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甲子園! 小ネタ集その② 馬淵節健在「サマージャンボや」

楊順行スポーツライター
(写真:アフロ)

 夏の甲子園は、ベスト16が出そろいここからが正念場。2回戦の取材で、さる雑誌の「X」にあげたコメントのうち、いくつかをまとめてみます。

第6日

●熊本工1—2広陵

似たようなチームカラーですね、と問われた熊本工の田島圭介監督。「ええ、地方大会の数字を見たら、広陵さんとは二塁打、三塁打、ホームランの数が同じで、今日もヒット6本ずつ……」。残念ながらこの日、違ったのは得点だ。

●富山商0—4東海大相模

「投げたい気持ちはあったし、昨日は"行けるんか"と聞かれましたが、いざ球場入りしてから先発と聞いて、めちゃくちゃびっくりでした。まさか投げさせてもらえるとは」と、富山商の先発・福村優太。なにしろ、この夏の初登板が甲子園だったのだ。3回途中まで投げ、強力打線に1点は取られたが、「富商野球はできた」と満足そう。

○明徳義塾7—0鳥取城北

力の差はない、競ると思っていたというのは試合前の明徳義塾・馬淵史郎監督。結果的に大差がつき、「いろいろ注文はあるけど、勝てばOKです。あとは、四番の竹下徠空やな」と無安打の主砲をチクリ。大きな体になぞらえて「サマージャンボや。当たれば大きいけど……」続けたいのは、「なかなか当たらない」ということだったか。

第7日

○青森山田9—1長野日大

青森山田の兜森崇朗監督が「いいところは長打力」という蝦名翔人。3回にはあわやホームランという左翼フェンス直撃の二塁打を放ち、「マジで悔しかったです。入ったかな、という雰囲気はあったんですが……」。風もたまたま左から右と逆で、大会第2号とはいかなかったが、「心掛けているのは低い打球。ヒットの延長がホームランになってくれれば」。

○石橋5—0聖和学園

夏は初出場同士の対戦の9回、三遊間のゴロに飛びついて超ファインプレーを見せた石橋の三塁手・原佑太。「ピッチャーは、ゆるい打球が三遊間を抜けるのが嫌だというので、ライン側を空けても自分の左側の打球を意識するようにしているんです」。その結果の美技。さすが栃木県有数の進学校とあり、野球IQが高い。

○霞ケ浦5—4智弁和歌山

強豪相手に、タイブレークで勝利。茨城大会期間中にも、タイブレークの練習をしていたというのは霞ケ浦の高橋祐二監督で、ジャイキリには「信じられません」と繰り返しつつ、「力の差がある相手でも、タイブレークなら五分五分。ウチの打線は(羽成)朔太郎がキーマンで、10回に凡退したときはダメかと思いました。ですが、真仲(唯歩)がその裏よく抑えてくれた。足を攣る選手が出たのも含め、想定外のことばかりの試合で、私自身がびっくりしています」。初めて歌う校歌には「泣きそうになりました」とのこと。

野球をやめて卓球部に入りたい……

第8日

●健大高崎1—2智弁学園

健大高崎の先発は、大会直前にメンバー入りした杉山優哉。「いつも2年生に頼ってばかり。3年として勝利に導きたい」と、3回1失点と好投したが、「あの1点……変化球を外すつもりが甘く入ってしまいました」と、2回の同点タイムリーを悔やむ。それでも青栁博文監督は「紅白戦で結果を出したから、メンバーに入れたんです。3年生が最後まで懸命にやってくれた」。

●新潟産大付0—4京都国際

「送球のときに握り損ねてヒットにしたあとタイムリーが出たり、前の打者が申告敬遠されたあとに凡退したり、足を引っ張ってばかりのキャプテンなのに、仲間が助けてくれて、ありがとうと言いたいです」とは、新潟産大付の平野翔太主将。だが吉野公浩監督は、こう評価する。「足を攣りかけているのに、8回にはダイビングでゴロを処理したり、一番根性のあるヤツです」。

第9日

●掛川西0—2岡山学芸館

掛川西の増井俊介は、中学時代は卓球部。高校入学後野球部に入部したが、練習の辛さに1週間でネを上げた。「当時は太っていたので、あ、今もですけど(笑)きつくてきつくて。それで野球をやめて卓球部に入りたいといったんですが、先生たちに止められました」。それが、この日も8回にリリーフするなど、甲子園で登板するまでに成長した。「勉強もそうですが、コツコツと努力して結果を出す子なんですよ」。大石卓哉監督の言葉だ。

○早稲田実1—0鶴岡東

早稲田実がタイブレークの接戦をサヨナラ勝ち。昨年の夏を制した慶応とは、東京六大学でもよきライバルで、「よく聞かれるんですけど、自分自身は意識はしませんね」とこの日3安打の早稲田実・高崎亘弘。今年は、ときどき行う練習試合がなかったが、「去年はやりました」。そこで、「相手は、のちの全国制覇メンバーですよね」と問うと、「いわれてみればそうですね。いま気づきました」。

スポーツライター

1960年、新潟県生まれ。82年、ベースボール・マガジン社に入社し、野球、相撲、バドミントン専門誌の編集に携わる。87年からフリーとして野球、サッカー、バレーボール、バドミントンなどの原稿を執筆。85年、KK最後の夏に“初出場”した甲子園取材は64回を数え、観戦は2500試合を超えた。春夏通じて55季連続“出場”中。著書は『「スコアブック」は知っている。』(KKベストセラーズ)『高校野球100年のヒーロー』『甲子園の魔物』『1998年 横浜高校 松坂大輔という旋風』ほか、近著に『1969年 松山商業と三沢高校』(ベースボール・マガジン社)。

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