洪水避難は警戒レベル4のうちに 途上の溺水トラップには細心の注意を
溺水トラップとは、冠水で見えなくなったフタのあいたマンホール、側溝、田畑などです。行く先が冠水して、気持ちが急いでいる時には、こういった落とし穴(トラップ)に気が付かずにはまってしまいます。
8月15日朝のNHKニュース情報によれば、停滞する前線の影響で関東甲信越にはこれから大雨が予想されています。洪水避難はレベル4のうちに、日中の明るいうちに、まだ道路冠水が始まる前に避難を始めましょう。
でも大雨が続いたら、避難途中に冠水が始まる可能性が大となります。そうなったら、溺水トラップに注意しましょう。
溺水トラップ
道路が冠水して泥水などで覆われると、道路やその周辺にある危険性が全く見えなくなります。危険性とは、フタのあいたマンホール、側溝、田畑などの存在です。道路が冠水し、避難所に向かうとか、家にいる子供を迎えに行くとか、気持ちが急いでいる時には、図1に示すようなこういったトラップに気が付かずにはまってしまいます。
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マンホールのトラップ
カバーイメージで示した通り、道路には下水につながるマンホールがあります。普段は鉄のフタで口が閉じられています。洪水の時、水は河川から溢れるばかりでなく、河川に流れ込むことができない雨水が下水路を逆流して、マンホールから吹き出します。その威力でしばしばマンホールのフタが飛び上がり、外れて口があいていることがあります。
避難途中にマンホールのトラップにはまった事故が過去にありました。マンホールに体がすっぽりと入ってしまうと、自力脱出はほぼ不可能です。体が垂直になり、例えば背浮きになるように体を動かすことすらできなくなります。万が一このような状態に陥ったら、背負っているリュックサックの浮力か、動画1に示すように手に持っている空のペットボトルの浮力を使って浮き上がります。
動画1 ペットボトルで浮きあがる方法(筆者撮影 35秒)
側溝のトラップ
図2をご覧ください。ある地方都市の小学校の通学路にあたる道路と、その横にある側溝の写真です。この場所は周囲より土地が低くなっていて、大雨の水がこの側溝に流れ込んできます。側溝と道路の境界には反射板ポールが等間隔に設置されていて、しかもポールとポールの間にはロープが張られています。
ここでは過去、ポールが設置されてなかった頃、大雨の時に歩行者が側溝に落ちました。道路が冠水した際に、車道を走る車を避けようと必要以上に側溝側に寄ったためです。冠水のため道路と側溝の境界の区別がつかず、ひとつは歩行者自身が側溝に気が付かなかったこと、もうひとつは自動車の運転手が「歩行者には横にまだ歩けるスペースがある」と勘違いしたことが原因として挙げられます。
どんなに歩行者が気を付けていても、事故が起こる時には他の要因が重なるもの。そういった想定外があるので、やはり冠水してからの屋外避難は避けたいものです。
田畑のトラップ
図3は田畑に接する道路の例です。このような場所が冠水した時、写真だけでは田畑側に落ちてもすぐに上がってこられるように見えます。実際このくらいの傾斜であれば、普段の水の出てないときなら簡単に歩いて上がることができるのですが、冠水していると上がれなくなります。
図4のイメージのように、一歩一歩上がっていき、腰が水面に出たくらいの所で足が滑って、それ以上は上がれなくなります。傾斜でいうと分度器の20度くらいよりきつくなるとこの現象が発生します。大雨で田畑の様子を見に行き、流された時に見られる事故原因です。大雨では田畑の様子を見に行かないことにつきます。
どうしても上がれない時には、背浮きになって水面を漂い、救助がくるのを待つしかありません。そして、近くで背浮きで浮いている人を見かけたら助けに行かずに、すぐに119番通報して、消防の救助隊を呼び、救助してもらいます。
まとめ
避難途中に道路の冠水が突然発生すれば、誰でも慌てて周辺の危険が見えなくなってしまいます。自宅を前にして、道路冠水に隠れた側溝トラップに落ちて亡くなる方も過去におられました。トラップにはまったら、リュックサックやペットボトルなどの緊急浮き具を有効に活用し、浮いて呼吸を確保してください。