オートバイのあれこれ『色とりどりの、ヤマハ製エンジン③』
全国1,000万人のバイク好きたちへ送るこのコーナー。
今朝は『色とりどりの、ヤマハ製エンジン③』をテーマにお話ししようと思います。
『色とりどりシリーズ』は今回で3回目。
今回も、バラエティに富むエンジン作りをしてきたヤマハ製エンジンをいくつか見てみましょう。
◆『Vブースト』付きV4エンジン
2ストロークの分野では、往年のGPマシンや『RZV500R』『TZR250R』等に見られるようにV型レイアウトをよく使っていたものの、こと4ストエンジンとなると、ヤマハは並列レイアウトを主軸に据えてきた印象が強いです。
とはいえ、過去にはV型の4ストエンジンも手掛けていました。
ここで紹介する『V-MAX』に搭載されたV4(V型4気筒)ユニットは、その代表例と言えるでしょう。
1983年(昭和58年)にリリースしたフラッグシップツアラー『ベンチャーロイヤル』のV4エンジンをベースに、ヤマハは圧倒的な加速力を発揮する設計を施したV-MAX用のパワーユニットを製作。
排気量はベンチャーロイヤルと同じまま(1,198cc)、ピークパワーを90ps→145ps、最大トルクを10.4kg-m→12.4kg-mにまで増強していました。
この大幅なスペック向上に貢献したのが、ヤマハ独自の『Vブースト』機構です。
詳細なメカニズム解説は省きますが、エンジン回転数が6,000rpmを超えると1つの燃焼室ヘ2つのキャブレターから混合気が送られるようになる仕組みで、これによってV-MAXのエンジンは大パワーを得ていたのです。
Vブーストが発動した時の加速は暴力的で、これを求めてV-MAXを購入するスピードマニアも少なくなかったと言われています。
◆2ストローク並列4気筒エンジン
一般ライダーにはあまり馴染みのないレーサー車両のパワーユニットになりますが、かつてヤマハは並列4気筒の2ストエンジンでロードレースを戦っていたことがあります。
1970年代に開発されたレーシングマシン『TZ750』に、排気量700ccの水冷2スト並列4気筒エンジンが搭載されていました。
並列4気筒のレイアウトは4ストエンジンでは定番ですが、2ストではほとんど例が無く、「2スト屋」のヤマハならではのエンジンだったと言えるかもしれません。
TZ750が作られた当時はまだ2ストエンジン特有のピーキーな出力特性を抑える機構も無く、700ccの2スト4気筒はかなりの“暴れ馬”だったと考えられます。
技術開発が発展途上の時代のなか、ヤマハはこの後V4レイアウト、スクエア4レイアウト(4つの気筒が寄せ集まった形)などにもチャレンジしていました。
2ストローク並列4気筒は、そんな試行錯誤の過程で生まれたうちの一つと言えるでしょう。