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笹の葉には毒毛虫(タケノホソクロバ幼虫)が付き物。被害者の多くは蝶の幼虫を探す虫好き

天野和利時事通信社・昆虫記者
12月に見つけたタケノホソクロバ幼虫。通常は蛹で越冬するが冬も安心はできない。

 笹(ササ)の葉には毒毛虫が付き物だ。虫食いだらけの笹の葉の裏側にはたいてい、タケノホソクロバという蛾の幼虫の毒毛虫がいるので、笹の葉めくりには注意が必要だ。

(毛虫の集団の写真=ボケボケに加工してあります=が後半出てくるので、苦手な人は閲覧を避けて下さい)

 蝶の幼虫の中にも、笹の葉を食べるものが結構多いので、虫好きは時々笹の葉をめくる。ヒカゲチョウ、クロヒカゲ、キマダラヒカゲなどのジャノメチョウ科の蝶の幼虫は、タケノホソクロバと同様に、笹の葉裏にいる。つまり笹の毒虫の被害に遭う人々の大半は、昆虫記者のような虫好きだ。自業自得とも言える。

 虫好き以外の人は、笹の葉をめくる機会はまずないので、タケノホソクロバの被害に遭うことはまれだ。それでも、子どもたちが遊びに夢中になって笹やぶに分け入ったりすると危険だ。笹やぶは危ないと教えておいた方がいい。また、七夕飾りの竹や笹に、この毛虫が付いている可能性もゼロではない。

こういう乱暴な食べ方は、タケノホソクロバ幼虫の仕業の可能性が高い。
こういう乱暴な食べ方は、タケノホソクロバ幼虫の仕業の可能性が高い。

 タケノホソクロバの若齢(若い)幼虫はたいてい、大集団で笹の葉を食害するので、表側から葉を見ると、食べ跡の端からたくさんの幼虫の顔だけが見えていることが多い。タケノホソクロバの幼虫の食事のしかたは、かなり乱暴で雑だ。これに対し、ヒカゲチョウ、クロヒカゲの食痕(食べ跡)は整然とした台形になることが多い。

食べ跡の端から頭だけを出すタケノホソクロバの幼虫の集団。
食べ跡の端から頭だけを出すタケノホソクロバの幼虫の集団。

タケノホソクロバの若齢幼虫の集団。嫌悪感のある人が多いので、わざとボケボケの写真にしています。
タケノホソクロバの若齢幼虫の集団。嫌悪感のある人が多いので、わざとボケボケの写真にしています。

 虫好きの人々は、汚い食べ方ならタケノホソクロバ、きれいな食べ方ならヒカゲチョウ類と覚えておけばいい。また、タケノホソクロバの幼虫は、冬にはほとんどいなくなるので、ヒカゲチョウ類の越冬幼虫を探すのは比較的安全だ(タケノホソクロバの単独の幼虫は12月でもたまに見かけるので、安心し過ぎてはいけない)。

 タケノホソクロバ幼虫の背中にある多数の黒い隆起には、毒針毛(毒針のような毛)が生えていて、これに人が触れると炎症になる。患部は赤くはれて、結構痛いらしい(用心深い昆虫記者はまだ刺されたことがない)。万が一刺された際の対応はドクガ類の幼虫の場合と同じで、 粘着テープで毛を取り除き、 流水で洗い流すのがいいとされている(昆虫記者もドクガ類に刺された時はそうしている)。

タケノホソクロバの成虫。成虫には毒はない。
タケノホソクロバの成虫。成虫には毒はない。

(写真は特記しない限りすべて筆者=昆虫記者=撮影)

時事通信社・昆虫記者

天野和利(あまのかずとし)。時事通信社ロンドン特派員、シンガポール特派員、外国経済部部長を経て現在は国際メディアサービス班シニアエディター、昆虫記者。加盟紙向けの昆虫関連記事を執筆するとともに、時事ドットコムで「昆虫記者のなるほど探訪」を連載中。著書に「昆虫記者のなるほど探訪」(時事通信社)。ブログ、ツイッターでも昆虫情報を発信。

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