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ラグビー日本代表に激震! ジョーンズHC、W杯終了後に退任決定。「私は新しいチャレンジをする」

斉藤健仁スポーツライター
ジョーンズHCの任期はW杯終了後までとなった(撮影:斉藤健仁)

8月25日、東京・青山にある日本ラグビー協会で、専務理事の坂本典幸氏が出席し、「日本代表 ヘッドコーチ(エディー・ジョーンズ)の人事に関する記者会見」が行われた。

9月からイングランドで開催されるラグビーワールドカップ(W杯)に向けて、直前合宿を行っているラグビー日本代表に激震が走った。日本代表を率いているエディー・ジョーンズHC(ヘッドコーチ)が、W杯の結果如何に関わらず、W杯終了後に退任(11月1日付け)することが発表された。

◇W杯後も日本ラグビーに関わると見られていたが…

来年から南半球の世界最高峰のプロリーグである「スーパーラグビー」に日本代表が準じるチームが参戦し、ジョーンズHCはラグビー日本代表の指揮官だけでなく、4月からそのチームの「ディレクター・オブ・ラグビー」にも就任していた。

今回のW杯の結果にもよるが、引き続いて日本代表とスーパーラグビーと、日本ラグビーに関わっていくのではないかと見られていた。

ただ、今年の2月、南アフリカでジョーンズHCが南アフリカのスーパーラグビーチーム、ストーマーズのヘッドコーチに就任するという報道が出た。その時は、ジョーンズHCは「その(報道が出た)時は飛行機に乗っていた」と報道を否定していた。

◇先週、南アの強豪クラブと交渉していることを認めた

それでも、この8月18日、再び、南アフリカの新聞でジョーンズHCがストーマーズの指揮官になる方向で進んでいるという報道がなされた。しかも「2年契約で年俸は約4800万円。来週には発表されるだろう」というより具体的なものだった。

先週、その話をジョーンズHCに聞くと「W杯以後は、いかなる判断も自分はする権利がある。W杯に向けて日本代表にコミットしています。選手たちとって、W杯後に私が何をやろうが関係ない。W杯に100%、全身全霊で臨んでいると伝えました。どうなるか、W杯後にわかるでしょう」と答えた。

つまり、事実上、ストーマーズと交渉していることを認めていた。

日本代表の選手の一人も「エディーにもエディーの生活がある。(上記の報道は)W杯には影響がないと言っていました」と話していた。

◇本人の申し出によりW杯終了後の退任が決定

「W杯後にわかるでしょう」というコメントとは裏腹に、今日、会見が行われ、ジョーンズHCのW杯終了後の退任が発表された。

もともとジョーンズHCの日本代表指揮官としての契約は、今年の12月31日までだったが、8月20日にジョーンズHCから「新しいチャレンジをしたいのでW杯後の11月1日で退任したい」という強い申し出があり、8月24日の日本ラグビー協会の理事会で承認されたという。

ただ昨日(24日)の理事会で決まっていたが、今日(25日)の午前中にジョーンズHCから日本代表選手たちにW杯後の退任の話が伝えられ、そして午後に急遽、会見が行われた、というわけだ。

同時に、日本のスーパーラグビーチームの「ディレクター・オブ・ラグビー」も退任することも発表された。

◇「W杯を日本代表ヘッドコーチとしての集大成に」(ジョーンズHC)

ジョーンズHCは、日本ラグビー協会を通じて下記のようにコメントした。

「この4年間、日本ラグビーを変えたいと思い、強化に邁進してきました。その間にいくつかの記録も打ち立てることができました。一時は世界ランキング9位、日本代表初のテストマッチ11連勝、初めてウェールズ代表、イタリア代表に勝利を収め、またヨーロッパでの試合で初めて(ヨーロッパのチームに)勝利を収めることができました。

日本代表は、より優れている指導者を得て、2019年のラグビーW杯に向けて進化を続けると思います。私は新しいチャレンジをすることになりますが、日本代表は常に私の心の中にあります。今年のラグビーW杯を日本代表ヘッドコーチとしての集大成にしたいと思います」

日本ラグビー協会・専務理事の坂本典幸氏のコメントは下記の通り。

「エディー・ジョーンズHC体制になり、日本代表は素晴らしい躍進を遂げてきました。強豪国にも勝利するなど、日本ラグビーの真骨頂を発揮してくれました。今回、ジョーンズHCから退任の申し入れがあり、本人の意志が固いことから退任を承認することにいたしました。

この4年間、日本ラグビーの発展に貢献してくれましたジョーンズHCには感謝、そして敬意を表したいと思います。そして、ラグビーW杯2015で、目標であるベスト8に向けてベストを尽くし、挑戦をしていただきたいと思っております」

◇今後の監督人事はまだ何も決まっていない

来年以降の日本代表の監督の後任人事に関してはまだ何も決まっていない。ただ、来年に参戦するスーパーラグビーチームの指揮官はW杯前にも発表される可能性もあるという。

W杯を控えた日本代表選手たちに少なからず影響があるのではなかろうか。もう少し前か、もしくはW杯後に発表することはできなかったのか。ただ日本を本拠とするスーパーラグビーの話も同時進行しているため、その関係もあり、発表のタイミングがW杯直前の今日になったことは残念でならない。

ただ、ジョーンズHCが2012年に就任してからラグビー日本代表が、一つ一つ、歴史を塗り替えてきたことは事実。W杯で最高の結果を残し、指揮官は有終の美を飾ることができるだろうか。

スポーツライター

ラグビーとサッカーを中心に新聞、雑誌、Web等で執筆。大学(西洋史学専攻)卒業後、印刷会社を経てスポーツライターに。サッカーは「ピッチ外」、ラグビーは「ピッチ内」を中心に取材(エディージャパン全57試合を現地取材)。「高校生スポーツ」「Rugby Japan 365」の記者も務める。「ラグビー『観戦力』が高まる」「ラグビーは頭脳が9割」「高校ラグビーは頭脳が9割」「日本ラグビーの戦術・システムを教えましょう」(4冊とも東邦出版)「世界のサッカー愛称のひみつ」(光文社)「世界最強のGK論」(出版芸術社)など著書多数。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。1975年生まれ。

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