シェアリングエコノミー退国、ニッポンの憂鬱「民泊」編
KNNポール神田です。
クアラルンプールで、エアービーアンドビーのホストやBooking.comでホスト滞在型の民泊事業を展開中だ。
ITを駆使したこれらのプラットフォーマー(民泊仲介サイト)のおかげで、写真を数点掲載と住所確認、営業許可さえあればすぐにでも民泊をスタートすることができる。筆者はシェアリングエコノミーを実体験するために、2017年6月からマレーシアに居住している。
筆者の管理している物件 エアービーアンドビー
https://www.airbnb.jp/rooms/20176644/
筆者の管理している物件Booking.com
https://www.booking.com/hotel/my/knn-condominium.ja.html
マレーシアの物価は、日本の1/3、人件費は1/5、そして住宅環境は10倍
都内のワンルーム相当の料金で、3ベッドルーム、2バスルーム、プール、ジム、テニスコートのあるコンドミニアムの営業可の物件をクアラルンプールで借りている。日本では考えられない住宅環境である。LCCの普及で、東京ー大阪間の新幹線料金と同じ価格で、東京ークアラルンプール路線(7時間半)はある。時差はマイナス1時間だ。南国のこの地は年中夏だ。日本で契約した050のIP電話で日本の格安料金で日本国内通話ができ、デュアルSIMスマートフォンで、日本とマレーシアの2つの電話番号でSMSが使える。さらにインターネットの回線スピードは日本とまったく差がない。Skype会議にも参加できる。中国で仕入れたAndroid TV-BOXでは、日本どころか世界中のテレビ番組から映画まですべて無料で楽しめるアプリがプリインストールされている(すべて中国語)。クルマがなくても、UberやGrab Taxi、シェアサイクルなどのインフラによって、十分に生活ができるシェアリングエコノミーのインフラ環境が勝手に整備されている。
日本からでも「マレーシア掲示板」のような日本語サイトで、部屋を一ヶ月単位で見つけることも可能である。フィジカルなフットワークはマレーシアで、情報や仕事は東京でというスタンスだ。マレーシアは、日本のパスポートでは連続90日、年間で180日まで滞在できる。
インターネットで世界が狭くなったことを日々実感している。しかし、法律面や国際間での税収のあり方など、もっと整備されなければならないと感じている。
民泊新法 2018年6月施行
日本では、2017年6月に国会で、180日以下の民泊規制の「民泊新法(住宅宿泊事業法2018年6月施行)」が決まり、さらに営業日数は、各自治体が条例で短縮することができるとなった。
住宅宿泊事業法案
http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_gian.nsf/html/gian/honbun/houan/g19305061.htm
この法律で決まったことにより、日本の民泊事業者は「許可制」から「届け出制」へとなったと考えることができる。都道府県や政令指定都市などに届け出た家主は、年180日以内の民泊営業が可能になる。以前は、日本のマンションの一室を民泊として貸出をしようとすると、管轄消防署の許可が必要となり、消防法により、マンションの一室ではなく、マンション全体を網羅する図面を用意してほしいと言われて断念してしまったことがある。また、180日以内ということで営利目的だけの事業者は参入するメリットがなくなった。あとは、「ホスト滞在型=ホームステイ型」の民泊とすることでかなりトラブルの大半はなくなることだろう。やはり日本における民泊の最大の問題点は、「ホスト不在型」によるところが大きいと考えている。外国人が大きな荷物をもってウロウロしている。夜中に大騒ぎしているなどの問題点は、「ホスト滞在型」でかなり改善されることだろう。しかし、実際に営業日数が180日以内かどうかは、誰がどうやって管理するのか?来年2018年の6月施行にあたり、まだまだ検討していく部分は残されている。
ネット時代のシェアリングエコノミーは世界を網羅できる
むしろ、筆者としては、シェアリングエコノミー時代は、何も狭い日本の中と日本の法律だけで考える必要はないと思う。インターネット経由で世界展開で考えればよいと考えている。自らの現地のコンドミニアム民泊を実践しながら思ったのが、海外でのコンドミニアムを借り、海外の「住宅宿泊管理事業者」を使って運用するということだ。実際に、クアラルンプールのコンドミニアムの大半は中国の富裕層がほとんど買い占めており、投資として運用し、実際には住んでいない物件が非常に多い。筆者のコンドミニアムも半分以上は、中国富裕層の所有者のいる空き室が多い。しかし、クアラルンプールは地震がまったくない為、コンドミニアムは高層階で作られているものの、どれだけ新築でも水漏れやアリやカビの発生など、根本的な部分では日本ではあり得ないことが多々発生する。投資として所有していても、気がついたら水漏れでカビだらけで資産価値が目減りしているなんてこともある。それを補うことができるのが現地の「住宅宿泊管理事業者」だ。コンドミニアムの通気、通水などのメンテナンスと同時に、民泊業務を手がけることなどもできる。日本にいて、日本の法律とだけ向き合っている必要はない。ネットで調べれれば世界の壁はいとも簡単に越えられる。そう、日本のマインドセットのディスアドバンテージは、世界を別物として考えているところだ。
日本はかつて、経済大国であった。しかし、いまはまさに、「シェアリングエコノミー退国」になりつつある。アジアの国々は自国だけでは、経済が回らないから常に世界を視野に入れている。日本は違う。すべて自国で完結している。日本では、片方でインバウンド客を増やしたいとしながらも、片方では、宿泊する外国人の民泊は制限したい。外国人で生活環境を乱されるのは嫌だが、外国人からのお金は欲しい。まさに、ニッポンの憂鬱だ。
訪日外国人を増やすために、訪日外国人に「出国税」
訪日外国人を増やすために、訪日外国人に「出国税」を課すというニュースを見て、思わず記事を疑ってしまった。
訪日外国人4,000万人目標の達成の為の新しい財源確保の為に、訪日外国人に税を課税するという愚策!
「燃料サーチャージ」があるから旅行を控えるのと同様に、アジアの僻地(ファーイースト)にわざわざ「出国税」を払ってまで行きたい人はどれだけいるかヒアリングしたのだろうか?
むしろ、無駄な結果に終わってしまっている訪日外国人への施策をもっと見直すべきはないか?財源が本当にインバウンド集客につながっているかをもっと検証すべきではないのか?
一体、「出国税」を課すことによって、どのような訪日外国人の地方への訪日外国人の誘致が考えられるのだろうか?関連性がとてもあるとは思えない。
また、なぜに出国税なのか?行きはヨイヨイで帰りは恐いで出国税を取られるのか?ならば、いっそ「入国税」のほうが、良心的だろう。これは、日本人が外国に行くアウトバウンドも想定してのネーミングに思えて仕方がない。「入国税」もしくは「入出国税」の方が税金のかかるイメージがまだわかる。なぜに「出国」する時にだけ課税されなければいけないのか?
2020年までに4000万人目標「ビジット・ジャパン」・キャンペーン
http://www.mlit.go.jp/kankocho/shisaku/kokusai/vjc.html
見事な右肩あがりの成長だ。キャンペーンの成果であることは間違いがない。しかし、今まで何もしていなかった事の裏返しなのかもしれない。
このマレーシアでさえ、2572万人のインバウンド客がいる。日本よりも見どころがあるかというと、圧倒的に日本の方が観光資源は豊富だ。では、なぜ?日本は遠くて、物価が高い?から、物価はフランスも高い8400万人。メキシコなんてはるかに遠いのに3200万人だ。しかし、日本のアウトバウンド出国人数は1711万人(2016年)だ。
https://www.travelvoice.jp/20170117-81436
インバウンドは右肩上りなのに、アウトバウンドはこの10年まったく変化していない。つまり、日本はますます内向きになっているのではないだろうか?観光だけではなく、世界に知人がいれば、訪れる機会も増えるだろうし、交流もネット時代は安価でできる。なによりもシェアリングエコノミーによる経済効果は世界的なムーブメントで押し寄せてきている。ここには何の国境による区別もない。あるのは国ごとの制度の違いだけだ。
何を規制し、何を緩和するのか?そこを決して見誤ってはいけない。