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Googleが発表したAndroid Wearで、生活はスマートになるか?

松村太郎ジャーナリスト/iU 専任教員
YouTubeで公開されたAndroid Wear搭載のスマートウォッチ

ウェアラブル元年ともいわれる今年、Googleは「Android Wear」と呼ばれるウェアラブルデバイス向けのAndroidを公開しました。オースティンで開催されたSXSWで、GoogleのAndroid・Chrome・アプリ担当上級副社長Sundar Pichai氏が言及していましたが、米国時間3月18日にブログポストで詳細とビデオを公開しました。

まずは、Google Wearで作られたスマートウォッチで何ができるのか、YouTubeのビデオで確認してみましょう。

Information Moves with You

Android Wearに付けられたタグラインは、「情報はあなたとともに動く」というもの。上記のブログポストでは、4つのポイントを紹介しています。

  • そのときに必要な便利な情報を提供してくれる。
  • 「OK Google」から質問や指示を出すとをすると、それに答えてくれる。
  • 健康や運動などを計測できる。
  • 複数のデバイスを操るリモコンになる。

1つ目については、Google Nowで提供される天気やスケジュールの情報を上下のスワイプですぐに確認でき、また着信するメッセージ類、受信したGmailなどもすぐにプレビューできるようになるでしょう。Google Glassでは右のこめかみにあるトラックパッドを左右にスクロールするとこうした情報が確認できましたが、Google Wearのスマートウォッチの実装では上下のスクロールが例示しています。

また端末にキーボードがないため、文字入力や特定の機能の呼び出しは音声認識で行われていました。メッセージなどへの返信や、検索など、短い文章や定型文なら、問題なく利用できそうです。開発者キットでは、「OK Google」に続く命令を受け取ることができるアプリを開発することができます。このあたりの使い勝手、つまりアプリを追加して声で命令する「動詞」方法論も、Google Glassを同じです。

Android Wearで1つ大きな役割になりそうなのが、運動や活動量を計測する機能。腕に常に付けていることから、内蔵するモーションセンサーによって、詳細な運動量を測ることができるようになります。

また、このスマートウォッチにも、Google GlassのようにデバイスにGPSは持たせないのではないか、と推測しています。しかし電子コンパスや複数の加速度センサーを内蔵し、GPSデータが必要な場合はペアリングしているスマートフォンからもらうという方式で利用できるようになるでしょう。

Android Wearの4つ目のポイントからは、他のデバイスと組み合わせて動作させることを前提にしている点がうかがえます。バッテリーがシビヤな環境であることと、スマートフォンをみんな持っているという前提に立てば、本体が3G/LTEの通信ができなくてもよさそうです。スマートフォンのBluetooth経由のテザリングや、その場にあるWi-Fiでの通信を確保するでしょう。

また、Androidデバイスの音楽再生などをコントロールできる機能がビデオで紹介されていた通り。どんなアプリを連携させるか、という開発者側のアイディアも必要になりそうです。

すぐに生活がスマートになるわけではない

公開されたビデオの空港での一コマ。航空券のコードを表示し、読み取らせている。
公開されたビデオの空港での一コマ。航空券のコードを表示し、読み取らせている。

Android Wearの紹介ビデオで気になったのが、航空チケットの二次元コードをかざすシーン。ゲートまで走ってきて、ウォッチの画面をめくってチケットのコードを出してそれをかざしていました。もちろん、カバンからチケットを見つけなくて良い点は便利なのですが、チケットのコードを探すのは、イマイチスマートではない印象。

スマートウォッチが腕に付いたからといって、すぐに身の回りの生活がスマートになるわけではなさそうです。

あのシーンの場合、ゲートまで走り込んできてスマートウォッチを見ると、チケットが表示されている、というのが理想です。実装としては、「飛行機に乗る時間」、GPSをつかった「空港にいるという位置情報」、あるいはiBeacon的なBluetooth活用の「ゲート前に来たという動作の情報」を活用すると、その条件でコードを画面に表示でき、ゲート前で立ち止まらなくてもよくなります。

その場合、スマートウォッチにも航空会社のアプリが用意されていて、かつそのアプリがゲートに設置されているBluetoothビーコンを認識できるように空港側のインフラが整備されている必要があります。こうした整備が進んで行くにはまだまだ時間がかかり、その間はスマートウォッチをあまりスマートに活用できない時間が続きそうです。

最後に1点、ビデオ中のスマートウォッチのプロトタイプに、カメラがなかったことは評価できます。Google Glassは、スパイ的にカメラが搭載されていて、使用者も周りの人も非常に警戒しているのが現状。カメラの搭載は、スマートウォッチを普及させる際の障害になると考えており、絶対に搭載しない方が良いと思います。

ジャーナリスト/iU 専任教員

1980年東京生まれ。モバイル・ソーシャルを中心とした新しいメディアとライフスタイル・ワークスタイルの関係をテーマに取材・執筆を行う他、企業のアドバイザリーや企画を手がける。2020年よりiU 情報経営イノベーション専門職大学で、デザイン思考、ビジネスフレームワーク、ケーススタディ、クリエイティブの教鞭を執る。

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米国カリフォルニア州バークレー在住の松村太郎が、東京・米国西海岸の2つの視点から、テクノロジーやカルチャーの今とこれからを分かりやすく読み解きます。毎回のテーマは、モバイル、ソーシャルなどのテクノロジービジネス、日本と米国西海岸が関係するカルチャー、これらが多面的に関連するライフスタイルなど、双方の生活者の視点でご紹介します。テーマのリクエストも受け付けています。

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