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米研究所がコロナの最新予測を発表 12月までに米で31万人超が死亡、死因1位に

飯塚真紀子在米ジャーナリスト
新型コロナの感染者数が600万人を超えたアメリカだが、マスク着用率は少ないまま。(写真:ロイター/アフロ)

 アメリカの新型コロナウイルスによる感染者数が600万人を超えた。世界の総感染者数は2,600万人超。アメリカの人口は世界の全人口の約4%であるにもかかわらず、感染者数は世界の総感染者数の約23%も占めている状況だ。

 アメリカの新型コロナの感染状況は今、どうなっているのか?

 1日の新規感染者数は平均4万1,000〜4万3,000人と、1日7万人に及んでいた7月後半と比べると激減してはいるが、それでも4万人を超えているし、死者は連日約1,000人も出ている。

 また、増加が顕著だった南部や西部の州では新規感染者数は減少しているものの、今度は、インディアナ州、アイオワ州、カンザス州、ミネソタ州など中西部の州で感染者数が増加し始めている。

 過去3週間では、100万人超が新規に感染し、約2万1,000人が死亡、全死者数は18万5,000人を超えた。

 CDC(アメリカ疾病予防管理センター)長官のロバート・レッドフィールド氏は「新規感染者数を1日1万人以下に、死者数を1日250人以下に抑え込みたい」と言及しているが、同氏の目標にはほど遠い状況だ。

再び増加を始めているアメリカの感染者数。出典:ワシントン大学保健指標評価研究所(IHME)
再び増加を始めているアメリカの感染者数。出典:ワシントン大学保健指標評価研究所(IHME)

アメリカ人の死因の1位に

 そんな中、アメリカ政府の新型コロナ対策タスクフォースが信頼をおく分析を行っているワシントン大学保健指標評価研究所(IHME)が、アメリカでは、12月までに新型コロナによる死者数が31万7,000人に達し、新型コロナはアメリカ人の死因の1位になるとの最新予測を発表した。

 IHMEは、8月21日に、死者数は12月までに31万人になるという予測を出したばかりだったが、今回の最新予測では、さらに7,000人加えて上方修正している。それだけ感染拡大が続いているのだ。

 同研究所によると、新規感染者数は再び増加し始めているという。過去3週間の死者数は1日約1,000人。実効再生産数(一定の対策下で一人の感染者が新たに感染させる人数の平均。この値が1を超える状況では感染が拡大していき、この値が1未満の状況であれば感染は収束していく)は、アイオワ州、インディアナ州、ミズーリ州、ケンタッキー州、テネシー州、オクラホマ州で1以上となっており、その他の州では1以下となっている。

 また、100万人あたりの死者数が1日4人を超える州は、テキサス州、ルイジアナ州、ミシシッピ州、ジョージア州、サウスカロライナ州、テネシー州、フロリダ州、アリゾナ州、ネバダ州の9つの州で、特に、テキサス州とルイジアナ州では100万人あたりの死者数が1日7人を超えている。

 さらに、新型コロナが虚血性心疾患に次いで、アメリカ人の死因の2位となった。

 アメリカで報告された感染者数は、総感染者数(推定)の20%以上に達していると推定。つまり、同研究所は、アメリカには約3,000万人の感染者がいると推定していることになる。ちなみに、韓国では、報告されている感染者数が総感染者数(推定)の約48%と多数の感染者が確認されていると推定している。

マスク着用率が95%になったら

 感染拡大がアメリカでなかなか収まらないのは、人々の動きの増加とマスク着用率がいまだ高まっていないことに原因があると思われる。

 アンドロイドやiOSなどのスマホアプリの位置データによると、アメリカでは全国レベルで人々の動きが小幅に増加、マスク着用令が出されたり、マスク着用を呼びかけるキャンペーンが行われたりしているにもかかわらず、マスク着用率は50%を切っているという情けない状況がある。比較までに、韓国のマスク着用率は80%を超えているし、日本のマスク着用率は85%に達している。

アメリカのマスク着用率は50%を切っている。出典:ワシントン大学保健指標評価研究所(IHME)
アメリカのマスク着用率は50%を切っている。出典:ワシントン大学保健指標評価研究所(IHME)

 これらの状況を踏まえて、同研究所は、12月1日までに、新型コロナによる総死者数は31万7,000人に達し、1日の死者数は2,000人を超え、新型コロナはアメリカ人の死因の1位になると予測している。

新型コロナがアメリカ人の死因の1位になる日も近い。出典:ワシントン大学保健指標評価研究所(IHME)
新型コロナがアメリカ人の死因の1位になる日も近い。出典:ワシントン大学保健指標評価研究所(IHME)

 重要なのは、現在50%に満たないマスク着用率が95%まで増加したら、6万7,000人の命が救われて、12月1日までの全死者数は25万人に抑えられると推定していることだ。同研究所では、8月27日から12月1日までに13万8,000人が亡くなると推定しているが、マスク着用により、その49%もの命が救われることになるという。

 最新報告は、マスクが命を救うことができるのに、いまだマスクを着用していない人々が半数以上を占めるアメリカの現状を浮き彫りにしているといえる。

 また、先日、“新型コロナ対策の顔”であるファウチ博士が、近くに人がいない時は“顎マスク”という間違った着用法を公開したことも問題ではないか。

 アメリカは、間もなく、国民休日である9月4日のレイバー・デーの週末に突入する。ホリデー中、人々が集まってバーベキューをしたり、飲んだりすることで感染が拡大することが危惧されている。季節性インフルエンザが流行り始める秋冬にも近づいている。そのため専門家は「レイバー・デーを契機に、感染が拡大するかもしれない」と懸念の色を見せている。

 マスクをしない大多数の人々に、間違った着用法を示す“新型コロナ対策の顔”に、近づく秋冬。アメリカの感染状況は当分収まりそうにない。

日本の死者数は6万人超に?

 ところで、同研究所は、世界各国の感染予測も行っているが、日本を見てみると、12月までに新型コロナによる全死者数は6万2000人を超えると推定している。下記のグラフが示しているように、11月以降、その数が激増している。9月3日0時時点の新型コロナによる日本の全死者数が1,318人であることを考えると、6万人超に激増するとはにわかには信じがたいが、果たしてこの予測は当たるのか?

 当たるにせよ、当たらぬにせよ、秋冬の感染拡大に備えて、個人も企業も、気を緩めることなく、万全な感染防止対策をとることが望まれる。

日本の新型コロナによる死者数は、12月までに6万2,000人を超えると推定。出典:ワシントン大学保健指標評価研究所(IHME)
日本の新型コロナによる死者数は、12月までに6万2,000人を超えると推定。出典:ワシントン大学保健指標評価研究所(IHME)

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在米ジャーナリスト

大分県生まれ。早稲田大学卒業。出版社にて編集記者を務めた後、渡米。ロサンゼルスを拠点に、政治、経済、社会、トレンドなどをテーマに、様々なメディアに寄稿している。ノーム・チョムスキー、ロバート・シラー、ジェームズ・ワトソン、ジャレド・ダイアモンド、エズラ・ヴォーゲル、ジム・ロジャーズなど多数の知識人にインタビュー。著書に『9・11の標的をつくった男 天才と差別ー建築家ミノル・ヤマサキの生涯』(講談社刊)、『そしてぼくは銃口を向けた」』、『銃弾の向こう側』、『ある日本人ゲイの告白』(草思社刊)、訳書に『封印された「放射能」の恐怖 フクシマ事故で何人がガンになるのか』(講談社 )がある。

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