iPhone生産の台湾・鴻海、半導体不足で先行き不透明 消費者向け電子機器15%減収見通し
米アップルのスマホ「iPhone」の生産の大半を手がける台湾・鴻海(ホンハイ)精密工業の業績が先行き不透明な状況だと、米ウォール・ストリート・ジャーナルやロイターが報じた。
iPhone生産の7割超担う鴻海、15%減収へ
鴻海は電子機器の受託製造サービス(EMS)世界最大手。2021年7〜9月期はアップルから最新モデルである「13」を含めiPhoneの組み立ての75%以上を受注したとみられている。
しかし、鴻海は11月12日の決算発表で21年10〜12月期の業績について、スマホを含む主力のコンシューマーエレクトロニクス部門の売上高が、前年同期比で15%以上減少するとの見通しを示した。「世界的な半導体不足が予想を超えて22年7〜9月期以降も続く」とみている。
昨年10〜12月の鴻海の業績は好調だった。21年はその反動が出ることも減収の要因だとしている。鴻海の劉揚偉・董事長(会長に相当)は「供給不足がなければ、今年10〜12月の売上高予想はもっと良くなっていた」と説明した。
アップル、売上高の伸び率鈍化
アップルが先ごろ発表した21年7〜9月期決算は売上高が前年同期比29%増の833億6000万ドル(約9兆4700億円)だった。
アップルの売上高伸び率は21年1〜3月期に同54%、同4〜6月期に同36%を記録していたものの、7〜9月は製品供給が制約され、伸びが鈍化した。アップルのルカ・マエストリCFO(最高財務責任者)は決算説明会で「業界全体の半導体不足と、東南アジアの新型コロナに伴う製造上の混乱があった」と説明した。
アップルの7〜9月期の供給制約による逸失売上高は約60億ドル(約6800億円)となり、4〜6月期の30億ドル弱から倍増した。10〜12月期はさらに悪化すると同社はみている。
台湾ペガトロンも生産制約
鴻海の劉・董事長によると、新型コロナのパンデミックによるサプライチェーンの停滞は一部解消しつつある。スマホのカメラなどに使われる光学モジュールなどの部品の供給は、21年末までに正常に戻る見通し。だが、電源管理半導体の供給は依然逼迫している状況だと同氏は話している。
同じくiPhoneの生産を手がける台湾・和碩聯合科技(ペガトロン)も21年7〜9月期に新型コロナの影響を受けた。ベトナムとマレーシアにおける感染拡大で生産が制約され、iPhoneの納期が遅れたという。
ウォール・ストリート・ジャーナルによると、香港の調査会社カウンターポイント・リサーチは、21年の世界スマホ出荷台数伸び率を12%から6%に下方修正した。半導体不足が主な理由だという。また、米調査会社のストラテジー・アナリティクスは、21年におけるスマホの世界平均卸売価格が前年比で11%上昇すると予測している。
- (このコラムは「JBpress Digital Innovation Review」2021年11月16日号に掲載された記事を基にその後の最新情報を加えて再編集したものです)