貧困の改善という視点から分析し共に改善するというアクティビスト型の研究活動も展開。多様な教育機会や教育のイノベーション、学校内居場所カフェも研究対象とする。主著に『教育費の政治経済学』(勁草書房)、『子どもの貧困対策と教育支援』(明石書店,編著)など。

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