12月1日より全列車通過、通年休止となるスノーシェルター内の駅 奥羽本線 大沢駅(山形県米沢市)
10月31日、JR東日本東北本部は、山形県米沢市にある奥羽本線の大沢(おおさわ)駅を12月1日より全列車通過とすることを発表した。同駅は以前より板谷駅とともに、冬季は全列車が通過する「冬季休止駅」となっていたが、今回は無期限の休止となっており、春以降も列車の停車予定はない。一方、板谷駅は3月27日以降は再び列車が停車することが予定されている。
冬期期間における奥羽本線 板谷駅の全列車通過について(JR東日本ニュース)
大沢駅は明治32(1899)年5月15日、奥羽南線が福島から米沢まで開業した際に、大沢信号場として開設された。明治39(1906)年12月25日に駅に昇格して大沢駅となっている。福島~米沢間には険しい県境の板谷峠があり、それを越えるために赤岩、板谷、峠、大沢と4駅連続でスイッチバックが設けられていた。これらの駅に設けられていたのは、通過する本線から分かれた引き上げ線の先に駅が設けられている「通過可能型」で、現存するものとしては篠ノ井線の姨捨駅や土讃線の新改駅などがある。
大沢駅のスイッチバックは山形新幹線開業に伴う改軌工事に伴い、平成2(1990)年9月1日に廃止された。赤岩駅、板谷駅、峠駅のスイッチバックも同時に廃止されている。それまでスイッチバックの引き上げ線上に設けられていたホームは、本線上に移転され、それに伴いスイッチバックの旧駅は放棄されたが、今も設備の一部が現存している。写真の旧駅舎は昭和59(1984)年12月1日の無人化以降に建てられたと思われるもので、使われたのは6年足らずと短命だった。
移転後の大沢駅はポイントを雪から守るためのスノーシェルター内に設置されており、昼でも薄暗い独特の雰囲気だ。同じくスイッチバックから移転した峠駅と板谷駅にも同様の構造が見られる。
シェルター内に設けられたホームは相対式2面2線。ホームに番号は割り振られておらず、入口側(写真では奥)が米沢・山形方面、反対側(写真では手前)が福島方面となっている。ホーム間は構内踏切で結ばれていて、米沢方面ホーム上には三角屋根の待合室がある。
立派なスノーシェルターに覆われ、ホームに立てば人工物以外は目に入らない大沢駅だが、駅が設けられているのはわずか5世帯が暮らす山形・福島県境の山の中。利用者は極めて少なく、古いデータにはなるが平成16(2004)年時点で1日平均乗車人員はわずか3人だった。それから20年を経た現在は、さらに少なくなっていることだろう。
利用者の減少に伴い、大沢駅と板谷駅は令和5(2023)年1月10日から3月26日までの冬季に全列車が通過する措置が取られるようになり、翌令和6(2024)年も1月10日から3月26日まで全列車通過となった。利用者が少ない駅が冬季休止となった場合、数年を経て廃止されており、これまでに只見線の田子倉駅、奥羽本線の赤岩駅、山田線の大志田駅と浅岸駅、北上線の平石駅と矢美津駅がこれに該当する。また、只見線の柿ノ木駅、山田線の平津戸駅は冬季休止を経ずに通年休止となり、いずれものちに廃止された。
この度、冬季休止を経て通年休止となる大沢駅。これまでの休止駅の例から考えて、このまま廃止となる公算が高い。今回冬季休止が継続された板谷駅も数年後には大沢駅のように通年休止、または廃止となることだろう。同じく冬季休止となっている津軽湯の沢駅の今後も気にかかるところだ。
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