『安居海渡は持っている』浦和vsC大阪【浦和レッズ川柳試合レビュー】
■2023シーズンもレッズ川柳、やります!
31年目の春か。
一年目の春は、もう5月も半ばだった。戦前予想では、まず負けはないだろうと思われていたグランパス(当時はグランパスエイト)にコケ負けしたのと、何となく心が浮き立っていて、つい入場ゲートのところで転びそうになったのを鮮明に覚えている。
30年経って、場所はあの時と同じ駒場。
今回はシーズンチケット対象外とのことで、事前にチケットを購入。今まで、一度も買った記憶のない、西バックスタンドの二階席にした。いつもの立ち見自由席は大混乱になるだろうし、どうせなら、そういう席も経験しておきたい。そういえば、30年前にはまだバックの二階席は存在もしてなかった。
2連敗の末のホーム初戦か。やはりどうしようもないのが花粉症。最近は、目のかゆみや鼻のグズつきを感じるとともにシーズンがやってくる。
ちょうど2年前、レッズは2試合連続無得点で、私も
花粉症 かゆみもとれず 点取れず
と詠んだが、今はちょうどそれと同じ状況か。それでさっそく、
点取って 目鼻のかゆみも 取ってくれ
今年も「レッズ川柳」やりますよ。
■人生初の駒場2階席
前の2試合はテレビで見たが、興梠のやる気だけが伝わってきたものの、どう点を取ったらいいか、今一歩、突破口が見えなかった、さあて、きょうはどうか。
バックスタンド二階席、たぶん初めて足を踏み入れた気がするが、行くまでの階段が長く、トイレや売店に行くのもちょっと不便で、スタンドに出ても、通路階段が急で、68歳の人間にやや厳しいかな。到着は試合開始1時間前。まだ3分の1くらいしか埋まっていない。
時間もたっぷりあり、下の立ち見自由席の方に行ってみる。こっちはもう、ほぼ満杯。というより、試合開始40分くらい前には、もう立っている余白すらほとんどなくて、最後列など、二段三段になってお客さんが立っている。選手が練習をはじめるころには、最後列の人達は、スタンドの天井に邪魔されてピッチが見切れてしまうため、前かがみになって見るしかない。
しかし、久しぶりの全面声出し解禁で、とにかくみんな賑やかだ。
前かがみ しつつ声出す 自由席
セレッソのサポーターは小太鼓の応援が売りものなのか、リズミカル。一方のレッズはいつもながらの地鳴りタイプ。私の座ったバックスタンド二階席も、試合開始直前は総立ちでの応援。みんな、声を出せる日を待ちわびていた感じなのだ。
ちなみに先発メンバー発表で、セレッソのリザーブに入っていた香川、もっと大きなブーイングがあるかと予想したが、それほどでもなかったな。
■安居は今後もやってくれそうだと感じた理由
試合開始とともに、レッズがボールをキープする時間は長い。だが、どうも点を取れそうな匂いがしない。前の試合見てたら、最初にさんざ動いたあげくに少し疲れたところでポコーンと失点するのがパターンになりかけていたので、安心できないのだ。
セレッソの攻撃もあんまり迫力を感じないものの、何かのハズミで入れられそうなイヤーな予感がしたら、やっぱり30分過ぎにそのハズミが来た。しかも、オウンゴールとはね。
ヤな予感 オウンゴールで 大当たり
前半が終わった時点では、ボクシングにたとえると、手数は多いものの、決定的はパンチは相手に決められる「善戦敗北」の流れにハマっちゃったように見えた。
それは後半に入って、私達のいた西側を背にして向こうに攻める番になっても変わらない。相変わらず、セレッソの攻撃はそんなに強さはない。レッズはボールは持つのに、得点の形が作れない。興梠はよく骨惜しみせずに動いてた。自分も決めようとしたし、パスも出してる。でも、なかなかうまくいかない。
しかし、天は興梠を見放してなかったね。ちょうど酒井から出て来たスルーパスにゴール前に飛び込んできた興梠を止めようと相手DFが抑えにかかってPK獲得だ。
私としちゃ、PKは彼に蹴らせて1点とってもらいたいところもあったものの、まあ、PKはショルツ、と前もって決まっていたのだろう。せっかくの2023年最初の得点、半分は興梠のもの、とカウントしてやりたい。
興梠に 0.5点は 与えたい
ようやく今季初得点でも、まだスコアは1-1。PKの直後に、危うくまた失点か、がVARで救われたシーンもあってヒヤッとはしたものの、おおむね、セレッソの攻撃陣に崩されるような場面もなく、最低、引き分けはいけるだろう、と楽観的になったところで安居のJリーグ初得点が飛び出した。
途中出場で、しかも本来は後ろめの選手が決めるというのは、その選手にいわば「ゴール運」があるからじゃないかな。素質とか技術とかとはまた別のゴール運。
レッズにいたころの高原とか、最近の杉本とか、力はあっても、レッズにおけるゴール運はなかった。今のリンセンも、だいぶ危ない。それが安居にはあるのかもしれない。この勢いで、今年5ゴールくらいは期待したい。
いやまさか 安居の足に ゴール運
途中出場といえば、セレッソの方の香川真司、目立たなかった。ラフプレーでイエローカードもらっただけで、あとはほぼ消えてた。セレッソの選手たちも、あんまり香川にパス出さない。嫌われてんのかな。そんなことはないだろうが。香川が登場した際のセレッソサポの反応も、あんまりなかったし。いろいろな意味で意外だった。イニエスタやカズとは、どうも違うんだな。
ピッチ上 カガワシンジは どこにいる
試合終了後の勝利の行進で、西川が安居を引き連れ、「こいつが点取ったんですよ」とサポーターにアピールしている姿は、非常に印象的だった。今日一番のいいシーンだった。
山中伊知郎
1954年生まれ。1992年に浦和に引っ越して来て、93年のJリーグ開幕時にレッズのシーズンチケットを取得。以後31年間、ずっとシーズンチケットを持ち続け、駒場、ならびに埼スタに通う。2021年より、レッズ戦を観戦した後、「川柳」を詠むという「レッズ川柳」を始める。現在、去年一年の記事をまとめた単行本『浦和レッズ川柳2022』(飯塚書店)が好評発売中。代表を務める「ビンボーひとり出版社」山中企画では、昨年9月、お笑い系プロダクション「浅井企画」の元専務・川岸咨鴻氏の半生を追った『川岸咨鴻伝 コサキンを「3億年許さん」と叱責した男』をリリース。11月上旬には『タブレット純のローヤルレコード聖地純礼』も発売。今年4月には、漫才協会在籍30年の浅草芸人・ビックボーイズ・なべかずおが半生を振り返る『たまらんぜ! 芸人人生七転び八転び』を出す。