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即席雪かき道場 コンパクトかつインパクトのある雪かきで身体に負担をかけない方法

斎藤秀俊水難学者/工学者 長岡技術科学大学大学院教授
玄関は雪かきの基本中の基本の場所(筆者撮影)

 気温がそれほど下がらないと積もった雪は水分を含み、見た目よりどっしりと重いもの。重い雪の雪かきは身体に負担を与えがちです。負担を抑えつつ、重い雪をどうやってかけばいいでしょうか。

コンパクトかつインパクトのある雪かきとは

 雪が積もって地面の表面で氷に固まれば、どこでも滑るものです。全てを雪かきしていたら、雪の重さに耐えかねて流石に身が持ちません。そこで、コンパクトかつインパクトのある雪かきで身体への負担を少なくし、かつスリップによる転倒事故を防止しましょう。

 ポイントは、一点集中。特に家の玄関先での雪かきをしっかりすることにつきます。雪国でもここが最もよく滑ってけがをする箇所として知られています。カバー写真をご覧ください。玄関先の階段は特に要注意です。上段は乾いていて、滑りません。中段も滑りません。ところが下段に雪が残っていると、ここで滑ります。

 人は、歩いていて滑らない地面が続いている時、いきなり滑る地面に足を着地させるとすってんころりんと転倒してしまいます。この現象は、子供がプールサイドを走っていて、プールのオーバーフローに足をついた瞬間に滑って転倒する現象でよく知られています。

「歩きながら滑らないように」と啓発ニュースがたくさん流れているところではありますが、あちこち心配しても結局は滑るもの。やはり自宅の玄関前の階段の雪かきが基本中の基本の場所になります。

実技演習

階段の雪かき

 図1(a)をご覧ください。ここは段差とともに面積のある階段になります。雪が積もった後に少し人が上り下りをして、すでに固まって地面にへばりついています。こうなる前に、やわらかい雪の状態のうちにスコップを使って雪かきをしておくことが重要です。

 でも、全ての雪をかくとなると身体にかなりの負担がかかるのと、除雪した雪の処理に困ることになります。そこで図1(b)のように、最小限の人の通り道の幅だけ雪をかく方法があります。こうすれば、課題はいずれも解決することができます。

図1 家の前の階段の雪かき。人の通り道だけを作れば雪かきの負担が少ない(筆者撮影)
図1 家の前の階段の雪かき。人の通り道だけを作れば雪かきの負担が少ない(筆者撮影)

道つけ

 平面の通り道であれば、スノープッシャーでいっきに雪かきをする方法があります。動画1をご覧ください。湿った雪であれば片道一回でほぼ人の通り道を作ることができます。ただし、この方法も雪が冷えて固まると使えなくなるので、雪が降っている中で行う作業になります。

動画1 スノープッシャーでいっきに道つけする方法(筆者撮影、30秒)

雪の処理

 かいた雪をのけるのに、人の通り道の脇に寄せるのが基本です。ただ、脇に排雪する十分なスペースがない時、一段高いところに雪をあげる必要がでてきます。いわゆる「雪あげ」です。

 スコップで湿った重い雪を雪あげするのは、とても体力が必要なものです。できるだけ避けたいところです。どうしてもということであれば、塵取りのように軽い板状のもので雪をあげていく方法があります。あくまでも湿って重い雪の場合です。動画2を参照してください。

動画2 雪上げの方法。金属スコップは負担が大きい(筆者撮影、35秒)

 図2のように、道路の端に雪を集める方法もあります。ただし、側溝に雪の塊を入れないようにします。写真のように側溝に落ちてしまった雪はできるだけ、路肩に戻すようにします。

 側溝の水の流れは、雪の塊を流すようにはできていません。側溝に流れる水を、雪の塊がどこかで止めてしまったら、その周辺は大洪水になる場合もあります。先日、雪国でも床下浸水事故が発生しています。以下のリンクでは、お気の毒な浸水の様子を写真で見ることができます。

強い冬型の気圧配置の影響で大雪となった新潟県妙高市は2022年2月6日、豪雪災害対策本部を設置した。同日午前9時時点の積雪が妙高高原地域で342cm、妙高地域で280cm、新井地域193cmとなり、いずれも今冬最深積雪を記録した。同市内では雪で店舗の屋根の一部が崩落したり、流雪溝があふれて床下浸水したりする被害が出ている。(上越タウンジャーナル2022年02月06日

図2 路肩の側溝脇の除雪方法。写真のように側溝に落ちた雪はできるだけ、路肩に戻す(筆者撮影)
図2 路肩の側溝脇の除雪方法。写真のように側溝に落ちた雪はできるだけ、路肩に戻す(筆者撮影)

さいごに

 湿った雪はおもいので、いざ雪かきを始めると身体にはかなり負担がかかります。家の玄関と周辺だけでいいので、凍って固まる前にかいておきましょう。

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水難学者/工学者 長岡技術科学大学大学院教授

ういてまて。救助技術がどんなに優れていても、要救助者が浮いて呼吸を確保できなければ水難からの生還は難しい。要救助側の命を守る考え方が「ういてまて」です。浮き輪を使おうが救命胴衣を着装してようが単純な背浮きであろうが、浮いて呼吸を確保し救助を待てた人が水難事故から生還できます。水難学者であると同時に工学者(材料工学)です。水難事故・偽装事件の解析実績多数。風呂から海まで水や雪氷にまつわる事故・事件、津波大雨災害、船舶事故、工学的要素があればなおさらのこのような話題を実験・現場第一主義に徹し提供していきます。オーサー大賞2021受賞。講演会・取材承ります。連絡先 jimu@uitemate.jp

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