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アニメ・配信がテレビ局を支え… アニメのパワーでテレ東の決算が変化!

河村鳴紘サブカル専門ライター
(写真:アフロ)

 在京キー局の2024年3月期の通期連結決算が出そろいました。テレビ局が、近年アニメ事業に力を入れる流れにありますが、業績としてはどうなのでしょうか。以前からアニメに力を入れていた「テレ東」の決算を振り返ってみます。

◇減収減益も…前年度は過去最高

 テレビ東京ホールディングス(テレ東HD)の決算の前に、各局の置かれた状況について触れます。各局の業績は、「テレビ離れ」によってテレビ広告収入が減少し、それをカバーするために他事業の成長が求められています。不動産や催しに加え、コンテンツの強化に乗り出す流れにあり、特にアニメが注目されています。ターニング・ポイントは、社会現象にもなった「鬼滅の刃」の大ヒットです。

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 中長期で見ると、テレ東HDは、アニメビジネスで一定の結果を出しています。売上高は約1485億円(前年同期比1.6%減)、本業のもうけを示す営業損益は約88億円(同4.3%減)。減収減益ですが、前年度は売上高・営業利益ともに過去最高で、急成長は難しいにしても、ある程度の期待ができる流れにあります。

 同社の業績は、中長期で見ると鮮明です。10年前(2014年3月期)の売上高は約1206億円、営業利益は約47億円。20年前(2004年3月期)は売上高が約1093億円、営業利益は約37億円。どちらも営業利益率が5%に届いていません。しかし、ここ3年は営業利益が80億円を突破。2026年度には、営業利益115億円を目指す……とあります。

 テレ東HDのアニメ重視の姿勢は、決算でも明確です。2023年の取締役会で、セグメント(事業区分)を変更し、「地上波・BS放送事業」「アニメ・配信事業」「ショッピング・その他事業」にしました。「配信」にはドラマも含まれるので、すべてがアニメではありませんが、明らかにセグメントに「アニメ」の文字が入ったように、大きな柱になったのは明確です。これほどまでになったのは、驚くべきことではないでしょうか。

 決算の説明でも、「スパイファミリー」のテレビシリーズの配信や「ポケットモンスター」の商品化が、国内・海外で売上を伸ばし、欧州で「ナルト」の配信が順調に推移。「ブラッククローバー」のゲーム化権、配信も世界的に好調だったことが触れられています。

◇アニメ・配信事業 全体の営業利益の6割以上

 もう少し知るため、セグメント別の業績を見ましょう。

 地上波・BS放送事業ですが、売上高は約947億円(49億円減)、営業利益は約36億円(10億円減)で減収減益。アニメ・配信事業ですが、売上高は約445億円(5億円増)、営業利益は約59億円(6億円増)で増収増益。後者は、営業利益率も10%以上で、テレ東HDの営業利益の6割以上を稼いでいます。売上高の比率を考えると、アニメ・配信事業の好調ぶりが際立つのです。同時にテレビ放送の厳しさも鮮明になっているわけですが……。

 なおホールディングスではなく、テレビ東京単体のライツ事業(アニメ)の「売り上げ区分」も公開されています。日本が約36億円、海外約173億円。アニメのエリア別売上高の割合もあり、トップは北米の29.4%で、続いて中国の27.0%。日本は17.4%にとどまります。アジア・中東なども14.1%、最後に欧州の12.1%です。海外の割合が高く、かつ特定の地域に頼ることなく、分散しています。

 当然、このアニメ効果がある好業績は、他局も見ているでしょう。各テレビ局でも「アニメ強化」の動きがさらに強まりそうです。

サブカル専門ライター

ゲームやアニメ、マンガなどのサブカルを中心に約20年メディアで取材。兜倶楽部の決算会見に出席し、各イベントにも足を運び、クリエーターや経営者へのインタビューをこなしつつ、中古ゲーム訴訟や残虐ゲーム問題、果ては企業倒産なども……。2019年6月からフリー、ヤフーオーサーとして活動。2020年5月にヤフーニュース個人の記事を顕彰するMVAを受賞。マンガ大賞選考員。不定期でラジオ出演も。

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