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12月1日より休止 スイッチバック跡が残るスノーシェルター内の無人駅 奥羽本線 大沢駅を再訪してみた

清水要鉄道・旅行ライター
大沢駅を通過する山形新幹線「つばさ」

 12月1日より全列車が通過し、復活の見込みのない「休止駅」となる、奥羽本線の大沢駅(山形県米沢市)。約一か月前に休止が発表されて以来、多くの鉄道ファンが訪れているが、筆者も11月26日、5年8か月ぶりに再訪してきた。この記事では休止を目前に迎えた大沢駅の様子をお伝えしよう。

大沢集落
大沢集落

 大沢駅があるのは米沢市南部、最上川の支流・羽黒川の上流にある大沢集落だ。かつては南置賜郡大沢村だったところで、明治の町村制で南置賜郡山上村となり、昭和30(1955)年1月1日に米沢市に編入された。NHKの報道によれば、人口は令和5(2023)年10月時点で16世帯26人。集落としての規模は保っているものの、空き家が目立つ。筆者は大沢駅で出会った地元の高齢男性に話を聞くことができたが、「昔はここから乗って学校に通ったが、今は高齢者ばかりで、駅を使う人はほとんどいない」とのことだった。

大沢駅手前の跨線橋
大沢駅手前の跨線橋

 駅は集落より少し高い位置にあり、入口の手前で奥羽本線のスノーシェルターを道路が跨いでいる。道の突き当りの左手が駅入口で、右手に行くと旧駅のスイッチバック跡に出る。

大沢駅案内図
大沢駅案内図

 駅入口には案内図が建てられており、廃止されたスイッチバックについても記入されている。看板の古さから見て、スイッチバックを廃止して新駅に移転した平成2(1990)年9月1日に設置されたものだろう。

旧駅舎
旧駅舎

 入口脇にはスイッチバック廃止まで使われていた旧駅舎が残されている。よく見ると「大沢駅」と掲げられていた跡も残っており、34年も前の廃止時点から塗り直されていないようだ。大沢駅は明治32(1899)年5月15日に大沢信号場として開業し、明治39(1906)年12月25日に駅に昇格。福島~米沢間の県境の板谷峠を越える区間にはスイッチバック駅が四連続(赤岩、板谷、峠、大沢)あり、大沢駅はその一つだった。

建物財産標
建物財産標

 前回は雪に阻まれて近づけなかった旧駅舎を近くで見てみると、建物財産標を発見。「昭和60(1985)年2月2日」の文字があり、駅舎として使われたのはスイッチバック廃止までのわずか5年半であったことがわかる。なんとももったいない話だが、ブラインドの隙間から見える内部には畳が敷かれており、今も保線作業員の休憩所として使われている様子だった。

旧駅跡
旧駅跡

 前回は雪に覆われていた旧駅跡も今回観察することができた。明治時代のものと思われるホームの石積みがそのまま残っている。レールは車止めの先も残っているが、砂利に覆われていた。駅としては使われなくなって久しいものの、工事用車両が駅構内に入るための通路として使われている様子で、筆者の訪問時も工事用車両が行き来していた。

給水塔
給水塔

 旧駅から現駅に向かう通路脇には煉瓦造りの給水塔が残っていた。蒸気機関車の時代に使われていたもので、おそらく明治時時代のものだろう。蒸気機関車の廃止とともに全国から姿を消していったので、今や貴重な存在だ。

スノーシェルター入口
スノーシェルター入口

 給水塔を後に進むと、いよいよ現駅があるスノーシェルターの入口だ。大沢駅は豪雪地帯にあるため、駅のポイントを雪から守るためにスノーシェルターが設置されている。スイッチバックの廃止に際し、ホームはスノーシェルター内の本線上に移転し、全国的に見ても珍しいスノーシェルター内の駅が生まれた。同時にスイッチバックを廃止した板谷駅、峠駅もスノーシェルター内にホームがある。

スノーシェルター内の現駅
スノーシェルター内の現駅

 保線車両を横目に見ながらスノーシェルター内の通路を進むと、ほどなく左から本線の線路がやってきて合流し、ホーム入口に着く。ホームは相対式2面2線で、手前(上写真では右)側が米沢・山形方面、構内踏切を渡った奥(同左)側が福島方面だ。構内踏切手前の電光掲示板では駅休止、板谷駅冬季休止、奥羽本線新庄~院内間運休・バス代行のお知らせが流れていた。ホームには数人の鉄道ファンがいたが、平日ということもあり、筆者も含めて5,6人と片手で数えられるほどだった。

福島方面ホームへの通路
福島方面ホームへの通路

 構内踏切を渡って福島方面ホームに行ってみよう。踏切からホームまでの通路も豪雪対策で覆われているが、壁が半透明なのでスノーシェルター内と比べると明るい。通路の奥、ホームに入る手前にはベンチが設置されている。ベンチのそばには猿が出没する旨の貼り紙があった。

福島方面ホーム
福島方面ホーム

 福島方面のホーム上には何もないが、米沢・山形方面ホーム上には三角屋根の待合室が設置されている。スノーシェルターという大きな建物の中に、待合室というもう一つ小さな建物があるというのは、なんとも不思議な光景だ。かつては福島方面ホームにもベンチがあったそうだが、山形新幹線が高速で通過する狭いホーム上で旅客を待たせるのは危険だと判断して撤去したのだろうか。

米沢・山形方面ホーム
米沢・山形方面ホーム

 板谷駅とともに令和5(2023)年1月より冬季休止の措置が取られるようになり、今回3度目の冬を迎える大沢駅。板谷駅が冬眠明けの3月27日より再び列車が停車するのとは対照的に、大沢駅に停車する列車は11月30日が最後となる。同じ奥羽本線の赤岩駅は、平成28(2016)年11月30日以降、列車が停まらないまま通年休止駅となり、令和3(2021)年3月13日に廃止となった。おそらくは大沢駅も二度と列車が停まらないまま、廃止となるだろう。休止に伴い、駅構内も立入禁止となる。信号場時代から数えて125年の大沢駅の歴史に終止符が打たれる日はそう遠くないのかもしれない。

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鉄道・旅行ライター

駅に降りることが好きな「降り鉄」で、全駅訪問目指して全国の駅を巡る日々。

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