カレーやナンはない? 最新のインド料理が食べられるレストランが実はここにあった!
本格再開する飲食店
緊急事態宣言が全国で解除され、時短営業や酒類提供の禁止もようやくなくなりました。
期間中には、少なからぬ飲食店が通常営業できずにいたのは周知のところ。一等地にあったり、席数が多かったり、高級であったりする飲食店は、ランニングコストもかかるので、半端な営業では経営状況が悪くなるだけです。そのため、休業したり、営業日を厳選したりする飲食店は少なくありませんでした。
こういった苦境を耐え凌ぎ、全ての飲食店が通常営業できるようになったのは非常に喜ばしいことです。本格再開することになった魅力的なファインダイニングをシリーズで紹介していきましょう。
SPICE LAB TOKYO(スパイスラボトーキョー)
日本でインド料理といえば、カレーやナン、タンドリーチキンあたりが、思い浮かべられるかと思います。
そういった認識の中で、2019年11月16日にインド料理の概念をくつがえすモダンインディアンキュイジーヌレストラン「SPICE LAB TOKYO(スパイスラボトーキョー)」が銀座にオープンしました。上階には姉妹店となるバー「THE GREY ROOM(グレイルーム)」が同時に開業。
美食のインド料理が日本に上陸したとあって、大きな話題を呼びました。しかし、新型コロナウイルスの感染が拡大して自粛要請を遵守。酒類提供を中止し、営業日は週末などに限定していました。
緊急事態宣言が解除された10月1日からようやく、通常営業に戻ることになったのです。
総料理長は実績十分のテジャス・ソヴァニ氏
総料理長を務めるのはインドのラグジュアリーホテル「The Oberoi(オベロイ)」や「AMAN(アマン)」で副総理長を務め、コペンハーゲンの「noma(ノーマ)」での修行経験もある36歳のテジャス・ソヴァニ氏。新しい感覚で紡ぎ出したインド料理が高い評価を得ています。
そのソヴァニ氏によるクリエーションを存分に味わえるコースが「インクレディブルスパイス」(14,400円、税込・サ別)。
インクレディブルスパイス(14,400円、税込・サ別)
※以下は2021年秋メニュー。メニューは季節ごとに変わる
・寺院[ Offering | 捧げもの ]
セモリナ粉のハルヴァと栗カボチャのきんとん仕立て 黒ゴマのソース
・旬[ Autumn | 秋 ]
蕪と根セロリのポタージュスープ
・街路 [ Pride | 誇り ]
カルカッタ風ビーツのクロケット
イドゥリと治部煮のコンビネーション
仔羊のサモサ
・現代[ Modern | 最先端 ]
インドの伝統的なパスタ生地で包んだ毛ガニのラヴィオリ レンズ豆の甘酸っぱいソースと、トリュフの香り
・浄化 [ Cleanser | 洗浄 ]
柿とリンゴのソルベ 生姜のアクセント
・海岸線 [ Bay | 湾 ]
甘鯛の松笠焼きと北あかりのガレット ゴア風干し海老のカレーソースと共に
・王族[ Emperor | 皇帝 ]
子牛のロースと旬のきの子のポーピエット モリーユ茸香る、カシューナッツのソース
・農村[ Tradition | 伝統 ]
和栗とポルチーニ茸のビリヤニ
クミンとヨーグルトのソース “ライタ” スモークしたケツルアズキの煮込み “ダル・マッカニ” シンプルなカリー
・祝祭[ Celebration | 祝い ]
ムング豆のハルヴァをモンブランのスタイルで 洋梨のジェラート チャイティーのアングレーズソース
・シグネチャー 紅茶 or コーヒー
インドのシンボルとなるようなキーワードをテーマにし、日本の旬食材を用いてソヴァニ氏が料理を生み出します。想像がかきたてられ、ワクワクさせられるメニューばかりです。メニューを詳しく紹介していきましょう。
寺院[ Offering | 捧げもの ]
セモリナ粉のハルヴァと栗カボチャのきんとん仕立て 黒ゴマのソース
インドといえば寺院ということで、最初の一品は捧げものをイメージしました。ホクホクとした栗カボチャの食感と濃厚な黒ゴマソースで、食欲がかきたてられます。シャンパーニュとの相性も抜群です。
旬[ Autumn | 秋 ]
蕪と根セロリのポタージュスープ
旬の食材を用いたスープ。カブの滋味と根セロリの独特の香りが同居し、体がぽかぽかと温まります。夏には冷たいスープが提供され、体の暑さをクールダウンしてくれました。ソヴァニ氏のスープは、後の料理につなげるための重要な役割を担います。
街路 [ Pride | 誇り ]
カルカッタ風ビーツのクロケット
イドゥリと治部煮のコンビネーション
仔羊のサモサ
インドのソウルフードを小さな前菜に仕立てたソヴァニ氏のシグネチャー。インドが誇るポピュラーな屋台料理をスパイスラボトーキョースタイルで味わってほしいという想いが込められています。
真ん中はビーツの甘味が感じられる「カルカッタ風ビーツのクロケット」、左下は餃子風に仕上げた「仔羊のサモサ」、右上はヒヨコ豆の生地に鴨がのせられた「イドゥリと治部煮のコンビネーション」。この順番で食べていくと、味わいが徐々に深まって、よりおいしく食べられます。
プレートはまるで枕のようです。ソヴァニ氏いわく「気持ちよく味わっていただきたいので、日常の中で心地よくあるべきものである枕の形をしたユニークなプレートでご提供している。インドで日常的に食べられているスナックをモダンに仕上げているので、楽しんでいただけたら」。
クルチャ
インドのパンといえば、日本ではナンが知られていますが、クルチャの方が日常的に食べられています。写真はバター風味のプレーンとほうじ茶風味の2種類。そのままでもおいしく食べられ、ソースにつけて食べても、もちろんおいしいです。
現代[ Modern | 最先端 ]
インドの伝統的なパスタ生地で包んだ毛ガニのラヴィオリ レンズ豆の甘酸っぱいソースと、トリュフの香り
次はパスタ料理を挟みます。厚みのあるラヴィオリで、たっぷりと毛ガニを包み込みました。タマリンドの風味やレンズ豆のソースがインド風らしく、オータムトリュフの香りによって華やかに仕上がっています。
海岸線 [ Bay | 湾 ]
甘鯛の松笠焼きと北あかりのガレット ゴア風干し海老のカレーソースと共に
脂がのったアマダイの鱗をサクサクにした魚料理。エビの味わいが凝縮されたカレーソースはとても癖になります。クルチャにソースをつけて食べましょう。
王族[ Emperor | 皇帝 ]
子牛のロースと旬のきの子のポーピエット モリーユ茸香る、カシューナッツのソース
メインディッシュのポーピエットは、肉で野菜を包んだ伝統的なフランス料理。モリーユ茸はとても風味豊かで、ロース肉も非常にやわらかいです。サフランのチュイールが添えられており、見た目と食感のアクセントに。
農村[ Tradition | 伝統 ]
和栗とポルチーニ茸のビリヤニ
クミンとヨーグルトのソース “ライタ” スモークしたケツルアズキの煮込み “ダル・マッカニ” シンプルなカリー
最後に炊きたてのビリヤニを提供するのが、ソヴァニ氏の流儀。ビリヤニは和栗の甘味とポルチーニ茸の旨味をふんだんに含んでおり、インディカ米の「香りの女王」と言われるバスマティライスの繊細な香りとサラサラとした食感も印象的です。
コンディメントは、クミンとヨーグルトのソース「ライタ」、スモークしたケツルアズキの煮込み「ダル・マッカニ」、 シンプルなカリー。ビリヤニに加えると味わいが変化するので、好みでどうぞ。
ソヴァニ氏だからこその料理
ソヴァニ氏の料理はどれも新しい発見のあるインド料理でした。
常備されている20種類以上のスパイスを巧みに用いて、インド料理らしさが感じられます。北欧で学んだモダンガストロノミーの経験やイタリア・フランス料理の技法から、インド料理の魅力をさらに高めているといってよいでしょう。まさに、ソヴァニ氏にしかつくれない料理であるといえます。
個性的なテーブルウェア
テーブルウェアも個性的です。特注のマットゴールドに塗られたカトラリーはインドの王宮を想起させるような質感で、店内のラグジュアリー感ともぴったりでしょう。
先に紹介したユニークなピロー型プレート、インドの国鳥である孔雀をその羽の中にあるピーコックブルーの地色の上にゴールドで描いたショープレートなど、他では見かけられないものが多いです。
幅広いラインナップのワイン
ワインはシャンパーニュなどのフランスワインからオーストラリア、イタリアのワインが用意されています。
それらに加えてインドのワインが体験できるのも、ここならでは。「グローバー・ザンパ ヴィジャイ・アムリトラジ・コレクション ホワイト」はインド・カルナータカ州・チッカバラプール地区(バンガロールから約60km)の白ワインで、ヴィオニエらしい華やかな香りが広がります。
オープンキッチンと本格的なタンドール窯
オープンキッチンは臨場感に溢れていますが、厨房の奥には直径約30センチのタンドール窯が備えられています。
インド料理はタンドールで焼く料理が多いので、本場の味を再現するには不可欠な什器。窯の中の場所によって焼き具合をコントロールし、最適な火入れを行います。
本格的なタンドールがあるのは、他のファインダイニングにはない特徴でしょう。
日本におけるモダンインディアンキュイジーヌの旗手に
ガストロノミーの世界では東アジアの発展が目覚ましく、インド料理も同様です。ここ日本では、わざわざ海外に足を運ばなくても、銀座の素晴らしい空間でモダンインディアンキュイジーヌが体験できるので、是非とも覚えておいてください。