「国産に納得」「庶民には高い」岸田首相の腕時計が話題、選び方の正解は?
岸田文雄氏は総理大臣になり、一躍「時の人」になりました。時の人になると全てが関心の的になります。ネットではさっそく、岸田氏が身につけている腕時計が話題になり、「国産に納得」「センスがいい」「安すぎないか」「好き」「庶民から見ると高い」「外交交渉の場でふさわしい時計なのか」といった声がありました。いったいこれをどう考えたらいいのでしょうか。リスクマネジメントと広報コミュニケーションの観点からアプローチします。
広報戦略からすると身につけているものは全てメッセージになってしまうので、その点を考えて選択する必要があります。参考として、面白い非言語コミュニケーションの研究を紹介します。「ネクタイをした調査員にはネクタイをしている人が応諾する確率が高く、ネクタイをしていない調査員には、ネクタイをしていない人からの応諾が多かった。人は自分に似た服装レベルをした人に好感を持ち、協力する(グリーンとギレス)」。「快といった心地よい感情を持つと相手のことが好きだと認知し、好きになると一緒にいたいといった行動になる(奥田秀宇)」。
これらの研究からいえることは、相手の服装レベルに合わせた身なりをする方が、好かれて協力を得られやすい、ということ。したがって、外交交渉の場で相手が高級腕時計だったらそこにこだわりがあるとみてそれなりの戦略を立てる必要があります。同じ高級腕時計もありですが、アラブの富豪であればそうそう同じ金額の腕時計はそもそも無理。そこで視点を変え、国のアピールのために国産品の腕時計をすれば、相手にわかりやすいメッセージになりそうです。どうにも迷ってしまう、特にメッセージを発信したくない、中身に集中したい、と思った時には「時計はしない」選択もあります。
いずれにせよ、相手はこちらが何を身につけているか、でそれをメッセ―ジとして受け止めてしまうので、相手へのマナーや配慮の視点を忘れないようにすることが外見面でのリスクマネジメントになります。したがって、謝罪の場では、腕時計に限らず、一目で高級ブランドとわかる服や腕時計やキラキラと光るアクセサリーを避ける配慮が必要になります。また、腕時計をしていると時間が気になりますので、頻繁に見てしまう可能性があり、その動きが落ち着かない印象を与えるリスクがあります。
スタイリングの観点からはどうみたらよいでしょうか。関根勤さんの専属スタイリストでビジネススーツに詳しい高野いせこさんはトータルコーディネイトの重要性を指摘しています。
そうはいっても、どうしても腕時計をしたい男性もいるでしょう。革ベルトの腕時計を選ぶ際に色や素材がいろいろあり、迷いそうですが、選び方のコツはあるのでしょうか。
確かに色と質感を統一すると高級感漂う雰囲気になることが十分イメージできます。時計だけではなく、服装とのトータルバランスで選ぶこと、相手へのメッセージになることを配慮することがポイントになります。また、自分のしぐさとのコンビネーションからも時計をする、しないを決めてもよいでしょう。最近もある重要な記者会見で頻繁に時計を見ていた説明者がいました。決してよい印象ではありません。ここは、コミュニケーションとのトータルバランスで腕時計の着脱を決める視点も提案して締めくくります。
<メディアトレーニング座談会>(石川慶子MT)
岸田新閣僚の集合写真と岸田総理の時計について各分野の表現プロがコメントしています。
出演:スタイリスト高野いせこ、スマートアクトディレクター鷹松香奈子、自己演出プロデューサー山口和子
*石川慶子MTチャンネルでは、毎週言語・非言語のコミュニケーションの表現リスクについて解説しています。今後も各大臣について順次解説します。
https://www.youtube.com/channel/UC_IwJ6nmAxWzCj1MzAO45Lg