Yahoo!ニュース

自由研究は「立ち寄り」社会科見学でばっちり ~ 北陸編

中村智彦神戸国際大学経済学部教授
世界最大級大型ダンプトラックの930E

 夏休みと言えば、自由研究。自由研究と言われても、なにをしてよいのか、迷うことも多いと思います。(迷うのは子供たちのはずなのですが、実際にはすでに頭を痛めているお父さん、お母さんが多いのでは。)

 家族旅行や、帰省の「ついで」に工場見学をして、子どもたちの自由研究をさせてみませんか。今回は、お勧めの見学先、北陸編です。

 北陸新幹線開業で、首都圏からの一気に近くなった北陸。一時期からは少し落ち着いたとはいえ、まだまだ人気の高い観光地として、今年の夏も訪れる人が多いエリアでしょう。

・ファスナーはどうやって作られる? YKKセンターパーク  (富山県黒部市)

 チャックと呼ぶか、ファスナーと呼ぶかで世代がわかってしまうと、しばしば話題になりますが、その日本の代表メーカーYKK。

 創業者の吉田忠雄氏が、ファスナーの加工、販売の企業として1934年(昭和9年)「サンエス商会」の社名で、東京で開業したのが始まり。第二次世界大戦の戦災に遭い、故郷の富山に戻り、今度は社名を「吉田工業株式会社」に変更。この英文名「Yoshida Kogyo Kabushikigaisha」の頭文字YKKがファスナーの商標名として定着。1994年(平成6年)には、社名もYKKに変更したのです。現在では、ファスナーだけではなく、グループ会社で建材の製造など手掛ける大手製造企業です。

YKK黒部工場。北側には日本海が広がる。
YKK黒部工場。北側には日本海が広がる。

 そのYKKの主力工場があるのが、富山県黒部市。広大な敷地に工場が広がっています。

 この工場の敷地内に設けられているのが、YKKセンターパーク。2006年かから産業観光に取り組んできたYKKが一般に公開している丸屋根展示館と呼ばれる展示資料館では、YKKが製造するファスナーや窓をはじめとする建材の歴史や最先端技術などが紹介されています。

 大きな公園の中のような敷地に建っている展示館には、駐車場もあり、なにより入館無料。10名以下であれば、予約も必要ありません。YKKがブラジルに持つコーヒー農園から直送されるコーヒー豆で淹れたコーヒーなどが楽しめるカフェなども併設されおり、保護者もゆったりした気分に浸れます。

 自由研究に使えるのは、丸屋根展示館の展示、開設。ファスナーの歴史や、手作業で制作していた時代の風景から、現代の工場の様子までわかりやすく展示されています。特に、さまざま製品の種類、さらにはその材料の多様さなどは、毎日、お世話になっているファスナーですが、驚くこともたくさんあります。

 身近な製品がどのように作られているかをまとめてみるのは、自由研究のテーマとしては取り組みやすいのでは、さらに、一日二回、予約制で「ファスナー手作り体験とスタッフによる展示館の案内」(有料一人800円)が実施されています。専門のスタッフによる解説と、自分で作ったファスナーも持ち帰れます。参加すれば、自由研究の8割方完成したようなもの。

 宇奈月温泉など富山方面への観光や帰省の「ついで」社会科見学では一押しです。北陸新幹線「黒部宇奈月温泉駅」からは、路線バスまたは車で約17分。あいの風とやま鉄道「生地駅」からなら徒歩で約15分。富山地方鉄道「電鉄黒部駅」より車で約10分。

 ちなみに富山地方鉄道には、元西武鉄道のレッドアロー号や元京阪電鉄のダブルデッカーなどが走っており、こちらも親子で楽しめます。

富山地方鉄道
富山地方鉄道

  

・大きさにびっくり 働く車の横綱!  こまつの杜 (石川県小松市)

 北陸と大阪を結ぶサンダーバードや、名古屋を結ぶしらさぎの車内からも、「なんだあれは?」と声が上がるのが、小松駅前に鎮座する世界最大級大型ダンプトラックの930E。一度はまじかで見てみたいと、出張の時に思っているお父さん、お母さんも多いはず。

 小松駅前に開設されているのは、こまつの杜。建設機械メーカーコマツが創立90周年を記念し、2011年に開設した産業観光、教育施設です。その目玉が930E。普通のダンプトラック20台分で、鉱山で使用される際には無人運転で使われているというもの。子供でなくとも、驚かされます。

びっくりする大きさ
びっくりする大きさ

 自由研究にねらい目なのは、わくわくコマツ館。ここは、コマツ旧本社建屋を再現した建物で、一階に展示場「ケンケンキッキファクトリー」があり、建設機械の歴史や仕組みなどが展示品やビデオ、実際に体験できる機械などで学べるようになっています。こちらも入場無料。働く車が大好きな子供たちにとっては、自由研究がすいすい進むのではないでしょうか。

 コマツの正式名称は株式会社小松製作所。銅山での採掘作業に使用する建設機械を製造するために1917年(大正6年)に吉田茂氏の実の兄である竹内明太郎氏によって小松市で創業したのが始まり。国際展開も早くから行い、今では世界を代表する建設機械メーカーだ。このコマツが、創業の地に開設したのが、こまつの杜である。

 このこまつの杜では、このほかにも、毎週水曜日と土曜日の午後2時から3時までの間には、ミニショベル試乗体験や、様々な体験イベントが行われていて、夏休みの自由研究にはぴったり。わくわくこまつ館の裏には、歴代のコマツの車両が展示されており、古いものは80年前のものもあります。こちらも見落とさないように。

 ちなみに、小松市は、「乗りもののまち」として売り出し中。このこまつの杜以外にも資料館などがあります。

 こまつの杜は、JR小松駅下車すぐ。駅の真ん前にあります。駐車場も完備されていますので、金沢観光や加賀温泉などへの家族旅行などの途中に立ち寄るのに便利です。

・ほかにもたくさん北陸地方の社会科見学

 北陸地方は、繊維産業、機械金属産業など産業が盛んな土地柄です。金沢市も、「実はものづくりの街」と言われるほどです。夏休み中は、様々な工場見学やものづくり体験などが各地で開催されます。帰省する前、旅行に行く前にちょっと調べて、「立ち寄り」社会科見学をしておくと、自由研究をどうしようと8月末に悩まなくて済みますよ。

神戸国際大学経済学部教授

1964年生。上智大学卒業後、タイ国際航空、PHP総合研究所を経て、大阪府立産業開発研究所国際調査室研究員として勤務。2000年に名古屋大学大学院国際開発研究科博士課程を修了(学術博士号取得)。その後、日本福祉大学経済学部助教授を経て、神戸国際大学経済学部教授。関西大学商学部非常勤講師、愛知工科大学非常勤講師、総務省地域力創造アドバイザー、京都府の公設試の在り方検討委員会委員、東京都北区産業活性化ビジョン策定委員会委員、向日市ふるさと創生計画委員会委員長などの役職を務める。営業、総務、経理、海外駐在を経験、公務員時代に経済調査を担当。企業経営者や自治体へのアドバイス、プロジェクトの運営を担う。

中村智彦の最近の記事