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宇都宮ブレックスの新戦力、フィーラーは得点機会のクリエイトで重要な存在になる

青木崇Basketball Writer
オールラウンドなスキルで宇都宮の勝利に貢献することが期待されるフィーラー

 宇都宮ブレックスは7月19日、新外国選手としてチェイス・フィーラーとの契約合意を発表した。プレスリリースでその名前を見た瞬間、2013年のNCAAトーナメントで全米中を驚かせたフロリダ・ガルフ・コースト大の選手だと認識する。第15シードながら初戦で第2シードのジョージタウン大を破り、次戦でも当時全米トップ25にランクインした実績のあるサンディエゴ・ステイト大(元秋田ノーザンハピネッツのデショーン・スティーブンスが在籍)を撃破し、スウィート16進出に貢献したという実績の持ち主だ。

 この時のフロリダ・ガルフ・コースト大はダンク・シティというニックネームがつき、速攻やアリウープのダンクを1試合で何度も決めるエキサイティングなチームだった。フィーラーはフィニッシャーの一人であり、跳躍力のあるフォワードとして活躍。速攻でしっかり走るだけでなく、オフボールでの動きからノーマークになってダンクを叩き込むシーンも多いなど、賢さも兼ね備えていた。

 フロリダ・ガルフ・コースト大の4年間で98本のダンクを決めているフィーラーだが、スウィート16進出を果たした3年生時の2012-13シーズンは37試合で59本。パスのうまいブレット・コーマーというポイントガードの存在が大きかったとはいえ、シーズンを通じて1試合平均で1本以上のダンクを叩き込むという数字はなかなか見られないもの。鎌田慎吾GMはフィーラーについて、「持ち前の運動能力と長いウイングスパンでアクロバティックなプレーをしてくれて、ファンの皆さんを魅了してくれると期待しております」と語るのも頷ける。

 大学卒業後の2014−15シーズンからヨーロッパでプロとしてのキャリアを歩み始めたフィーラーは、3Pシュートを決められるウイングの選手として実績を作ってきた。ドイツ・ブンデスリーガのブロッシュ・バンバーグで過ごした昨季は、平均9.9点、FG成功率51.2%、3.1リバウンド、2.4アシストをマークしている。

 9月11日に行われた越谷アルファーズとのプレシーズンゲーム。フィーラーは持ち味の跳躍力を生かして12本のリバウンドを奪い、ペイント内でのフィニッシュや3Pショットで得点を奪った。「これまでの3試合よりも上げていかなければならない」と3Pの出来に不満を感じていたが、視野の広さを生かしたパスでの貢献度は非常に高かった。アシスト自体は3本だったものの、活発なボールムーブと得点機会のクリエイトという部分で、今季の宇都宮にとって大きなプラス材料となりうる。

「元々パスを見ているところというのは、映像を見ていてもあったんです」と安齋竜三コーチが語ったように、フィーラーはドライブからキックアウトでオープンのシューターを見つけられることに加え、チームメイトの動きをしっかり把握した中で正確なエキストラパスを逆サイドに通すシーンも何度か見られた。ドリブルで長くボールを保持することはほとんどなく、オフェンスが停滞しないようにしようという意識を持っているという印象を持った。越谷戦後の会見でパスについて質問すると、フィーラーは次のように返答した。

「子どものころはポイントガードとして育ったんだ。2年弱で18cmくらい身長が伸びたんだけど、それまではポイントガードだったからたくさんパスを出していた。フロリダ・ガルフ・コーストでは常にパスを優先するブレット・コーマーがいたけど、ポイントガードをやっていたことは選手としての成長で助けになったし、身体能力やシュート力以外のプレーとしても十分に使えている」

 ペイント内にカット際のボールキャッチから一瞬でオープンの選手にパスを捌けることや、トップから右にドライブした際に視線は左コーナーながら右コーナーへのノールックパスを出せていたのは、ポイントガードの経験が生きている証。今後、新しいチームメイトの特性や傾向を把握していけば、1試合5アシスト以上を記録することも十分期待できる。

「いいシューター、いいパッサー、ゲームを理解している経験豊富な選手がたくさんいるなど、素晴らしいタレントが揃っている。オフコートでもいい人ばかりだから、順応自体はそれほど大変じゃない」と語るなど、フィーラーは新しいチームメイトとのケミストリー構築は順調に進んでいる。自身の強みを対応力と話していることも、宇都宮にとっては心強い。

「リーグのレベルは予想していたよりも高いと思った。多くの日本人選手がシュートを決められるし、パスもできるし、クイックネスもある。能力の高い外国籍選手が多く、ヨーロッパや大学時代に対戦してきた選手もいる」と語るフィーラーの活躍は、宇都宮の成功に欠かせない要素の一つと言っていいだろう。

Basketball Writer

群馬県前橋市出身。月刊バスケットボール、HOOPの編集者を務めた後、98年10月からライターとしてアメリカ・ミシガン州を拠点に12年間、NBA、WNBA、NCAA、FIBAワールドカップといった国際大会など様々なバスケットボール・イベントを取材。2011年から地元に戻り、高校生やトップリーグといった国内、NIKE ALL ASIA CAMPといったアジアでの取材機会を増やすなど、幅広く活動している。

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