パッチリ目のメロンパンナちゃん風イモムシ=桑子さんじゃなくてクワコです#イモムシ
カイコの原種と言われるクワコという蛾の幼虫は、頭の後ろの部分が大きく膨れ上がっていて、その部分の目玉模様(眼状紋)が、アンパンマンの友達のメロンパンナちゃんのように、妙に可愛く見える瞬間がある。
可愛く見えるのは、頭部を胴体の中に引っ込めて、眼状紋部分の丸みが増した時。頭部を突き出すと、丸みが失せて可愛さが雲消霧散し、かなり不気味なモスラ風の様相になる。余談ながら、幼虫時代のモスラのモデルはカイコの幼虫だと言われている。
この不気味な姿こそが、恐らくクワコの幼虫本来のスッピン顔で、少女漫画の主人公のようなつぶらな瞳の顔は、ぶりっ子の作り顔だろう。
刺激を受けた時に、丸い顔になる傾向があるので、これは天敵への威嚇の意味があるのかもしれない。クワコの小さい幼虫は鳥の糞に擬態していると言われる。
クワコの幼虫は、カイコと同様に桑(クワ)の葉を食べ、カイコのような繭(カイコの繭よりずっと小さい)を作る。冬に桑の葉が落ちた後に、この繭がたくさんぶら下がっていると非常に目立つ。この繭から絹糸を作れないことはないようだが(カイコの大きい繭を使う方がずっと効率も質もいいだろうから)、そんな無駄骨を折る人はほとんどいないようだ。
古語ではカイコ(蚕)のことを桑子(クワコ)と呼んでおり、クワコはまさに蚕を意味していたという。ちなみに桑子という苗字は、北関東など養蚕の盛んだった地域に多く、蚕と関係があるようだ。つまり、桑子さんとメロンパンナ顔のクワコの幼虫との間には深い縁があるのである。
(写真は特記しない限りすべて筆者撮影)