アロー2迎撃ミサイルの全長・直径・重量の公表数値について推定
イスラエルの弾道ミサイル防衛システム「アロー2」の迎撃ミサイルのスペックについて以下のような数値が広く知られており、Wikipediaや有名な軍事シンクタンク(CSISなど)でも引用されています。
- 全長:6.95m
- 直径:0.8m
- 重量:1300kg
しかし一見しておかしなことに気付きます。この大きさのミサイルでこの重量は異様に軽過ぎるので物理的に有り得ないからです。
次にイスラエル空軍の公式サイトではアロー迎撃システム 'Arrow' ('Hetz') について次のような数値が見つかります。空軍の公式である以上はこれが正しいように思えますが、しかし一部の数字に不自然な部分が見つかります。
- 全長:7.00m
- 直径:0.6m (基部)
- 重量:2800kg
こちらは逆にミサイルが大きさの割に重過ぎます。しかしおそらく実際には逆で、重量の数字が正しく直径が間違っている可能性が高いように思えます。ただしイスラエル空軍の公式サイトのこれはアロー2ではなく試作型「アロー1」の数字ではないかという指摘があります。掲載されている写真がアロー1の物だからです。
アロー1(試験ミサイル、後にTM-91C標的に転用)
しかしアロー1のブースターは円錐形の末広がり型で基部が特に大きくなる構造で、最大直径は推定1.1~1.2mという巨大なものです(全長7.0~7.5m想定、映像からの計測)。すると「直径:0.6m (基部)」というイスラエル空軍公式の数値は全く合いません。もしアロー1のような円錐形の形状で基部の直径が0.6mならば全長は3.5~3.7m程度しかなく、不自然に小さくなってしまい、重量2800kgは有り得ない数字になってしまいます。これはアロー1の数字のようには思えません。
そして直径0.6mはアロー2の数字でも不自然な数字になります。
アロー2
そこでアロー2の公式発表写真から全長:直径の比率を推定します。真横から撮影した写真ではないので正確ではなくおおよそですが、全長:直径の比率は約70:8になります。全長7.0mなら直径0.8mということです。直径0.6mならば全長5.25mです。
アロー2の性能数値は発表媒体によって数字が異なるのですが、全長については6.8~7.0mでほぼ一致しています。全長7.0mが正しい場合、直径0.8mが正しくなります。
イスラエル空軍の公式サイトに掲載されているアロー2の数字「全長:7.00m、直径:0.6m (基部)、重量:2800kg」のうち、直径0.6mはおそらく誤記載で直径0.8mが正しい可能性が高そうです。
【参考比較】※特殊な大型迎撃ミサイル
- アロー2・・・全長7.00m/直径0.80m/重量2800kg ※円筒形、上段は細い
- S-300V/9M83・・・全長7.90m/直径0.915m/重量2290kg ※円錐形
- S-300V/9M82・・・全長9.91m/直径1.215m/重量4685kg ※円錐形
- SM-3ブロック2A・・・全長6.55m/直径0.53m/重量2000kg ※円筒形
※同一重量で比べると円錐形は円筒形よりも直径が大きくなる。