全部で25品の超フルコース! 7人のシェフによる豪華絢爛な晩餐会とは?
コラボレーション
レストランとレストランのコラボレーションが頻繁に行われるようになりました。2つのレストランによる協業が一般的であり、シェフ同士がもともと師弟関係にあったり、兄弟弟子であったり、知人であったりと、様々なパターンがあります。いずれの場合でも、共通するのは信頼関係が確立されていることです。
コラボレーションと称さずに、2人なら4本の手があるのでフォーハンズ、3人ならシックスハンズと洒落た表現が用いられることもあります。
街場のレストランではなく、ホテルになるとコラボレーションの規模はもっと大きくなります。グループホテル同士であったり、同じブランドの海外にあるホテルであったりと、料理人同士のつながりだけに留まりません。
11周年の開業記念ディナー
様々なコラボレーションが行われている中で、先日とても大きなスケールで行われたコラボレーションディナーがありました。
それは、2021年10月22日にザ・キャピトルホテル 東急で行われた11周年の開業記念ディナー「星に願いを 〜7人のシェフの饗宴〜」(35,000円、税・サ込)です。
美食で名高いザ・キャピトルホテル 東急の7人ものシェフたちがひとつのコースをつくりあげた一夜限りのイベントでした。
7人のシェフたち
コラボレーションを果たした7人のシェフの顔ぶれは次の通り。
・総料理長
曽我部俊典氏
・日本料理「水簾」板長
柘植実氏
・中国料理「星ヶ岡」シェフ
山橋孝之氏
・オールデイダイニング「ORIGAMI」シェフ
中村直人氏
・メインキッチンシェフ
安里優治氏
・シェフパティシエ
安里哲也氏
・ベーカリーシェフ
杉澤良一氏
総料理長である曽我部氏から、日本料理の柘植氏、中国料理の山橋氏、オールデイダイニングの中村氏、バンケットの安里氏といった料理人に加えて、パティシエの安里氏にベーカリーの杉澤氏と、ザ・キャピトルホテル 東急のシェフが勢揃いしています。
コース内容
この豪華メンバーによって紡がれたコースはこちら。
・ウェルカムハーブティー
Native Happiness / Roogenic ネイティヴ ハピネス / ルージェニック
・アミューズ(ベジタリアン料理)
幸運を知らせる芝生の上のてんとう虫/総料理長 曽我部俊典氏
パパイヤとベジ海老のタルトレット/総料理長 曽我部俊典氏
胡桃豆腐 鉄火味噌/日本料理「水簾」板長 柘植実氏
柿百合根/日本料理「水簾」板長 柘植実氏
鳳凰冠水晶餃/中国料理「星ヶ岡」シェフ 山橋孝之氏
2色のズッキーニとミニマムラタトゥイユ オニオンビネグレットとともに/オールデイダイニング「ORIGAMI」シェフ 中村直人氏
二種の茄子と舞茸の秋色盆栽仕立て ナッツの香り/メインキッチンシェフ 安里優治氏
トマトと苺のスムージー/シェフパティシエ 安里哲也氏
トリュフ風味のサクリスタン/ベーカリーシェフ 杉澤良一氏
・シャンパン
Louis Roederer Collection 242 ルイ ロデレール コレクション
・冷前菜
魚介叩き千草作り/日本料理「水簾」板長 柘植実氏
丸ごと1個秋物小蕪のロースト 薫香コンソメジュレとともに/メインキッチンシェフ 安里優治氏
トリュフ ショコラ/総料理長 曽我部俊典氏
・日本酒
竹葉 百万石乃白 大吟醸 / 数馬酒造
・パン
ミッシュブロート/ベーカリーシェフ 杉澤良一氏
プティ・パン・ド・ミ・ア・ラ・マント/ベーカリーシェフ 杉澤良一氏
・温前菜
愛媛県鬼北町産キジのフリット そのエキスとともに/総料理長 曽我部俊典氏
ホタテ貝とズワイガニの香港ミニタルト/中国料理「星ヶ岡」シェフ 山橋孝之氏
・オレンジワイン
2020 Cullen Amber / Margaret River カレン アンバー
・魚料理
カルダモン香る三重県志摩産伊勢海老のソテー 白レバーと薩摩芋のチャツネ/オールデイダイニング「ORIGAMI」シェフ 中村直人氏
静岡県伊豆産金目鯛のロースト 緑色のアクアパッツァ 銀杏入り焼きリゾット添え/オールデイダイニング「ORIGAMI」シェフ 中村直人氏
・カクテル
Non -alcohlic cocktail NEMA ノン・アルコール カクテル NEMA
・肉料理
愛知県豊橋産ウズラのファルシ エピス風味/総料理長 曽我部俊典氏
国産牛頬肉の醤油煮込み 豆鼓醤ソース/中国料理「星ヶ岡」シェフ 山橋孝之氏
・赤ワイン
2016 la Bruja de Rozas / Comando G ラ・ブルーハ・デ・ロサス
・お食事
こだわり寿司2貫 鰈の昆布締め トロ ガリ/日本料理「水簾」板長 柘植実氏
菊花仕立て 松茸 ちぎり麩/日本料理「水簾」板長 柘植実氏
・アヴァンデセール
島根県奥出薔薇園の薔薇と赤い果実のギモーブ/シェフパティシエ 安里哲也氏
・グランデセール
愛媛県産中山栗と熊本県美玖里栗のデクリネゾン/シェフパティシエ 安里哲也氏
・ハーブティー
フレッシュハーブティー/総料理長 曽我部俊典氏
全部で25品という驚きの超フルコースで、和洋中がバランス良く取り揃えられています。コースにはドリンクも含まれており、料理とのマリアージュを楽しめるのも嬉しいところ。
いくつか代表的なメニューを紹介していきましょう。
アミューズ
最初に提供されたのは、アミューズというには豪華すぎる一皿。7人のシェフ全員がつくった9品がワンプレートに勢揃いしており、実に圧巻。この全てがベジタリアン料理となっているのも大きな驚きでしょう。最初に全員の力を合わせたメニューが味わえるのは、とても感動的です。
「幸運を知らせる芝生の上のてんとう虫」は、てんとう虫にそっくりな野菜の旨味が凝縮された一品。「胡桃豆腐 鉄火味噌」はクルミとゴマの豆腐のコクが、濃厚な味わいの鉄火味噌とよく合っています。「トマトと苺のスムージー」はトマトとイチゴのスムージーの酸味が、バナナのスムージーの甘味とよいコントラスト。
冷前菜
「魚介叩き千草作り」は色々な味わいの中に魚介の旨味が感じられ、「丸ごと1個秋物小蕪のロースト 薫香コンソメジュレとともに」はじっくりとローストしてカブの滋味が引き出されています。
「トリュフ ショコラ」はピンチョス風でポップな見た目。濃厚なトリュフの香りとヴァローナ社のカカオ分70%「グアナラ」チョコレートで大人の味わいです。中にはフォアグラのテリーヌが包まれていて、口溶け感があります。
パン
「ミッシュブロート」はライ麦の酸味が印象的で、ソースに付けて食べるにはぴったり。「プティ・パン・ド・ミ・ア・ラ・マント」はふっくらとやわらく、ほんのりと甘いので、そのままでも十分においしくいただけます。
愛媛県鬼北町産キジのフリット そのエキスとともに
さっぱりとした胸肉とジューシーな腿肉を食べ比べできるキジのフリット。キジのコンソメは鶏肉よりも広がりのある味わいで、口中に余韻も続きます。
静岡県伊豆産金目鯛のロースト 緑色のアクアパッツァ 銀杏入り焼きリゾット添え
伊豆出身の中村氏によって、伊豆の名物であるキンメダイが丁寧に火入れされていました。繊細な味わいを残しており、アクアパッツァも澄んだ味わい。
愛知県豊橋産ウズラのファルシ エピス風味
バナナとブドウの甘味によってウズラの食味が引き立ち、シナモンや八角といったスパイスによって食欲がそそられます。添えられたクルミのフィヤンティーヌのテクスチャがよいアクセント。
国産牛頬肉の醤油煮込み 豆鼓醤ソース
大きな牛頬肉が非常にやわらかく煮込まれています。豆鼓醤のほんのりとした苦味が刺激的で、赤ワインの渋みとの相性も抜群によいです。
お食事
脂が適度にのった中トロとカレイの握り。引き締まった旨味のあるネタで、最後の食事としては贅沢なほど。お椀はマツタケが心地よく香り、秋の訪れが感じられます。
愛媛県産中山栗と熊本県美玖里栗のデクリネゾン
食味に優れた中山栗をさまざまな調理法で楽しめるようにしました。モンブランやタルト、アイスクリームや甘露煮と、旬の栗の魅力が存分に引き出されています。
「星に願いを 〜7人のシェフの饗宴〜」の特長
ここまでメニューを紹介してきましたが、改めて「星に願いを 〜7人のシェフの饗宴〜」の特長を説明していきましょう。
最も大きな特長はやはり、7人のシェフで25品もつくりあげたという巨大なスケール感。ただ品数が多いだけではありません。和洋中が楽しめるので、最後までおいしく食べられます。これだけのことができるのも、日本料理、中国料理、フランス料理の一流料理人を擁しているザ・キャピトルホテル 東急だからこそ。
アルコールも豊富です。フランスのワインではシャンパーニュからオレンジワイン、さらには日本酒やモクテル(ノンアルコールカクテル)までがペアリングで用意されています。和洋中の料理それぞれに最適なお酒がマリアージュされており、料理がよりおいしく堪能できるのです。
料理のプレゼンテーションも興味深いものでした。まるでファッションショーのように料理が載せられたプラッターが運ばれてきて、非常に優雅に料理がサーブされていたのです。壇上ではメニューを担当したシェフが詳しく説明し、食べるのがより楽しくなりました。
7人のシェフの集合写真や直筆サイン、料理の説明が入ったイラストが配布されているのも見どころのひとつ。レシピまで掲載されており、この一夜限りのディナーに懸ける意気込みが伝わってきます。
間伐材を用いたストローや箸がお土産としてもらえるのも特筆するべき点。ザ・キャピトルホテル 東急は日本をリードするホテルとしてSDGsに力を入れています。2019年1月から世界で初めてとなる木材ストローを導入したことは記憶に新しいです。
開催された背景
7人のシェフが集結した饗宴とはなかなか聞いたことがありません。ザ・キャピトルホテル 東急にとっても初めてのことでしたが、どのような経緯があったのでしょうか。
総料理長の曽我部氏は次のように話します。
「開業10周年となる2020年にイベントを行う予定だったが、残念ながらコロナの影響で開催できなかった。今年に入り、ようやくコロナも落ち着いてきたので、1年遅れで開催することが決まった」
大きな節目となる大切なイベントなので、7人のシェフたちの思いをゲストに伝えるためにも、曽我部氏がみんなで力を合わせたコースの提供を発案しました。
「シェフたちにはあえて指示を出さなかった。私から指示してしまうと発想が制限されてしまうので、自由にメニューを考えてもらった」
他の6人のシェフはつくりたいものをつくり、それを曽我部氏が流れやバランスを配慮して、ひとつのコースにまとめあげたということです。
メニューは9月上旬に試食を行い、9月半ばにはほぼ決定。よりよいものを目指して、直前までコースの調整は続きました。当初は30品ありましたが、ブラッシュアップして25品に厳選し、今回のコースが見事完成したということです。
革新していく
総支配人の末吉孝弘氏は「素晴らしい料理人がいることを誇りに思っている。安心安全に配慮しながら、今後もこういった場を設けていきたい」と述べ、副総支配人の橋本好美氏は「予約がかなり好評だったので、会場をもうひとつ追加して当初の予定よりも席数を増やした。スタッフみんなの願いが届き、今年開催できたのは大変喜ばしい」と振り返ります。
ザ・キャピトルホテル 東急は「不易流行」を大切にしており、いつまでも変化しない本質的なものと新しく変化していくものをバランスよく取り入れています。
今回の「星に願いを 〜7人のシェフの饗宴〜」に限っては革新に重点を置いており、パーコー麺やローストビーフ、ふかひれの姿煮やジャーマンアップルパンケーキといった定番メニューはあえて提供していません。
曽我部氏のもと自由な発想で新たなメニューを紡ぎあげた才能豊かなシェフたちに、今後もさらなる期待をかけたいです。