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4分の1が過ぎた『おんな城主 直虎』を、どう評価するか!?

碓井広義メディア文化評論家
「日本ジュエリーベストドレッサー賞」授賞式での柴咲コウさん(写真:アフロ)

1月に始まったNHK大河ドラマ『おんな城主 直虎』も、全体の4分の1が経過しました。雑誌と新聞から、「ここまでをどう評価するか」という取材があり、ざっと以下のような話をさせていただきました。

「題材選び」は正しかったのか?

直虎役の柴咲コウさん、熱演しているとは思います。けれど、そもそもの題材選びが悪かった、というほかありません。

主人公が女性だと、時代劇では立場上、主軸になれないんです。これまでの大河ドラマで言えば、『八重の桜』(2013年)は新島襄の妻で、『花燃ゆ』(15年)は吉田松陰の妹。歴史上の人物を支えた立派な女性たちですが、大河としては”不発”でした。

今回の直虎も同様で、井伊家と、そして後に「徳川四天王」の一人となる井伊直政を陰ながら支える存在、という位置づけでは、大河ドラマを1年間引っ張るには弱いのです。

柴咲さんの出番が少ない、活躍しない、という不満が出るのも当然だと思います。ここまでの直虎は僧だったのですから、大っぴらに動くことはできません。無理に歴史に関わらせようとしない方針から、お家騒動のちまちました話ばかりになってしまう。

知らない人が主人公だから見る側の関心は希薄だし、本人のエピソードが弱いからダイナミックにならない。歴史上マイナーだった女性を、大河の主人公にもってくるのは難しいのです。

しかも最近の大河は、きっちり1年おきの女性主人公です。安倍政権の“女性が輝く社会”に、どれだけおもねっているのか知りませんが、大河の主人公まで男女雇用機会を均等にする必要はないですよ(笑)。

“戦国大河”というより“恋愛大河”

もちろん、「女性でありながら武家の当主」という、当時としては稀有な存在だった直虎の活躍を見たいという人はいると思います。しかし、この3か月で視聴者の気持ちを最も揺さぶったのは、直虎、直親(三浦春馬さん)、小野政次(高橋一生さん)の“三角関係”ではないでしょうか。

「誰かを大切に思う」気持ちは、何百年昔の男女も変わらないということ。むしろ、自分の気持ちに従うことが困難な時代だったからこそ、視聴者には、より純粋な恋愛に見えるのかもしれません。“戦国大河”でありながら、主人公自身が戦場で戦うシーンを見ることができない分、ここまでは“恋愛大河”ともいうべき楽しみ方で支持されてきたのだと思います。

中でも主人公を超える注目を集めているのが政次であり、高橋一生さんです。この現象は、タイミングとして、大河と『カルテット』(TBS系)の放送が同時進行していたことが大きいですね。

『カルテット』で高橋さんが演じていた家森諭高。クールで、得体が知れず、しかも色っぽい。「ちょっと悪そうでいて色っぽい男」というのは、いわば“要注意物件”なんですよね(笑)。危うさがあるから魅かれるタイプ。

大河の高橋さんは、そんな家森のイメージとどこか重ねながら、見られているのではないでしょうか。小野政次の政治的な動きを見ていると、なかなかの策士であり、結構悪っぽい面がある。いや、直虎や井伊家を守るためにも、あえて悪の部分を引き受けているのかもしれません。自分を抑え、相手の幸せのためなら何でもするという生き方は、特に女性視聴者にとって堪らないはずです。

目が離せない「家康夫妻」

もう一組、サイドストーリーとして楽しめるのが、徳川家康”夫妻”です。家康役の阿部サダヲさんは、昨年の『真田丸』で演じた内野聖陽さんよりもタヌキぶりに愛嬌がある。

その家康を尻に敷いていたと言われる築山殿も、auの“三太郎”CMでS嬢ぶりを発揮する菜々緒さんを、キャラもそのままにして持ってきたようで、上手いキャスティング。この2人を起用して、家康が主人公の大河ドラマを作ったほうが面白くなりそうです(笑)。

とはいえ、高橋さんの政次も、阿部さんの家康も、今回はあくまでも“脇役”ですからね。直親が命を落とし(三浦春馬さん不在となるのは痛手)、4月からはいよいよ直虎が「おんな城主」となります。ここからは、ぜひ主人公が物語を引っ張っていって欲しいものです。

メディア文化評論家

1955年長野県生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。千葉商科大学大学院政策研究科博士課程修了。博士(政策研究)。1981年テレビマンユニオンに参加。以後20年間、ドキュメンタリーやドラマの制作を行う。代表作に「人間ドキュメント 夏目雅子物語」など。慶大助教授などを経て、2020年まで上智大学文学部新聞学科教授(メディア文化論)。著書『脚本力』(幻冬舎)、『少しぐらいの嘘は大目に―向田邦子の言葉』(新潮社)ほか。毎日新聞、日刊ゲンダイ等で放送時評やコラム、週刊新潮で書評の連載中。文化庁「芸術祭賞」審査委員(22年度)、「芸術選奨」選考審査員(18年度~20年度)。

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