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レアル・マドリーで信念を貫くジダン。残された道は前人未到のCL3連覇。

森田泰史スポーツライター
主力としてマドリーを牽引するクロースとC・ロナウド(写真:ロイター/アフロ)

ジネディーヌ・ジダン監督は信念を曲げなかった。レアル・マドリーは冬の移籍市場で補強を行わず、シーズン後半戦に臨んでいる。

マドリーが1月に補強を敢行しないのは、決して珍しいことではない。事実、最後に冬の市場で補強したのは3年前に遡る。

■必要に迫られた補強

2015年冬。マドリーはクルゼイロから移籍金1400万ユーロ(約19億円※現レート)でルーカス・シウバを獲得した。

当時のマドリーはルカ・モドリッチ、ハメス・ロドリゲスが負傷離脱していた。サミ・ケディラは契約延長オファーを断り、練習姿勢などから指揮官の信頼を失った。カルロ・アンチェロッティ監督は中盤補強の必要性を訴え、L・シウバの移籍が実現したのである。

なお、この冬の移籍市場でマルティン・ウーデゴーア、マルコ・アセンシオを獲得したマドリーだが、ウーデゴーアはBチーム相当のカスティージャで選手登録、アセンシオはレンタル契約でマジョルカに残留した。

■ゴールキーパー論争

そこから遡ること2年、2013年冬にジョゼ・モウリーニョ監督がセビージャから移籍金350万ユーロ(約4億円)でGKディエゴ・ロペスを獲得している(2014年の冬の移籍市場では補強選手ゼロ)。長きに渡る「ゴールキーパー論争」の幕開けである。

GKイケル・カシージャスとの確執が噂されたモウリーニョ監督は、新たな守護神を求めていた。そこでD・ロペスを引き入れ、正GKのポジションを与える。マドリディスタの心は揺れに揺れた。

ただ、モウリーニョ監督退任後も論争は続いた。アンチェロッティ監督はリーガエスパニョーラでD・ロペス、コパ・デル・レイとチャンピオンズリーグ(CL)でカシージャスを起用するという苦肉の策を講じ、2013-14シーズン終了時にD・ロペスがミランに移籍するまで、喧騒は収まらなかった。

■控え組に対するジダンの信頼

奇しくも、今冬の移籍市場で、獲得の可能性があったのはアスレティック・ビルバオGKケパ・アリサバラガだった。

「GKは必要ない」。1月6日の公式会見でジダン監督は明確に意思を示した。結局マドリーはケパの獲得を見送っている。

だがジダン監督は本当に控え組を信頼しているのだろうか。リーガで20試合を戦い、ここまでプレータイム1000分以上を超えているのは11選手だ。その選手たちとサブ組の出場時間には大きな違いがある。

テオ・エルナンデス(出場時間296分)、ヘスス・バジェホ(270分)、マルコス・ジョレンテ(237分)、マテオ・コバチッチ(172分)、ダニ・セバジョス(186分)、ボルハ・マジョラル(183分)...。彼らのプレータイムは主力の半分に満たない。

何より、今季開幕前に移籍金2600万ユーロ(約35億円)で加入したテオ、1800万ユーロ(約24億円)で加入したセバジョスの出場時間がカンテラーノのアクラフ・ハキム(426分)より少ないのは気懸かりである。

■野心の衰え

今季のUEFAスーパーカップで、マンチェスター・ユナイテッドを下した直後のことだ。

イスコが「あの感動はもうないな...」と呟くと、ルーカス・バスケスが「初めての優勝の感動、ってことだろ」と応じていた。イスコは2014年、2016年、2017年と3度UEFAスーパー杯の優勝を経験。知らず知らずのうちに、野心が消耗している可能性はある。

現有戦力を維持する信念を貫いたジダン監督だが、新加入選手不在で競争力を上げるのは困難だ。マドリーはコパ敗退が決定しており、リーガ制覇も厳しい状況である。

残されたCLで前人未到の3連覇をーー。それがマドリディスタの失望を歓喜に換える、唯一の手段になる。目標を達成するため、ジダン監督は再び全選手の競争意識を煽り、レアル・マドリーはその中で一致団結しなければならない。

スポーツライター

執筆業、通訳、解説。東京生まれ。スペイン在住歴10年。2007年に21歳で単身で渡西して、バルセロナを拠点に現地のフットボールを堪能。2011年から執筆業を開始すると同時に活動場所をスペイン北部に移す。2018年に完全帰国。日本有数のラ・リーガ分析と解説に定評。過去・現在の投稿媒体/出演メディアは『DAZN』『U-NEXT』『WOWOW』『J SPORTS』『エルゴラッソ』『Goal.com』『ワールドサッカーキング』『サッカー批評』『フットボリスタ』『J-WAVE』『Foot! MARTES』等。2020年ラ・リーガのセミナー司会。

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