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3年3000万ドルの1年目を終えた投手と3年3000万ドルの契約を交わす。単純にプラス1年ではなく…

宇根夏樹ベースボール・ライター
レイナルド・ロペス(アトランタ・ブレーブス)Jun 19, 2024(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 昨オフ、アトランタ・ブレーブスは、FA市場に出ていたレイナルド・ロペスを3年3000万ドル(2024~26年)の契約で迎え入れた。今オフ、ブレーブスは、ロペスと3年3000万ドル(2025~27年)の延長契約を交わした。

 従来の3年契約は、1年目が終わったところだ。新たな3年契約は、残っていた2年分に1年分を追加しただけのようにも見える。もっとも、そう単純ではない。

 前回の契約は、2024年が年俸400万ドル、2025年と2026年が年俸1100万ドル。そこに、2027年の球団オプション、年俸800万ドル(解約金400万ドル)がついていた。3年3000万ドルは、最短の期間が3年、最少の総額は3000万ドル、ということを示している。ブレーブスがオプションを破棄した場合の総額は、年俸400万ドル+年俸1100万ドル+年俸1100万ドル+解約金400万ドル=3000万ドルだ。

 今回の契約は、2025年が年俸800万ドル、2026年が年俸1400万ドル、2027年は年俸800万ドル。オプションは、ついていない。

 前回の契約の場合、ブレーブスが2027年のオプションを行使すると、4年3400万ドル(400万ドル+1100万ドル+1100万ドル+800万ドル=3400万ドル)となっていた。今回の契約も、前回の契約1年目と合わせると、こちらも4年3400万ドル(400万ドル+800万ドル+1400万ドル+800万ドル)だ。

 今回の延長契約により、2024~27年の総額は、3000万ドルと3400万ドルのどちらかではなく、3400万ドルとなることが確定した。ロペスにとっては、プラスだ。一方、ブレーブスのメリットは、2025年の年俸にある。前回の契約は1100万ドル、今回の契約は800万ドルなので、300万ドルの減額だ。

 ブレーブスは、ロペスの契約を延長する前に、ロサンゼルス・エンジェルスとトレードを行い、ホルヘ・ソレーアを放出している。こちらも、2025年の年俸総額に余裕を持たせ、今オフの補強費を増やすのが目的――少なくとも目的の一つ――だったと思われる。ソレーアのトレードについては、こちらで書いた。

「エンジェルスはトレードで先発投手を放出し、5年前の本塁打王を獲得する。この動きは理に適っている!?」

 もちろん、ロペスが2024年に好投しなければ、ブレーブスは契約を延長しなかったに違いない。リリーバーから先発投手に再転向したロペスは、先発25登板とリリーフ1登板で計135.2イニングを投げ、奪三振率9.82と与四球率2.79、防御率1.99を記録した。2024年に100イニング以上を投げた126人中、防御率2.00未満は、1.96のポール・スキーンズ(ピッツバーグ・パイレーツ)とロペスしかいなかった。

 ブレーブスでロペスよりも多くのイニングを投げた3人のうち、マックス・フリードチャーリー・モートンは、FAとなった。ロペスは、来年早々に誕生日を迎え、31歳となる。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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