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FAを選択していれば、田中将大はもっと大金を手にしていたのか

宇根夏樹ベースボール・ライター
田中将大(ニューヨーク・ヤンキース)OCTOBER 18, 2017(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 田中将大のニューヨーク・ヤンキース残留が決まった。田中は今シーズン終了後に契約を打ちきってFAになれる「オプト・アウト」の権利を持っていたが、それを行使しなかった。7年1億5500万ドルの契約は、あと3年6700万ドルが残っている。それぞれの年俸は、2018年と2019年が2200万ドル、2020年は2300万ドルだ。

 FAになっていれば、田中はそれ以上の契約を手にすることができたのだろうか。

 過去3度のオフにFA市場に出た先発投手のうち、新契約の総額と年平均が、いずれも田中の残り契約を上回るのは、ザック・グレインキー(アリゾナ・ダイヤモンドバックス)、デビッド・プライス(ボストン・レッドソックス)、マックス・シャーザー(ワシントン・ナショナルズ)、ジョン・レスター(シカゴ・カブス)の4人――今オフはそこにダルビッシュ有ジェイク・アリエタも加わりそうだが――しかいない。

 総額を問わず、年平均2000万ドル以上の契約を得た先発投手に範囲を広げても、他に2人、ジョーダン・ジマーマン(デトロイト・タイガース)とジョニー・クエイト(サンフランシスコ・ジャイアンツ)が増えるだけだ。ちなみに、昨オフにFAになって新契約を交わした先発投手には、総額5000万ドル以上も年平均2000万ドル以上もおらず、2013年のオフは総額も年平均も、田中の7年1億5500万ドルが先発投手のなかで最も高かった。

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 田中のここ3シーズンと、ジマーマンとクエイトを含む6人のFA直前3シーズンを比べると、田中のK/BB4.79は上から2番目ながら、防御率3.76は最も悪く、リーグ平均と球場を考慮に入れたERA+115はワースト2位。532.0イニングも2番目に少なく、5人とは70イニング以上の差がある。田中の今シーズンと6人のFAイヤー(オフにFAとなるシーズン)の比較でも、K/BB4.73は3位だが、防御率4.74、ERA+95、178.1イニングはワーストで、いずれも6人よりかなり劣る。

 獲得に乗り出す各球団の事情や、他の先発投手の動きなどもあるので読みにくいが、田中が今オフにFAとなっていたら、4~6年の契約を得て総額は6700万ドルを上回る一方、年平均は2200万ドルを少し下回ったのではないか。

 ただ、6人中5人は契約満了時(オプションは含まず)に35歳以上になっていて、ジマーマンも34歳だ。それに対し、田中は現在の契約を終えてFAになるのとほぼ同時に、32歳を迎える。これは、グレインキーがダイヤモンドバックスと契約した時と同じ年齢だ。ここからの3年間で実績を残せば、田中は再び大型契約を手にするに違いない。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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