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ようやく『事前確定運賃』スタート!シェアエコ後進国ニッポンの憂鬱

神田敏晶ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント
出典:JAPAN TAXI

KNNポール神田です。

□国土交通省は(2019年)10月25日、タクシーにおける事前確定運賃について、同日付けで認可したと発表した。

□10月28日以降、準備が整った地域からタクシーの事前確定運賃サービスを開始。

□現時点では、JapanTaxi、スマたく、MOVなどの配車アプリで利用でき、札幌、東京、横浜、長野、名古屋、大阪、京都、神戸などの27地域、約200の実施事業者(トータルで約2万車を保有)が対応

□JapanTaxiでは、日本交通、金星自動車の合計約2200台からスタート。東京都内では、帝都自動車交通の1119台も11月より開始予定という。S.RIDEでは、国際自動車の3458台、大和自動車交通2052台が28日時点で対応する。なお、ソフトバンクと滴滴出行のジョイントベンチャーであるDiDiモビリティジャパンも準備中

出典:タクシー乗車前に運賃がわかる「事前確定運賃」、JapanTaxiやMOVなどが対応開始

2019年10月28日(月)ようやく国土交通省は『事前確定運賃』の認可を発表し、同日より、2万台のタクシーで『配車アプリ』により乗車前に乗車料金がわかるようになった。

■日本全国のタクシー台数の8.1%で『事前確定運賃』が導入

日本のタクシー台数は24万6322台であり、今回2万台ということは、8.1%で『事前確定運賃』が導入されたこととなる。

たかが1割弱であるが、されど1割の保有タクシーで、『事前確定運賃』が導入されたことは大きな一歩である。

事前にタクシー料金がわかるということは大きな市場競争を生み出すからである。

■マレーシアの『GRAB』VS『UBER』戦争

マレーシアの客待ちをしながらだべるタクシー運転手 出典:筆者
マレーシアの客待ちをしながらだべるタクシー運転手 出典:筆者

米国での2009年のUBER誕生から3年後…。

2012年『GRAB』の前身企業である『MyTeksi』がマレーシアでサービスを開始した。

かつて、東南アジアのタクシー事情は非常に劣悪であった、ドライバーの質も悪かった。空港からのボッタクリタクシーも旅の悪夢のひとつである。そこに『配車アプリ』が登場したことによって大きく変革した。

スマートなタクシー乗車体験ができるGRAB TAXI 出典:筆者
スマートなタクシー乗車体験ができるGRAB TAXI 出典:筆者

料金が事前にわかり、行き先を告げなくてもよく、チップも必要がなく、現金の支払いもいらない(配車アプリ上でカード決済可能)。しかもドライバーと乗客がお互いに評価できる『仕組み』が登場したことによって、大きく変わった。

ドライバーのスコアポイントだけでなく、乗客もスコアポイントをつけられているのだ。相互評価のしくみは非常に重要だ。お客様は神様ではないのだ。上品なお客様は混雑時にも率先して配車されたりするのだ。料金にも差があるかもしれない。

それは、民間のクルマを持つドライバーが参入する『シェアリングエコノミー』では相互評価は必須のしかけである。

従来のタクシー事業者もそのしかけに乗り込み、ユーザーはタクシー事業者を選ぶか、一般市民ドライバーを選ぶかの選択肢が同時に増えたのである。高級車も選べ、乗り合いタクシーも選べる。

また、配車アプリは、『ダイナミックプライシング』を取り入れ、閑散期には劇的に安くし、スコールの雨のタイミングや朝の渋滞では値段が上げたりという、タクシー料金が『時価』であることを明確にした。また、『GRAB』と『UBER』のアプリの2つでタクシー料金の『事前確定運賃』を比較することにより、どちらを選ぶかという選択もできた。2018年『UBER』が東南アジアから撤退し、『GRAB』へと事業譲渡され、『GRAB』のサービスは『UBER』を飲み込み、より進化を遂げるようになった。

■ドバイのUBERは『ヘリコプター』もチャーターできる

ドバイのUBERはヘリコプターも1.5万円から呼べる 出典:筆者
ドバイのUBERはヘリコプターも1.5万円から呼べる 出典:筆者

世界的に『配車アプリ』というのは、民間のドライバーであり、身元も確認されているドライバーだ。日本でいう身元もしれない『白タク』とは、一線を画している。中東でも女性がようやくドライバーになれるという社会進出の鍵ともなった。また、言語に障害がある障害者でも『配車アプリ』ならでは、会話が必要としないので社会進出につながる。乗客のアプリにはハンディキャップがありますと。表示されているが高いスコアポイントを持つドライバーであればハンディキャップの有無はすでに関係ない。

また、言語がわかりあえなくても、配車アプリが相互に翻訳しているので、会話が成立しない外国人であっても、アプリを経由して自由に移動することができるようにもなった。

また、提供者と利用者の供給と需要のバランスでマッチングする『プラットフォーマー』のおかげで、クルマからバイク、ひいてはヘリコプターまでシェアできる。もっと言えば、飛行機すらシェアできる時代へとすでに向かっているのだ。ドバイでも一瞬、ヘリコプターをシェアできるならばトライしたくなった。それらの進化もタクシーのみの『配車アプリ』である以上、シェアリングエコノミーの入り口にも立てていない、単なる送迎料金のかかる『ハイヤーアプリ』でしかないのだ。

■ロシアの検索大手の『Yandex』もタクシーアプリ

乗車前からの決済で待ち時間のロスをなくすロシアのYondex Taxi 出典:筆者
乗車前からの決済で待ち時間のロスをなくすロシアのYondex Taxi 出典:筆者

ロシアの検索大手の『Yandex』も『配車アプリ』を参入し、民間のクルマからタクシー、そして、ライバル会社の『UBER』まで呼んでくれる。この相互乗り入れのような仕組みも非常に注目したい。これは、タクシー事業者ではなく、ヤフーのような総合サービスが『配車アプリ』をまとめているからこそできる相互乗り入れのサービスといえよう。すべてのサービスが、業界の枠を超えて広がっていくのだ。タクシー業界だけではなく、モビリティサービス業界を包み込む革命が起きているのだ。

■日本におけるシェアリングエコノミー参入障壁の問題点

海外のプラットフォーマーにとって、日本のタクシー事業者を管轄する国土交通省の認可ほどの厳しい状況は常に頭痛のタネだ。UBER誕生の2009年からようやく10年経過して、ようやく『事前確定運賃』が導入されたというからだ。今まで一体、何をしてきたんだ?。これは海外の人にとっては、日本の遅さを痛感することだろう。しかも、ワケのわからない『迎車料金』も計上されている。これはもう、海外の人には『チップ』として翻訳するしかないだろう。

流しのタクシーで、需要を求めて、化石エネルギー(液化石油ガス)を燃やし、二酸化炭素を巻き散らかすタクシーのほうが安くなる。

顧客の需要のある『配車アプリ』は、迎車料金分が高いのだから普及のしようがない。

顧客の近くにいるタクシーが確実にお客を優先的に獲得できるのだから、わざわざ迎えにいく『迎車料金』という仕組みを撤廃する方向で動かなければならないと真に考えていただきたい。

海外のプラットフォーマーにとっても、日本の市場に魅力を感じながらも、いびつな日本独自の『護送船団方式』のチームジャパンの後追いしかできない市場となってしまっている。DeNAのようなベンチャーの『MOV』にとっても、ベンチャー企業の良さがまったく活かしきれていなのが日本のシェアリングエコノミーの実態だ。そもそも、『シェアリング』になっていないのだ。

DiDiのタクシー広告には19時より無料の文字が…出典:筆者
DiDiのタクシー広告には19時より無料の文字が…出典:筆者

鳴り物入りで登場したDiDiの『迎車料金』無料も、2019年10月18日(金)からは『19:00から翌03:59まで迎車料金無料』と完全に改悪となってしまった。夜間しか迎車料金が無料にならないのだ。

【追記:2019年10月31日】

なんと、この記事アップしたあとに、迎車料金無料は、2019年11月11日(月)23:59に終了と発表になりました。

いつもDiDiをご利用いただきありがとうございます。

東京エリアで実施しております迎車料金無料キャンペーンについて、2019年11月11日(月)23:59をもって終了いたします。

https://didimobility.co.jp/info/20191030719/

『配車アプリ』によって、運転手は無駄なタクシーの流し運転をしなくても、客の居場所がわかり、行き先もわかり、料金のやりとりも不要。むしろう通常よりも、安くしてほしいくらいなのだ。つまり、希少な需要に向けて大量のタクシーがさまよっているインフラビジネスを変えなければならない。電車andバスの公共交通機関とタクシーの間の料金設定が、需給バランスの効率化によって実現できるインフラを特に、大都市では築かなければならないのだ。

この、『事前確定運賃』導入までの10年の遅れが、『シェアリングエコノミー退国ニッポン』をすべて象徴している。

ビフォー10年、そしてこれからのアフター10年で、日本の歴史がこの時代の政府の舵取りの悪さを評価した頃には、日本は旧態依然としたデジタル・エコノミーの発展途上国へ格下げされていることだろう。

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□ソフトバンクのライドシェア事業でライバルなき世界がやってくる

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□シェアリングエコノミー退国、ニッポンの憂鬱「民泊」編

https://news.yahoo.co.jp/byline/kandatoshiaki/20170925-00073961/

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https://news.yahoo.co.jp/byline/kandatoshiaki/20170613-00072049/

ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント

1961年神戸市生まれ。ワインのマーケティング業を経て、コンピュータ雑誌の出版とDTP普及に携わる。1995年よりビデオストリーミングによる個人放送「KandaNewsNetwork」を運営開始。世界全体を取材対象に駆け回る。ITに関わるSNS、経済、ファイナンスなども取材対象。早稲田大学大学院、関西大学総合情報学部、サイバー大学で非常勤講師を歴任。著書に『Web2.0でビジネスが変わる』『YouTube革命』『Twiter革命』『Web3.0型社会』等。2020年よりクアラルンプールから沖縄県やんばるへ移住。メディア出演、コンサル、取材、執筆、書評の依頼 などは0980-59-5058まで

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