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内々定取り消しのBluAge(CANARY運営)、関連会社の疑惑を検証

酒井一樹就活SWOT代表
内々定取り消しを行ったBluAgeの運営する「Canary」

2022卒学生の内々定取り消しで話題になっているBluAge(ブルーエイジ)が今夏ビジネスモデルを変更し、もう不動産仲介業を自社で行っていないことは先日の記事で解説した。(参考:BRIDGE

実際の物件仲介は顧客の不動産業者に依頼し、プラットフォームとしての立ち位置に専念するという意味だ。

しかしここに来て、奇妙な情報が浮上してきた。

「BluAge社の過去オフィスを引き継ぎ、不動産仲介をしている業者がある」

「クラシスという会社があり、BluAge社の子会社ではないかという疑惑がある」

「BluAgeで不動産仲介をしていた社員がクラシスに転籍させられている」

ネット上で言及されている情報(一部、すでに削除された書き込みもある)としては上記のようなもので、これらの点を不審に思った方からの連絡が私の方にも届いている。

そこで今回は続報としてこれらの話を掘り下げて解説したいと思う。

【クラシス社について現在わかっていること】

BluAge社との関係性が疑われているクラシス社(株式会社クラシス)は、2021年5月20日に資本金100万円で立ち上げられた企業だ。

https://craxis.jp/

(なお、人材派遣事業を行っている千代田区のクラシス株式会社とは無関係であるため注意いただきたい。)

クラシス社は2021年6月25日に宅地建物取引業者として登録されており、現在は本店、御茶ノ水オフィス、町田オフィス、中野オフィスの4箇所が拠点が登録されている。

なお、企業サイトでは本店は五反田となっているが、宅地建物取引業者として登録されている本店は目黒区自由が丘である。

3つの拠点がBluAge社の過去オフィス

この4拠点のうち、御茶ノ水、町田、中野の3拠点が、BluAge社が以前使っていたオフィスと同じ住所となっている。これは、BluAge社のコーポレートサイトのアーカイブから確認できる。

2021年2月時点のBluAge社のコーポレイトサイト。現在はリニューアル済みで、本社以外の拠点情報は削除されている。また、記載されている免許番号はすでに無効となっている。
2021年2月時点のBluAge社のコーポレイトサイト。現在はリニューアル済みで、本社以外の拠点情報は削除されている。また、記載されている免許番号はすでに無効となっている。

2021年11月現在のクラシス社のコーポレイトサイト
2021年11月現在のクラシス社のコーポレイトサイト

この時点でBluAge社とクラシス社に何らかの関係があることは明白と言える。

クラシス代表者はBluAge社メンバー

新設企業情報でクラシス社の情報を確認したところ、クラシス社の役員は代表の山﨑一平氏の一人だけとなっており、その他にBluAge社の関係者の名前は載っていなかった。

しかし代表の山﨑氏の経歴を調べたところ、BluAge社の「Wantedly」(採用目的で利用されるビジネスSNS)に山崎氏の名前が載っていた形跡を見つけることができた。

Wantedlyのページはすでに削除されてしまっているが、下記はそのページのGoogle検索結果画面である。

GoogleにインデックスされていたBluAge社のWantedlyページ(クラシス代表の山﨑氏の名前が掲載されている)
GoogleにインデックスされていたBluAge社のWantedlyページ(クラシス代表の山﨑氏の名前が掲載されている)

Canaryアプリ上にもクラシス社の物件情報が掲載

BluAge社が運営する「Canary」にもクラシス社の物件情報の掲載を確認することができた。

(ただしCANARYのサイトでクラシス社が掲載している物件情報を確認すると、他の業者とは表示が異なっており、なぜか会社住所や電話番号が記載されていなかった。)

クラシスとBluAgeの関係は記載されていないため、少なくとも問い合わせを行う時点でアプリ利用者には「クラシスはCanaryを利用している提携業者の1つ」としか認識できないだろう。

Canaryアプリで検索して出てきた、クラシス社の担当物件画面(他の業者と異なり住所・電話番号の記載がない)
Canaryアプリで検索して出てきた、クラシス社の担当物件画面(他の業者と異なり住所・電話番号の記載がない)

クラシスの株主構成は不明であるため、クラシスがBluAgeの100%子会社であるかどうかは確認できていない。

だが以上の事実を踏まえると、クラシス社がBluAge社の関連企業であることは間違いないだろう。

追記:なお、craxis.jpのドメインは2019年2月に取得されており、クラシス社が法人登記される以前にBluAge社のコーポレイトサイトからリンクを貼られていた時期もあったようだ。当時の状況を見ていた不動産業界の関係者は、「クラシスはブルーエイジの子会社だと認識していた」と言う。(ただし正確に資本関係などはわからないとのこと)

また2019年当時のクラシス社は宅建業者ではなく、そもそも法人格も持っていなかったはずであることを補足しておく。

【プラットフォームが自社でも物件仲介することは問題ないが…】

前述の通り、表向きBluAge社はもう不動産仲介を行っていないと発表されており、自社の仲介事業をクラシス社に移管したことには触れていない。

BluAge社の持つ媒体でクラシス社が関連企業であるという告知はなく、クラシス社のサイトにおいてもBluAge社と関連があるという情報は記載されていない。

以上の事実が就活生や内々定者にどのように伝えられていたかは不明だが、いずれにしても不誠実かつ怪しい動きであると思われる。もちろん、Canaryを利用する企業、Canaryを利用する個人ユーザーを欺く行為でもあると言えるだろう。

関係性を公にしないということは、クラシス社が不動産仲介で何か問題を起こしてもCanaryは「情報を載せているだけで、別会社だから関係ない」というスタンスを取る可能性がある。

プラットフォーマーが自社でも仲介事業を行うこと自体は問題ないが、プラットフォームの利用企業からすればあまり歓迎できることではない。

その事実を隠しているのはどうだろうか。あまりに不透明であり、上場を目指している企業のやり方とは思えない。

また「今回内定した学生はBluAgeではなくクラシス社に配属されるのではないか?」と懸念している方もいるようだ。少なくとも2022卒募集情報でクラシス社の存在は明らかにされておらず、内定した学生がどこまで状況理解しているかも心配になる。

内定者のうち個人営業を担当する人材だけクラシスへ転籍させるという可能性も考えられるが、逆に「クラシスに新人受け入れの余裕がないから今回の内々定取り消しにつながった」という可能性も考えられる。少なくともBluAge本体はプラットフォームに専念すると発表されているため、BluAgeとして不動産仲介の人材を採用することはないのだろう。

(とはいえ、今後「やはり自社で仲介した方が儲かる」という話になった場合、再度仲介事業に力を入れるという可能性も否定はできない。)

いずれにしても採用広報の観点から見て、入社を検討する相手に正しい情報発信ができているとは言えないだろう。

【状況のまとめ】

最後に、事実として確認できている部分をまとめよう。

・BluAge社は過去に宅建業者として東京都知事の認可を受けていた

・BluAge社はすでに宅建業者ではなく、業者登録は削除されている(期限切れではない)

・BluAge社が過去に不動産仲介を行っていた時のオフィスと同住所で、宅建業者であるクラシス社が事業を行っている。

・クラシス社は、2021年5月設立、6月に宅建業者として登録されている

・クラシス社は、BluAgeの運営するCanaryアプリに物件情報を掲載している

・クラシス代表の山﨑氏はBluAge社に在籍していたが、その事実が載ったWantedlyのページはなぜか削除されている

・BluAge社の使っていた不動産事業のオフィスをクラシス社が引き継いでいることについて、公式サイト上では情報発信がされていない(BluAge社がもう不動産仲介を行っていないということはBRIDGEのニュース記事にて言及されている)

就活生への対応だけでなく、他の点においてもBluAge社は対応を是正すべき点が多いように見受けられる。これを機に正すべき点を正し、公明正大に事業を推進していただきたい。

就活SWOT代表

慶應義塾大学在学中、世界初の就活SNSの代表に就任。国内最大の就活SNSへと成長させた後に大学を卒業し、エグゼクティブサーチを行う人材ベンチャーに入社。役員・事業責任者などの幹部人材の採用支援に携わる。2009年にエイリストを設立し「自分の頭で考え、行動する人材を増やす事」を命題として就職情報サイト「就活SWOT」を開設。

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